長期滞在者
20年来お世話になっているKさんの推薦で、ニューヨークからある作家さんが私のところに来てくださることになった。私はそうは思わないが、その作家さんは、あまり日本では知られていないらしく、東京での発表の場を探していらっしゃるというということだった。 ミーティングは大変楽しいもので、これまでの写真の話、いまの東京のアート事情から、世界のマーケットの状況や、今後の話など、あっという間の2時間でした。 その…
当番ノート 第55期
食費を考えずにぽんぽんカゴに食材を入れ、その代金さえも親にせびるという堂々としたニートっぷりだった。私が用意するものはただ「料理でもするかー」という軽い気持ちだけで、冷蔵庫には栄養を考えた食材がある程度揃っていた。揃っていたのにもかかわらず、「今日私が作りたいもの」を作っていたのは実家時代の話だ。 でも、あの頃よりも経済観念自体を大きく発達させた今の私が切迫感なく生活を楽しめているのは、節約スキル…
当番ノート 第55期
小学生の時に水栽培で育てた球根を見かけて、懐かしく手にとったことがあった。水の中で根を伸ばす姿を見てワクワクしていたことを思い出す。でも、撒いた種が重い土を持ち上げるときだって、ちゃんとワクワクしていたはずなんだ。 自分が土の上にいるのか下にいるのかもわからない、そんなときでも、繋がりたいものがある。不安定でいい、湧き上がっているから、それはきっときっとメロディになる。
Mais ou Menos
Pちゃん お疲れ様です。2人が苦手な冬も、あと少しやね。日本の春は、一番好きな気候だから、今からとても楽しみです。このまま、風邪をひかず乗り切りたいね。 Pのお友だちから手紙が届いて、婚姻届を出したと聞いて、私はとても嬉しかった。夫婦別姓とか、戸籍制度への疑問、モヤモヤすることが結構あったみたいだけれど、この人と家族になりたいという気持ちのふたりが、法律の上で家族になれることはとても尊いことやと思…
当番ノート 第55期
私が3歳から住んでいた小平という場所は、東京だけど緑が豊かで、川が流れていて、空気の匂いは湿っていて、朝は鳥が鳴き、冬になると都心に比べて-3度も気温が下がり、夜になると車通りも人通りもなくなって道路の真ん中を平気で歩いて帰ることができた。星がよく見えて、公園のグラウンドの真ん中で夜空を見ていると、地球上でたった一人になった気分になるほど静かな街だった。 ここには眠った夜があった。私はよくこっそり…
当番ノート 第55期
mopoka です。家族旅行は、楽しいですか? 私は、家族で旅行に行くのが苦手でした。意味不明に毎度、家族を怒らせたり失望させるからです。 振り返って想像するに、私はとてもワガママで好奇心旺盛であり、大人の立てたスケジュールがどんなものかまるで想像もできておりませんで、なぜ「旅行」というものをすることになっているのか意味不明で、親心もまるでわからないので、急に学校みたいに、決められたルールに添う時…
当番ノート 第55期
>>通過儀礼2日目 究極の退屈を探しにいこう。と友人が言った。 2014年1月、銀座のルノアールだった。話の始まりがなんだったかは覚えていないが、確か、オリエント急行に乗ってみたいんだよねと私が言って、でもWikipediaを見たらもう今は廃止になっているようで、ならばシベリア鉄道はどうか、これなら今も現役で走っている、始発から終点までだいたい1週間かかるらしいけど。 1週間?何するの…
長期滞在者
年明け。 どこにも行けないという制約のなかでも、はじめて体験できることが幾つかあった。お雑煮を作ったり、お屠蘇を飲んだり。 我慢の日々だけれど、辛いとこぼすだけにはなりたくない。 昨年の1月の家日記を読み返したら、今と変わらず、側にいる人たちに助けられていたんだと気づく。一層、この場所を大切にしたいと思う。 1月1日(金) 元旦。朝起きて、お雑煮を作る。実家のお雑煮には人参、大根、銀杏、お餅、三つ…
当番ノート 第55期
前回は節約食材の付き合い方を話したいと結んだが、いざ書き始めてみると、私を助けてくれるあいつらとの確執はまだ終わっていないことがわかった。たとえばもやしについて思い浮かべると、私の作るナムルは最高にうまい!よりもあいつら安いけど足が早くてムカつく、が先に来る。ゆとり皆無の荒野の心だった時代、私にとってもやしは白湯と同じ位置づけの貧乏の象徴だった。今はお助けもやしマンくらいに昇格したが、それでもひも…
当番ノート 第55期
眠っていた間の夢の内容が現実のものだったのか、寝起きにぼーっとしながら反芻する時間が好きだ。ふわふわして心地いい。なのに、だんだんと頭が冴えてくると寂しくなってくる。 怖い夢でも、嬉しい夢でも、ありえない設定の夢でも、わからないままにしていたい。世界がわかることばっかりになったらつまらないから、ひっそりと自分だけの謎が欲しいんだ、わからないままのものが好きなんだ。
当番ノート 第55期
実家の冷蔵庫は、いつだって食べ物でいっぱいだった。 朝の納豆、卵、牛乳と豆乳、ソーセージとベーコン、バターにヨーグルト、お味噌、梅干し、キムチと豆腐と夕食後に食べる果物、加えて夜のお酒のお供ようにチーズが数種類、ドレッシングと焼肉のタレも数種類、あとは昨日の夕飯の残りのおかずと、いつのかわからない飲みかけのお茶や使いかけのジャム。 たくさんのものが詰め込まれた実家の冷蔵庫が整理されるのは年末くらい…
当番ノート 第55期
こんにちは、mopoka です。アニメーションを作ったり、絵本の画を描かせていただいたり、時々、大学や小学校にお邪魔して、先の読めない道の糧は、実は今日こしらえてる、的な話をして、感性と夢と、他人との交流により明らかになる個性(武器)を知る為、人と生きましょう… なんてことを強気にお伝えしたりしなかったり。 それもこれも、人との違いを感じるごとに、戸惑っていたし、いまだ戸惑っているから…