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Mais ou Menos #24 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡ー

Mais ou Menos

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まちゃんへ

昨日は、私たちにとって特別な人 Caetano Veloso のライブに行ったわけやけど、本当にこんなことが実現するなんて…という気持ちです。

そもそも私とまちゃんの出会いはカエターノなしには語れない。まちゃんといえば、出会ったときからずっとカエターノが好きなイメージがある。カエターノの話や歌や動画をまちゃんに見せてもらう度、まちゃんはカエターノに救われてきたんだなと思った。ブラジルにはこんな歌手がいて、私が今まで聞いたことのない歌を歌っている。私の中でカエターノは新鮮だった。

まちゃんといつか、2人で誰かの音楽のライブに行きたいねと話してたことがあったと思うんやけど、覚えてるやろうか?
まちゃんとライブには行ったことがなかったので、行きたいとずっと思ってたんやけど、その初めて行くライブがまさか、カエターノやったとは!!!!!!
正直、生のカエターノのライブにカエターノが生きてる間に行けるとは思ってなかった。ブラジルに自分たちが行く頃にはまだ生きているだろうか、ライブをやってくれるだろうか、そんなふうに思っていた。
そしたら、カエターノのほうから日本に来てくれた。1番遠い国なのに。カエターノは、そんな距離なんかすぐに跳び越えてきた。このことは私の中にすごく勇気をくれた。生きてたら何でもできるし、行こうと思ったらどこへでも行ける。そして、彼の姿、声は素晴らしかった。

カエターノを見つめるまちゃんのことを見て泣いた。カエターノありがとう。生きててよかったと思わしてくれてありがとう。まちゃんがたぶんやらないだろうといっていた私が知っている数少ないカエターノの好きな曲“A Luz de Tieta”をやってくれて、いっしょに歌えたので大大大大大大大満足です!

もっとカエターノの曲を聴こうと思います。これからもがんばって生きようと思います。
まちゃんにとってどんな気持ちになったのか聞きたい。

2016.10.10

P

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Para: Pちゃん

昨日のこと、ずっと頭から離れません。何をやるにも、Caetanoの姿が脳裏にチラついて、何度も何度も反芻しています。余韻と呼ぶにはあまりにも強い感覚で、この感動が薄れなければいいのにと思います。

Caetanoは私にとって、ブラジルを象徴する存在です。“Sanpa”を初めて聴いたとき、São Pauloで生活することや、São Pauloの街並みを歩くときの気持ちと、歌とがシンクロして、この人はなんて音楽をつくったんだってすごく衝撃を受けたの。そのせいか、Caetanoはブラジルを思い出させてくれるし、記憶の中でつながってるいるの。今思えば、15才を過ぎてから、私の人生はCaetanoの存在と切っても切れない縁があります。Pちゃんとの出会いも、たしかにCaetanoがキッカケだったね。もう6年以上も一緒にいるのに、初めて一緒に参加したライブはCaetanoだなんて、信じられません。

今年、祖父が亡くなってから、わりと本気でこの人生ではCaetanoの姿や歌声を生で見たり、聴いたりできないと思っていました。Caetanoも高齢だし、祖父のことを考えると、わざわざ日本まで来るなんてとも思ってた。だから、祖父が亡くなってから数ヶ月で、自分が考えていたことが覆ったから、この歳まで生きていてよかったと思った。
私もCaetanoも。

“Sampa” だけじゃなくて“Cucurucucu Paloma”や“Luz do Sol”,“Menino do Rei”,“Força Estanha”,“Desde que o samba é samba”など代表曲がたくさん聴けて、動くCaetanoの姿が観れて、本当に本当に嬉しかった。改めて、ポルトガル語の響きの美しさに感動しました。大阪では“Sozinho”を歌ったらしいけれど、次はこの曲を聴くために頑張ろうと思った。生きていて、よかった。大げさって言われるかもしれないけれど、本当に生きていてよかった。たくさん泣いて、たくさん笑って、たくさん驚いて、心の底からライブを満喫しました。Pと2人でCaetanoが見れたことも嬉しかった。短い間、でもとてつもなく濃い、深いブラジルの音に触れることができて、日本にいながら2万kmの距離を旅するような気持ちでした。
神さま、ほんとうにありがとう。素直に感謝の気持ちが湧いてでる。幸せだ。ほんとに幸せだーーー!

Maysa

2016.10.10

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

Reviewed by
西尾 佳織

「これはイケる」と本当に思えたことは大抵イケる。
体操の内村選手も言っていた。
「イメージ出来た技はやれる」

でもその反対に、「これは絶対に不可能だ」と強く思ってしまうこともある。
そこまでに出会ってきた現実の経験の積み重ねが、その人を「不可能」のイメージに連れていき、重くそこに留まらせる。

だけど、カエターノはやって来た。
地球の裏側から二人の元に。
生きていると、時々こういうことがある。
一人ではどうにも動かせないイメージをトーンと遠くへ押しやって、一瞬で新しくしてしまう人がいる。

「生きてれば何でもできるし、行こうと思ったらどこへでも行ける」
そう思えたら、もう大丈夫。何でもできるし、どこへでも行ける。

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