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当番ノート 第45期
絵を描いていると、テーマはなんですか、と聞かれることがたまにあるのですが、一貫したテーマはあまりなく、描くことによってなにかを目指すというよりは、描くことを続けていくことで自分とまわりとの関係をあぶり出しているようなところがあります。 美術系の大学にいっていたときに、とりあえず真面目な美大生だったし、内から湧き出るものはあるから、わーってなってつくってて、でも、わーっていうのを微妙にセンス良くなん…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある日常の中の非常口「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 出口はないけど、入り口も見えない人生へようこそ! はい、私は店長のミス・モモコ。 暑くて暑くて頭がぼーっとしちゃうわね! ぼーっとした頭でお知らせなんだけど、 残念なお知らせなんだけど、このスナックは立ち退きなの。 じゃっ、そんな感じで今回も最後までよろしくね! 前回のセクハラ問題もある…
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当番ノート 第45期
ある1人の少年と現在生活している私は、何かと自分の生活圏を彼の存在で掻き乱される日常にいた。それにしても、この少年と私は、いつから親しく関わり、一緒に生活を共にしているのか経緯が全くわからない。ただ、あの日 家の前に雨の中びしょ濡れの仔猫が捨てられていた事。その少年の幼い顔がどこか昔愛していた人の面影を連想させる事だけしか確かなものはなく、名前も 理由も得体の知れぬまま私の側にその少年は存在してい…
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当番ノート 第45期
行きつけのカフェというやつがある。 いろんな仕事の山場を秘めやかに乗り越えてきたこの店こそ、アパートメントの全8話を締めくくるに相応しいと(そもそも家かここしかないのだけど)鼻息荒めに、今これを書いている。 今は昔、最初は普通の接客だったのだが、仕事が詰まってほぼ毎日通った時期があった。それからというもの入店1番、店長はじめ店員さんまでもが快活に「おつかれっすー」と言う始末。いらっしゃいませという…
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当番ノート 第45期
いつも歩いている道の、いつも見ていた建物が、急になくなったり、違う建物になったりしていると、それがなんの建物だったのか全然わかんなくなっちゃうことがよくあります。 昨日も、家の前の商店街のいつものならびにあったお店が急になくなって、壊されかけの建物のところに八月上旬にタピオカ屋さんがオープンします、って貼り紙が貼ってあったんですけどそこがいったいなんのお店だったのか、毎日とおっていたのにさっぱり思…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある日常の非常口「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるような路地裏スナックよ。 私は店長のミス・モモコ。 あら、皆様投票帰りかしら? 雨の中お疲れ様! 雨降って地固まる!っていうけど 無用な涙は見たくないというもの。 散々今ニュースで「パワハラ」が叫ばれているけれども ママは昔テレビ業界で働いていたことがあるのよ。 な…
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当番ノート 第45期
どんな異性が好き? と聞かれるのが昔から1番困る。先日困ったばかりだ。 見た目重視の一目惚れで恋が始まれたならどんなに楽だろうと思う。とは言え、顔立ちは確かに大事だし、私にも顔の好みというのはある。それを聞かれる時は、既に決まっている何人かの男性を例えであげる。それはもう何年も変わらない。どうやら私は面食いではないみたいで、私を昔からよく知る人からは、「あの人あんたの好きそうな顔じゃない?」と悟ら…
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当番ノート 第45期
モテたい。 これは動物の普遍的な願いではないだろうか。 「モテたいか……ならば力をやろう」と言われて断る人は十中八九いない。 モテに至る道程はさまざまで、学歴、ボディメイク、ファッション、整形—人類はモテるために自らの能力を最大限引き出す努力をし続けてきた。 カラコン、エクステ、マツエク、ブランド品、盛りブラ、ガードル、それが抜本的対策でなくとも—プラスオンで何とかなるなら安いもの—と虚飾ドレスア…
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当番ノート 第45期
うちはお母さんが結構ひとりごと多くて自然とわたしもひとりごとしゃべるようになっちゃったんですけど、ひとりごとってしゃべると頭の中整理できるじゃないですか。迷い的なものが口に出すととりあえず確信に変わる、みたいな。「次はあれやんないと」とか「あーそっか、これこうだった」とか。 中学生くらいのときに、まあ中学くらいってみんなそうだと思うんですけど、勉強とか友達関係とか部活とかのいろいろがキャパをこえち…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある日常の非常口「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるような路地裏スナックよ。 私は店長のミス・モモコ。 もうこの道は覚えたかしら? どうやら、選ばれし者しかここには来れないみたい。 迷いがちのこの東京で、有名な待ち合わせスポットと言えば、「いけふくろう」じゃないかしら。 池袋と言えば独特の磁場が渦巻いているような気が…
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当番ノート 第45期
手を繋ぐ。 という行為に、何か特別な意味なんてないのかも知れないし、お互いの手に触れる関係ならば、暗黙の了解なのかも知れないけれど。 手を繋ぐ。 という行為には、色んな意味合いがあって、色んな関係性が見えてくるような気がしている。 家路に向かう親子。 放課後一緒に寄り道をしたクラスメイト。 コンビニ帰りのカップル。 労わりあう老夫婦。 はたまた、 歌舞伎町を歩くホストと太客。 酔いに任せた上司と部…
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当番ノート 第45期
「あなたは大丈夫」とよく言われる。 徹夜明けで眠い時、熱が出ている時、恋人と別れた時、締め切り直前の時。 なぜそうなのか分からないけど、他者からみたらそうなのだろう。 感情表出バリエーションがポジティブな時を100としたら、ネガティブな時が5程度なのだ。 どういうことかというと、眠くても痛くても悲しくても怒ってもお腹が空いても表情が同じで、そういう時は草葉の陰でひっそりと自己治癒力を発動させ消火・…
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当番ノート 第45期
小学校のときに、中学受験の塾に通ってました。クラスが成績によって13個とかに細かく分かれてて、マンスリーテストっていうのが毎月あって、テストの点数によってクラスがあがったりさがったりするとても顕著な競争社会でした。目に見える優劣にすっかりはまっちゃって、毎回いい点とらないと、って塾に対してわりと意気込んでいた小学生だったんです。 テストでいい点をとるには、満遍なく勉強しとくのに越したことはないんで…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある日常の非常口「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるような路地裏スナックよ。 私は店長のミス・モモコ。 家も心も湿度120パーセントです! 東京は人も心もジメジメしてるから、 『だけどお天気なんて…心で変わるのさ』カラッとした国に逃げたいわ〜! すぐ『あっちこっち』行きたくなる脱出グセの強い私と比べて、港区民は「何処…
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当番ノート 第45期
今も忘れられない人っていますか?とある仕事の打ち合わせの際 話の流れで聞かれて、忘れられない人はいないと答えた。けれどその質問をされた時、忘れたくない人ならいるよとは言えなかった。それはきっと、その日打ち合わせをしていた目の前のキミから、まだ未練があるんじゃないの?なんて茶化されて、これっきりになる事がなんとなく嫌で、だから口にしないまま 一緒にいる間は、たまたま思い出しただけだと思いとどめた。 …
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当番ノート 第45期
2020年のオリンピック出場をかけた戦いが日々繰り広げられ、スポーツニュースが賑わっている。かく言う私も自己新記録を樹立した。ここからはスポーツをした人の話ではなく、これまで一切スポーツをしてこなかった人間の悲しい懺悔であるので、心して聞いた後は速やかに忘れてほしい。 自己新を出したのは体重。 ついこの間、健康診断に行ってきた。自分の体の現状を知るのが年に1度の健康診断と、その後通告される二次検診…
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当番ノート 第45期
子どものころから、大人の人がコーヒーを飲みながら仕事をしたり会議をしたりするのがかっこいいなあとよく思っていました。なにかの合間にたまにひとくち、コーヒーを飲むというのは、さぞかし気分が良いものなんだろうなぁ、と。 でも、大人になって、コーヒーっておいしいなって思うようになって、パソコン作業やイラストを描いているそばにコーヒーのカップを置いたりしてるんですけど、なにかをしながらコーヒーを飲むってい…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある日常の非常口「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるような路地裏スナックよ。 私は店長のミス・モモコ。 今日も人生綱渡り!楽しんでいってね! 綱渡りといえば、最近闇営業で逮捕された芸人さんたちに比べれば私たちは「なんて恵まれた暮らしをしてるんだろう」って思わない? だって芸人として、働けど働けど某お笑い事務所に収入の…
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当番ノート 第45期
今年に入って大事な仕事の兼ね合いで19歳の女の子と知り合った。一歩間違ったら娘でもおかしくない気さえしてしまう程、私からしたら生まれてきた時代も生きてきた次元もまるで違う彼女は、周りの大人達から、ありのままを大切にされてきたであろう育ちの良いお嬢さんで、とても好感を持てたのだけど、さすがに10代の女の子との共通項は中々みつけづらく…… そんな時に私がよくする質問が「好きなアーティストってなに?」な…
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当番ノート 第45期
ある日のこと。ありがたいことに絵のお仕事がひと段落したので、私はいつものカフェで請求書を作っていた。 PCとスマホの電卓アプリを交互ににらめっこしていたら、向かいに座って同じく仕事をしているS氏が怪訝な顔をしている。 「何やってるんですか?」 「請求書作ってるんだけど、ギャラリーと作家で按分比が決まっててさあ。計算が難しいんだよね」 「へえ、そういうものですか」 「んんん」 「まだやってるんですか…
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当番ノート 第45期
あんまり普段からささやかな幸せをほんわかと感じられる体質でもないので、嬉しいことが起こりそうだと、この機会を逃してはならないといろんな手段で底上げをする癖があります。 なんていうか、ポテトチップスを食べていて、そろそろのどがかわいたから飲み物が飲みたいな、って思ったときに、ぐっとこらえて塩気の限界がくるまでポテトチップスを食べたりしています。ポテトチップスを食べること自体はもう結構どうでもよくて、…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある小さなお店「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるような路地裏スナックよ。 期間限定でオープン中! 私は店長のミス・モモコ。 また来てくれてうれしいわ〜 こんなに暑かったら焼き鳥を片手にビールをグイッといきたいわね〜! この暑さなので、おへそを出したティーンエイジャーが狂い出す「渋谷」の話でもしましょうか。 今日は渋…
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当番ノート 第45期
彼女との出会いは不思議なものだった。去年の暑い日、予報を裏切る小雨。私はついさっきまで 無機質な関係の相手と、いつもの場所で、いつもの事を終え帰るだけの平日の夜を過ごした後、決まって立ち寄るいつもの店で、いつものカフェオレを頼んで、いつもの曲で耳を塞ぎ、いつもの席で儀式みたいにボーッとしていた。全ていつも通りだった。 時、 バタバタと誰かが店に入ってきてビールをカウンターで頼み、スタッフから奪い取…
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当番ノート 第45期
私は漫画が好きである。アニメも大好きである。ゲームも少々嗜む。 ここ数年は特撮にどハマりし、幼児に挟まれてヒーローに声援を送ったりしている。 漫画は毎月20冊は買う。電子書籍を購入するようになってからは、部屋のスペースを取らないことを良いことに購入ペースは落ちない。アニメでは、1クールの終わりと始まりに四季の移ろいを感じる。見終わったらSNSでさまざまな感想を見てうなづく。買い専だったコミケもつい…
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当番ノート 第45期
なにかしらいやになってもうなにもしたくないなっていうときに、じっとしばらく動かずにいることがあります。 たとえば自宅のお風呂場の脱衣所などで座り込み、じっとしておくんです。いやだなって、いう感じが通り過ぎるのを待つんですが、そのときにおとものようなものとして、ドライヤーをそばに置いて、稼働させます。じぶんとほどよい距離感の床に置き、スイッチをいれます。 なにもしたくないときの、なにもしようとしない…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある小さなお店「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるようなお店。 期間限定でオープン中よ。 私は店長のミス・モモコ。また来てくれてうれしいわ〜 今日も雨だから客足が遠のいちゃうのよね〜 さっ、営業営業。 ・・・えっ?ママはなんの為にこの仕事をしてるかって? そりゃあ決まってるじゃない。 「2000万貯めるためです」よ。…
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当番ノート 第45期
よく人から、あなたは優しいよねとか、いい人だよね、なんて言われる人っていると思うんだけど、よくよく世の中に生まれてきた人間って、大人になると大体の人間が「優しくできる」と思うんです。 ただ、優しさといっても「優しい人」と「優しくできる人」ってちょっと違うような気がずっとずっとしてて。だから人と出会い 話し合う時、相手が「根っから優しい人」なのか「ただ優しくできる人」なのかをふと考えてしまう癖がある…
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当番ノート 第45期
自分の読書遍歴を言ってくださいと言われたら、答えはノーだ。ノーセンキューです。 読書は、その人の考え方を形成する材料だ。どんなものを好んで食べてきたかで、その人を形作るものの一部が垣間見える。許されるなら「装丁がすごく素敵で買ってみたら中身も面白かったんですよね」って受けごたえで、見栄えのいい且つちょっと中身は難しめの本を並べて見せて、世の中を渡り切りたいと心の底から思っている。 さて、30半ば~…
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当番ノート 第45期
19年くらい前、(だいぶ前ですね。)ビューティフルライフというドラマがありました。しがない女子中学生だったわたしは毎週かかさず見てたんですね、ビューティフルライフ。その中で、どうしても印象に残るシーンがあって。物語中盤で、なにかいさかいが起こり、解決に向かい、キムタクが常盤貴子の車椅子を足でクルッとまわして正面から抱きしめて、抱きしめられた常盤貴子が「ねえ柊二、こんなに抱き合っていてもどんなことを…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある小さなお店「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるようなお店。 ふらりとたどり着けたあなたはラッキーね。 期間限定でオープン中よ。 私は店長のミス・モモコよ。 今日は雨だから、暑さを吹き飛ばすモヒートなんていかがかしら? あら、いつも通りのジャックダニエルソーダ割り? 男は「定番が好き」なのね?もっと冒険してみたら?…
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当番ノート 第45期
不思議なんだけれど、大人には何故か 妙な高さへの拘りがある気がする。例えばそれは、マンションに住むなら高い階がいいとか、ドレスを着る時はハイヒールじゃないと自意識が萎えるとか、高層ビルにある会社に勤めているから鼻が高いみたいな 「高い」に越したことはないという変な拘り。 まってまって。 確かにマンションの最上階に住んでれば自慢になるだろうし、10cmヒールを履けば、頭身も脚の長さも見栄えが良くなっ…
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当番ノート 第45期
「文章を寄稿してみませんか」と当アパートメント編集長からお誘いを受けた。 快諾した数日後、後悔した。 これが仕事やアートショーのためのプロモーションならば、是が非でも期日内に何らかをひねり出して命と引き換えにでも差し出すのだけど。何もないところに自分事をポンと置くことの行為。当件に関しましてはビジョンもゴールも報酬もない。自由意志で自発的に書きたいことなど持ち合わせていないのだと、自分の空っぽさに…
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当番ノート 第45期
昔から、これだな!となにかをさだめることが苦手です。 ものごとを決断するってとても難しい。 くだりのエスカレーターとか、小さい頃ほんとむりでした。 乗るときにどちらの足から出せばいいかわからなくて。 混んでるところだとどんどん後ろから人が来ちゃうし。 大学生の頃は、映画が好きで、よくDVDを借りにいってたんですけど、 なかなか何を借りるか決められず、 これを借りることによって私の2時間はなくなって…
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当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある小さなお店「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるようなお店。 ふらりとたどり着けたあなたはラッキーね。 期間限定でオープン中よ。 私は店長のミス・モモコです。 ゆっくり腰掛けてハイボールでも飲んでいってくださいね。 さてさて、今日はこないだ来たお客さんについてお話でもしましょうか。 まず、スタンダードの量産型新宿お…