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Mais ou Menos #15 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡ー

Mais ou Menos

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DEAR : Pちゃん

こんにちは。今日はすごく静かな日です。親知らずの抜歯入院をしてから、結構バタバタしていて、家の中が少しごちゃごちゃしていたから、今日はずっと朝から掃除をしたり、やりそびれていた細々としたことをやっていました。Pに頼まれていた荷物の準備も終わり、この手紙を書いたら、郵便局に行きます。

12月って、ほんとうに時間が過ぎるのがはやく感じます。気付いたら、もう1月っていうことになりそうな予感です。11月末ごろは、気持ちの余裕がなくて、Pに迷惑をかけてしまったこと、実は今でも申し訳なく思っています。生きていると、たまに「もう、これ以上無理だ。」と思うことがあるけれど、軽々しく「死にたい。」なんて言ったらダメだよね。Pと話していたとき、本当に自分が情けなくて、悔しくて、甘ったれていたとすごく反省したの。せっかく、これから少しずつ自分たちらしい生き方ができそうになってきているのに、ほんとにどうでもいいこと、数日たてば忘れてしまいそうなくらいくだらないことに左右されて、死んでしまったらあかんよね。もう少し、気持ちを安定させられるよう、トレーニングしないとですね。

でも、親知らずの抜歯のために入院してよかったと思ってるよ。病院で過ごしていたとき、ゆっくりと本を読んで、自分自身と静かに向き合うことができました。『嫌われる勇気~自己啓発の源流「アドラー」の教え~』(著:岸見一郎、古賀史健/ダイアモンド社)をお供に選んだのもよかったのかもしれないけれど、日々のことや、自分の考え方の癖について、これからどうしたいのか、どんな生き方がしたいかなど…いろいろなことを考えた。自分はどうしたい?今後はもっと自分が望むことを、わがままにやっていこうと思いました。だって、私自身が自分の生き方や幸せのために行動しなければ、このまま何も変わらないものね。幸せは歩いてこないって、本当や!Pはもう歩みだしているので、私も前に進んでいかないと。あと、焦らないようにしないとね。自分の生活と、自分の感情をしっかりコントロールするためにも、静かにリセットする時間をつくるつもり。

ちなみに、1月からは新しい習慣をつくろうと計画しています。Pが手に職をつけるために頑張ってくれている間、私もなにかしらやりたいと思っています。“書く”時間を増やしたいというのもあるし、もっと多く”作る”時間を設けたい。そのためにもタイムマネジメントしていかねばと、思っています。あとね、もっと英語とポルトガル語をつかう時間を増やしたい。どんなことができるのか、もう少ししっかり考えてみるつもり。

12/22にPが徳島から帰ってくるのが今からすごく楽しみ。仕事で帰りは遅くなるけれど、なにかしら食べるものを用意しておくね。こっちにいる間、食べたいものがあれば教えて。

そうそう、夜眠れないことがあったら、YouTubeでLynne Arriale Trioの“Mountain of The Night”と検索してみて。山の夜はたまにとても寂しいから。

ちゃんとご飯を食べて、あたたかくしててね。

2015.12.08

Maysa

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まちゃんへ

年末はまちゃんといっしょに過ごせる時間が少しあるので、嬉しい気持ちでこの手紙を書いています。二人で時間を過ごしていると、本当にその心地良さに改めて気づきます。年が明けたら、また少し離れるのが寂しい。でも、遊び来てね。

Pのほうは毎日学ぶことが多くて必死になってかなり大変でした。でも、これも自分のため、これからの二人のためと思ってやってきます。ふと、急に不安になったり、もう何もかも嫌だと思うことは、あると思う。気持ちをうまくコントロールして自分がしんどくならないようにしていきたい。

最近になって、やっと’自分’の姿が見えてきたような気がする。もう何を言われても怖くないようなそんな気持ち。でも、これもまちゃんといっしょにいられるからこその強気です。自分一人で生きていたら、ここまで心強くはなれなかった。

まちゃんはまちゃんのやれる道があるから、その道を探しながら歩いていけばいいと思います。いろいろやってみないと、わからないことばっかりやからね。まずは何でもやってみて、それから決めたらいいやん。

まちゃんが親知らずを抜いてから、ずっと体調を崩してたみたいやけど、先日いっしょに病院に行けてよかった。健康でいることは大切なことやから、お互い日々の生活を丁寧にやっていきたいね。

まちゃんんの言語の力を生かした何かをやってみるの、とてもいいと思う。
Pも読む時間、書く時間、作る時間増やしたい。
リラックスしたいときは“Mountain of The Night”聴いてるよ。
音楽は今までそんなに聴くほうじゃなかったんやけど、1人でいるときは音楽を聴きたくなるので、音楽もたくさん聴いていきたい。またオススメ教えて。
いっしょにいる間に見たい映画あるから、それもいっしょに見よう。
年明けたら離れると思うと、今から嫌だけど、いっしょにいる時間、存分に楽しもう。

2015.12.27

P

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

Reviewed by
西尾 佳織

思えばこれまでの全ての手紙に日付は付されてあったのに、私は今回初めて、その文字が記されたまさにその時間に思いが至ったのでした。

12月8日にまちゃんは、あと二週間でPちゃんが帰ってくることを心待ちにしながら、手紙を書いた。
12月27日にPちゃんは、久しぶりのまちゃんとの時間を過ごし、あと数日で再び離れることを傍らに置きながら、手紙を書いた。
そして1月8日にこの往復書簡が私の元に届いたとき、二人はもうまた離れ離れに暮らしています。

言葉はいつでも痕跡みたいなものなので、そこに本物はありません。
けれどほんのひとときでも血の通った瞬間が、確かにあったことを、示しています。

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