部屋が散らかっている
散らかっているのか,
それとも散らかしているのかの判断がつかない
部屋がこんなに可哀想になっているのはさ、
あの人がこなくなったから。だろうと思う
この部屋、いっつも寒いんだよ と、私が言う
夏は寒くなかったよ。と、あの人はこともなげに言った
こういう、どうでもいい思い出が
好きかってに私の中から外からやってきて
私の部屋を散らかしていくんだ ほんとうにやめてくれと、
ほんとうにやめてくれと、何度も思う
ベッドの下には,なにが入りこんでいるのだろうか
飲みかけのペットボトルは,何本ころがっているだろう
ころがっているわけじゃないか
もう何日も、何ヶ月もまえからぴくりとも動かないし
死体みたいにそこに安置されていて、冷たくなっている
ベッドのわきから顔落としてさ,
かみのけ地面にくっつけて、顔をまっ赤にして覗きこんだら,そんなのすぐに見えるんだけど
そんなことも億劫になってしまった
窓から光が入って、
たくさんのホコリがゆらゆらしていてとっても綺麗
あおむけになって、天井見ながら考える
綺麗にしなくちゃさ,あの人もこんな部屋にはきてくれないのだろうけど,
寝返りうって、ちらかった部屋をみながら思う
部屋をこうしておけばさ
だらしなくしておけば
部屋のどっかに,あの人がいるような気がするんだ
いるとしたら、どこにいるだろうか?
山崎まさよしみたいなこと考える
きのうの夜に食べたコンビニ弁当は、なんだったっけ
机の上の、
結ばったコンビニ袋のなかに、答えはあるんだけど、
わざわざゴミを覗きこみたくもないし
でもあの人がいるとすれば、きっとああゆうところだ
べつにゴキブリみたいハエみたいだと、失恋した高校生のように騒ぐつもりはないよ
ただ、きのうの夜食べたコンビニ弁当の食べ残しに、
すこしゴマのかかったごはんの丘に腰をおろして休んでいるような
そういうひとなんだ
わたしは、そういうところに座らない
わたしのそういうところが、とてもつまらない
おおきく深呼吸してみたら,
空中でヒマそうにしていたはずのホコリたちも
空気といっしょに、思いきり私のなかに飛び込んできてさ、
おおげさにむせてしまった
むせた息が 白かった
もう12月か
大掃除なんてしないで、
引っ越してしまうのも、手かもしれない