盛りつけ、彩りは、お料理の楽しみの一つです。
料理家の先生のアシスタントをしていた時、
最初に盛りつけの方法で習ったのは「中高に盛る」こと。
特にレシピ用の料理だったので、写真映えがするようにするコツなのですが、
写真に撮ると3次元の料理が2次元の絵に変わる。
だから”失われる奥行き”を感じるように、高さを強調して盛りつけると美しく見える。
(逆に、真上から写真を撮って、2次元に徹するレイアウトも潔くて好きですが。)
パスタもお皿にぺたーっと吸い付いているより、
ぎゅっと真ん中に寄せて山型にした方が、美味しそうに見える。
重力に逆らって上に向かおうとする姿は、エネルギーを秘めているように感じるのでしょうか。
つまり、食材が生命力にあふれているように見えるのが、”おいしい形”。
改めてそう思うと、強い生きる力を取り込もうとする生き物として欲求を感じますね。
いつも薬膳料理のレクチャーをする時にも「薬膳」の定義をお話しするのですが…
”中医学理論に基づいて食材、中薬と組合せた料理であり、栄養、効果、色、香り、味、形など、すべてが揃った食養生の方法。”
と、なっています。
お料理は味や栄養や効果はもちろんですが、やはり見た目や香りなども同じように大切に扱い、
全てがそろわないと”調和”した状態ではないと、長い歴史の中でも言われているのです。
圧倒的に美しい形を思い浮かべた時に、
完全な球体や四角錐など、人の手で精密にルールを全うした形の美しさと、
自然が持つ形の美しさが浮かびます。
自然の形は複雑そうに見えますが、
黄金比や120°で分反復する6角形(蜂の巣のような形)、らせん状など…幾つかの基本形があります。
基本形は、その物質の状態と置かれている環境とでデザインが決まります。
そして、全てのものの形は流動性が高い状態で形が決まっていると説明ができるようです。
スケールが変わっても、ずっと同じ原理。
美しいとは、ルールで整えられた状態のこと。
形にはとてもシンプルなルールがある。
色即是空、空即是色。
形はすなはち縁であり、縁はすなはち形である。
形がたくさん見えるこの世界の味わいは、形の無いところに旨味の真髄があるようです。
大晦日を前にして、”空”を見つめる。
違う様でつながっている一日にも、見えない”空”で豊かに紡がれますように。