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Mais ou Menos #16 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡ー

Mais ou Menos

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16.01.31

ぴちゃん

ただいま。いま、神山から帰りました。帰りのバスでは、気づいたら寝てしまっていて、いつのまにか京都でした。時間を感じなかったからよかったけれど、家に帰ってきたらなんだかぽかんと寂しい気持ちになったよ。

ずっと住んでいる家なのに、まるで自分の居場所じゃないような感じ。ここ数日過ごしただけの古い里山の家の方が、ずっと昔から住んでいた場所に感じるくらいに帰ってきたときに違和感がありました。昨日も話したけれど、やっぱりわたしが帰る場所はぴがいるところなんだと思います。長く過ごしていても、そこが急に居心地悪くなることあるんやもん。人の感覚って、ほんと移ろいやすいなあと。

あと、山はいいね。桜の季節や、新緑の季節に訪ねたい場所だった。

本当のことをいうと、高速バスに乗ったとき、寂しさでうるうるしてたの、きっと気づいているよね。大好きなスタバのコーヒークリームラテが苦く感じるくらい、気持ちがナーバスになってた。それを誤魔化すように編み物をして、寝て…

さて、明日からまた平常運行。朝早く起きて、仕事に行く生活が始まるね。でも、またすぐに遊びに行くつもりだし、そのときはまたいろいろ楽しく過ごそうね。この仕事も、残すところわずかだし、最後まで楽しめるように頑張るよ。新生活が始まるの、ほんとうに楽しみだね。また二人三脚で頑張ろう。それまで、ぴも神山で安全に過ごしてね。何もかもがうまくいきますよう、きっと導いてもらえると思う。

素敵な三日間をありがとう。Aさんにもよろしくね。

Maysa

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まちゃんへ

おかえり。
無事京都に帰れたようでよかった。

まちゃんとバス乗り場で離れる時は、またすぐ会えるとわかっていても寂しかった。まちゃんは山が好きだから、この場所はすごく気持ちが和むんじゃやないか、と思っていたけど、楽しんでくれたんだったらよかった。

まちゃんが帰って、自分も家に帰って、すぐに電話したけど、やっぱり、一人で家に帰ってがらんとした部屋に入ると、昨日のまちゃんと一緒に過ごしたこの小さな部屋の空気がもう恋しくなった。

こっちに来て、初めて休みの日を心から満喫した。本当に楽しかった。まちゃんが来てくれて、料理を作ってくれて、二人で食べて、AさんやYさんと一緒に自然の中の家で、春みたいに温かい太陽の下でランチをご馳走になって…もうむちゃくちゃ楽しかった。

今日からまた毎日が始まる。
一人で生活するようになって、料理をつくることの大切さや、何とか生きていくことへの自信みたいなものが少し出てきた。少しワイルドになった。それは、こういう経験をしていないと感じなかったことだと思うから、今の生活はそのためのものだったのかなあと感じたりもしている。

どこにいようと生きるということは大変なことだけど、何とかこれからも二人でやっていこう。

こちらこそ、来てくれてありがとう。
また来てね。

私たちの周りには、本当にいい人たちばっかりで、感謝やね。いろんな人にお世話になってる。

こちらの生活も後半戦。
最後まで頑張ります。

P

2016.02.01

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

Reviewed by
西尾 佳織

私の好きな人は意地のわるい人が多い。そして私自身も、だいぶ底意地がわるいと思う。
でも、マクベスではないけれど、「いいはわるいで、わるいはいい」みたいに思っている。意地のわるさは優しさだ。
……とかなんとか、長々こんな話をしたのは私が今から意地のわるいことを書こうとしているからで、どういうことかというと、私は今回の往復書簡にポエムを感じたのでした!

いちばんビビッと来たのはここ。

「高速バスに乗ったとき、寂しさでうるうるしてたの、きっと気づいているよね。大好きなスタバのコーヒークリームラテが苦く感じるくらい、気持ちがナーバスになってた。それを誤魔化すように編み物をして、寝て…」

ここも好きだ。

「自分も家に帰って、すぐに電話したけど、やっぱり、一人で家に帰ってがらんとした部屋に入ると、昨日のまちゃんと一緒に過ごしたこの小さな部屋の空気がもう恋しくなった」

もう、このまま歌詞に出来るよう!!! とクネクネしながら読みました。

きっと今まちゃんとPちゃんは、久しぶりに一緒に過ごせた時間のあとで、改めて一人でいることと二人のことを噛みしめているのだろうなと思う。
寂しいだろう。

けどさ! その寂しさなどを伝えあって確認し合えるってとってもいいよ! アイエンヴィーユー(複数形)だよ! と思いました。

この往復書簡のレビューを引き受けた一回目か二回目に、「この完成された『わたしたち』に読者は要りますかね?」というようなことを書いたのですが、久しぶりにそういう気分になりました。でも今回は、ぜんぜん嫌な感じじゃないです。
どうも私はなんでもすぐ茶化してしまうものだからこんな感じになりましたが、違った立場ででもポジティブな心で、拝読しております。

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