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2F/当番ノート

風土を纏うまで

第25期(2016年2月-3月)

NAGI表紙

東京から単身三重に飛び込んでNAGI編集部に入舎。ローカル出版物に携わる仕事がスタートした。慣れない土地での日々は目まぐるしく、入って間もなくして山登り取材に駆り出され毎日があっという間に過ぎていった。学生の頃のようにコンスタントにモノクロ写真が撮れない。焦りを感じつつも日々の生活に追われていった。事務所の窓に広がる田んぼが掘り返され水が差し鏡のように浮かび上がっていく。植えられた稲が茂りだし穂がすくすくと成長し垂れていく様子をただぼんやり眺めることしかできなかった。

事務所には発行人と編集長の2人が常勤しており、他にライターやカメラマンが外部スタッフとして協力して雑誌の制作を行っている。都心でみたデスクがたくさんの編集部と違い、少人数の事務所で交わされる伊勢弁がどこかゆるい。静岡育ちの私には、馴染みが薄い関西のイントネーションだったが、聞き重ねるうちに柔らかな語尾にホッとするようになっていた。

NAGIバックナンバー

雑誌の表紙タイトルは毎号様々。万古焼や松阪木綿などの地場産業を取り上げたもの、式年遷宮があった伊勢神宮や地元材を使ったロハスな住宅、作り手のわかるレストランと特集によってがらりと変わる。約2ヶ月かけ取材や撮影を行っていきその間、内部スタッフ3人は各担当の誌面のレイアウトを進めて出稿まで持っていく。残りの1ヶ月で印刷や配本準備に。定期購読者への発送の他、書店へ納品と清算もおこなっているのは最初驚いた。これらの作業を掴むまでには季節が一周巡っていた。

大台林道の取材
山ガイドツアーの取材にて、地形図と照らし合わせながらメモをとる。

慣れてきて面白いと思ったのが読者の反応。毎号投稿ページにハガキを送ってくれ往復書簡のようになっている熱心な読者や、生涯定期購読しますという申し出があったりなど暖かく見守られているのを感じた。書店まわりも同様に、「今回の号内容はよかったけどシブいテーマでイマイチ」と厳しい言葉をもらったり、店頭用の手書きポップを作ってくれたりなど制作だけでは得られないことに触れられた。大手だったら分業化される流通まで携えたことのは、写真集の制作に関心のあった私にとっては大きい収穫となった。

校正作業
校正作業は慎重に。懐かしの旧事務所にて。(現事務所はウッディーになっています)

地域と対話する姿勢はモノクロ写真にも浸透していったように思う。それまでの旅行を通して過ぎ去るものを刹那的に捉えるスタンスに根が生え出したのだ。地元民に聞いた山奥にある岩の御神体や入り組んだ志摩半島にある迷路のような漁村や民俗行事、城下町の周辺にある古墳群がある時代のレイヤーが入り組んだ松阪。地力を食し風土を纏いながらも来訪者としての距離で風景と対峙していった。この積み重ねがのちの連載につながっていく。

(雑誌『NAGI』http://i-nagi.com/

田山 湖雪

田山 湖雪

静岡出身の写真家など です。
東京→伊勢→静岡→東京

Reviewed by
唐木 みゆ

田山湖雪さんの「風土を纏うまで」によせて

今回は田山さんが編集部に入ってからのことで、お仕事見学さがあって楽しい。
ところで、土地の人になる瞬間っていつ訪れるのだろう。
必ずしも生まれた場所でもないし、長く住んだらその土地の人になれる?海外や単身赴任だったら?
それで死ぬときはどこの人になる?
もし死後に閻魔様のとことかで「生きてた時は、どこの土地の人だった?」って聞かれたらなんて答えようかな
私は多分、「奈良」って言っちゃう。
人生の9割型、神奈川県民ですけどね。
奈良には祖母が住んでていちおう奈良生まれだけど、その後ずーっと横浜育ち。
でも、神話や古代が好きで取材でよく行ったもので
そのたび、めちゃくちゃ感動させられて抗いようのない「血」を意識したし、自分が日本人だって徹底的に分かった。
すっかり奈良の山で「吾れは大和の子やー!!」って叫びたくなるぐらい思ってますからね
まあこの話、タイトルの「風土を纏う」とちょっとずれましたけど・・

それで今、自分の住んでいるところは2年くらいだけど「われは青葉区民!」なんて納税の時しか意識に上らないし
イマイチ風土を纏えていない。奈良への愛との隔たり。
風土を纏う時は、
生活よりも土地のことを考えた時間、歩いて文化を見て回った経験が暮らしに染みてきた時かもしれない。
白菜を切ったときに、お茶を注ぐときに、生活に今立っている土地の思い出が押し寄せる、そんな時。

それでいうと、私は奈良の意識はあるけど精神面のみなので、風土の匂いや土の恩恵を纏えてないんだなこれ、、
まずは、今近所の、散歩してこようかな。


レビュー:唐木みゆ

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