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2F/当番ノート

空を見上げて、悲しい話をしよう

当番ノート 第4期

 
 
透明な灰皿は、

短くて くしゃっとしたタバコでいっぱいになっている。

この部屋には二人のタバコの匂いが染み付いているんだろうけど、

私たちしか入ることがないので、そんなことはどうでもよかった。
 
 
私はあなたよりも先に目覚めていて、

ベッドの上でぼんやりと天井を眺めたりしている。
 
 
なんとなく顔が見たくなった。
 
 
寝息をたてているあなたの顔を見ていたら、

あなたは私の気配を察したみたいに目をあけた

そして、

しんみりするような夢を見たと言った。

夢も現実もあんまり変わらないなあと言った。

夏の終わりのこの空気がそうさせるのかなと、私は思った。

今日は二人でなにをしようかと私が言った。

今日は二人ともアルバイトが休みだけど、

出かけるお金もないし、

なんにも決めていなかった。
 
 
あなたは突然、そそくさと外に出る準備を始めていて、

私はそれを目で追いながら無視しているみたいにベッドの上にいた。
 
 
あなたは、決めていたことをいま思いついたみたいに笑いながら言った。
 
二人で歩いて公園行こう
 
 
私は うん と返事をして

そろそろと準備を始めた。

あなたは私をおいて外へ出て行った。
 
 
一人きりの部屋で私は

公園に着いたら、

広場で

空を見ながら悲しい話をしたいなと思った。

でも、このことは内緒にしておこうと思った。
 
 
自暴自棄のような、

そんなに激しくはないけれど、

二人で悲しくてどうしようもない休日にしたかった。
 
 
きっと今だけだろうけど、

こんなどうしようも処理しきれない気分をもっと悪化させたい気分だった。
 
 
あなたを追って外に出ると、

ボロボロのつっかけを履いたあなたが空を見上げていた。

私もつられて空を見上げた。

空が青くて助かった。

でも、夕方が少しずつ近づいてくる気がした。

それが怖くて、

この青空を、夜がもの凄いスピードで覆ってくれればいいのにと思った。

夕方の出番なんて飛ばしちゃうくらいの。
 
 
歩いて公園に向かった。

手も繋がないで

話もしないで。

すれ違った派手なおばさんが私たちをちらっと見た。

喧嘩しているカップルのように見えたのだろうか?

おばさんは少し嬉しそうな顔をしていた。
 
 
夕方になる前に公園に着かなきゃやりきれないなと、

そんなことばかり考えて歩いた。

そんなことばかり考えるようになったのはいつからだろうか。

あなたと出会った後からだなと思った。

でも、こんなふうになんでもかんでも あなたのせいにしてしまうようになったのも、

あなたと出会った後からだなと思って、

ごめんなさいという気持ちと一緒に、

あなたの手をとった。
 
 
 
 
 
公園に着いて、
 
 
広い芝生の上で、
 
 
二人が見上げた空は、水彩画みたいな
 
 
淡いオレンジ色でした。
 
 
 
 

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