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05 吃り

ギャラリー・カラバコ

ここはとあるアパートの一角にある、小さなギャラリー「カラバコ」。

白い壁に空っぽの額縁が無造作にならび、その下には題字だけが添えられています。
タイトルだけを頼りに、二人の作家が別々に文と絵を寄せ、2つが合わさった時に初めて作品が完成するのです。

01 桟橋
02 物差し
03 帯
04 時化

第5回は、「吃り」

「どもりはあともどりではない、前進だ」という音楽家の言葉を教えてくれた先生がおりましてね。
今はどうされているのやら。
おっと失礼、昔の話です。


「吃り」

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絵: 古林希望

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文: カマウチヒデキ

古林 希望

古林 希望

絵描き

私が作品を制作するあたって 
もっとも意識しているのは「重なり」の作業です。

鉛筆で点を打ったモノクロの世界、意識と無意識の間で滲み 撥ね 広がっていく色彩の世界、破いて捲った和紙の穴が膨らみ交差する世界、上辺を金色の連なりが交差し 漂う それぞれテクスチャの違う世界が表からも裏からも幾重にも重なり、層となり、ひとつの作品を形作っています。

私たちはみんな同じひとつの人間という「もの」であるにすぎず、表面から見えるものはさほどの違いはありません。
「個」の存在に導くのは 私たちひとりひとりが経験してきた数え切れない「こと」を「あいだ」がつなぎ 内包し 重なりあうことで「個」の存在が導かれるのだと思います。

私の作品は一本の木のようなものです。
ただし木の幹の太さや 生い茂る緑 そこに集う鳥たちを見てほしいのではありません。その木の年輪を、木の内側の重なりを感じて欲しいのです。

カマウチヒデキ

カマウチヒデキ

写真を撮る人。200字小説を書く人。自転車が好きな人。

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