当番ノート 第56期
小さなころから、家の中にはいつもピンと緊張の糸が張っていた。今はもう亡くなってしまって居ないのだが、一緒に暮らしていた重度障害を持つ伯母が体調を崩すたび、祖母や母の顔に映る疲労の色は濃くなった。家がどれだけ大変でも、幼い私はただオロオロ見ているしかなくて、いつしか私の頑張りが足りないからこんなに家が大変なんじゃないだろうかという罪悪感に襲われるようになった。しんどそうな家族の気持ちが度々私の体に流…
長期滞在者
振り返ってみると目の疲れにやられているこの数週間。 薬局に駆け込んで「目が痛い」と泣きついたら、タクシーの運転手が指名買いするという飲み薬を教えてもらった。最近は家でつい仕事をしすぎてしまい、体に悪影響が出ているひとが増えているそう。 何事にも良い面と悪い面がある。なるべく外に出ない生活を続けて一年以上経つけれど、誰かと直接話したときの温かさをしみじみと感じたり、マスクをしないでくしゃみをしている…
お直しカフェ
こんにちは。元気ですか。 あんまりにも久しぶりなので、この半年にちまちま進めたお直しの振り返りからいってみたいと思います。 ・靴下のダーニング 軍足のお直し。透けて大きな穴になっていたので、太めの毛糸で広範囲にダーニング。家族が増えて、穴が空いた靴下が出てくるペースもぐんと上がった。女性がファッションを兼ねて大事に選んで履く靴下と、男性が作業着の一部みたいに必要不可欠なものとして履いてる靴下じゃ、…
当番ノート 第56期
この「Air」は、「エアー」じゃなくて「アリア」である。さて、エヴァにちなんでタイトルを付け続けているが、今回ばかりは特に何の意味もない。何も考えずに、タイトルだけを決めてしまった。後付け、コジツケ、なんとか。アリア、すなわち「G線上のアリア」である。G、すなわち「Ground」である。「地上のアリア」である。早速、何を言っているのだろうか。 少々血迷っているが、グラウンド上のアリアなので、無理や…
当番ノート 第56期
僕の中にあるのは、凪子の思い出なのです。 凪子はときどき、写真を撮ります。彼女は使い捨てのフィルムカメラを持っていて(要するに、それが僕なのですが)、そのカメラをいつも持ち歩いているのです。使い捨てカメラはすごいです。フィルムというだけで味が出るので、凪子のようなド素人が撮影しても、それなりに趣のある素敵な写真になってしまうのです。例えば、日陰だったり、逆光だったり、室内だったりで被写体を撮る…
当番ノート 第56期
4月から、ベランダに沢山日が差し込むようになった。寒い間押し黙っていた植木達がぐっと伸びをして思い思いに伸び始め、柔らかい新芽がにょきにょき顔を出している。病気になってから植木を育てることが趣味になった。多肉植物、サボテン、エアープランツ、バナナの苗、ハーブ、ビカクシダ(熱帯のシダの一種で葉っぱがかっこいい)、オージープランツ(オーストラリアや南アフリカ産の植物。ドライフラワーにアレンジしやすい)…
当番ノート 第56期
緊急事態宣言下。ゴールデンウィークらしいが、金色にしては随分とくすんでいる。仕方ないけど、外には出づらい。きっと、地面も賑わってないはず。 地面は、人の動きに合わせて変化することが多いから、こうして外出が制限されると変化が途切れる。しかし、一方で前回書いたように雨風の影響を受けて自然に変化する地面もある。人の動きが制限される状況だからこそ見える地面もある。それを見付けに散歩に出るのもまた一興である…