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007 ノコギリ

ギャラリー・カラバコ

どこからかの帰り道なんかにふと視線を感じて見上げると、そこには月があがっている。
もうすぐ満月が近いのだなと思うとどきりとする。
また、あの場所に行けるんだろうか。

その心配も他所に、ポケットにはきちきちに冷えた鍵が沈んでいる。

考えたらわたしは、いちどもこのギャラリーに友達を誘ったことがない。
ひとりで訪れることしか、考えたことがなかった。
鍵を差し込む前に、ノックをしてみる。
ととと。
ととと。
返事がないことは、知っている。

〈前回までの展示〉
『縫い目』
『つむじ』
『鏡』
『耳鳴り』
『植物園』
『刺繍』


「ノコギリ」

nokogiri

絵: 古林希望

ノコギリ

文: カマウチヒデキ

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共通のタイトルだけを手がかりに2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け合わせていく企画「ギャラリー・カラバコ」。
次の満月の日をお楽しみに。

Exposition Past              :Exposition Upcoming
01 桟橋                  :Getting Ready….
02 物差し
03 帯
04 時化
05 吃り
06 影絵
07 隠者
08 ウミネコ
09 うぶすな
10 蟹
「ギャラリー・カラバコ」あとがき対談 2017

古林 希望

古林 希望

絵描き

私が作品を制作するあたって 
もっとも意識しているのは「重なり」の作業です。

鉛筆で点を打ったモノクロの世界、意識と無意識の間で滲み 撥ね 広がっていく色彩の世界、破いて捲った和紙の穴が膨らみ交差する世界、上辺を金色の連なりが交差し 漂う それぞれテクスチャの違う世界が表からも裏からも幾重にも重なり、層となり、ひとつの作品を形作っています。

私たちはみんな同じひとつの人間という「もの」であるにすぎず、表面から見えるものはさほどの違いはありません。
「個」の存在に導くのは 私たちひとりひとりが経験してきた数え切れない「こと」を「あいだ」がつなぎ 内包し 重なりあうことで「個」の存在が導かれるのだと思います。

私の作品は一本の木のようなものです。
ただし木の幹の太さや 生い茂る緑 そこに集う鳥たちを見てほしいのではありません。その木の年輪を、木の内側の重なりを感じて欲しいのです。

カマウチヒデキ

カマウチヒデキ

写真を撮る人。200字小説を書く人。自転車が好きな人。

Reviewed by
朝弘 佳央理

最初にカマウチさん側の壁を見て、うはは、と笑ったわたしは、
後ろの壁を見てはっと身体をかたくした。
生き物がきたり、かえったりする場所には、わたしたちがわたしたちのハカリではかれるようなものは、ないのだった。

わたしたちが普段認識している時間は一方通行だけど、ほんとうにそうなのかな。同時に色んな時間が層になっていっぺんに見通せるときがあるんじゃないだろうか。
わたしたちの顔も、喜怒哀楽のひとつだけがそこにあるわけじゃない。30歳の私の顔に、赤ん坊の頃と、老婆になった時の顔が同時に現れたりもする。
今の姿の動物も、太古の植物も、いっぺんにそこに出現するようなことが、そういうことが何かの瞬間で感覚にはっとひらめいたりすることが、ある。
それはほんとうに、ただ私達の想像力のなかにとどまることなのだろうか。

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