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当番ノート 第61期
アパートメントで連載をさせてもらって、怪談をひとつも話したことのない友人から連絡を貰いました。 「こういうのすき。わたしも変な体験した家があること思い出しちゃった」 そうして聞かせてもらったおはなしです。 あやちゃんは、お家の事情でお引越しを10回以上経験しています。そのアパートには、あやちゃんが二十歳から三年間ほど、お母さんと妹さんと三人で暮らしていました。 あやちゃんがそのアパートで暮らし始め…
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当番ノート 第61期
滝薫というアカウントは、趣味で短歌を作っていたのをエッセイ投稿サイト用にしつらえたもので、年月にすると結構長い付き合いになる。生活力や経済力が全くないのを見ないふりをして、文章で食っていくのを夢見ていた月日がそっくりそのまま保存されている。 今の私は、ライターになりたいと思っていない。関心もあまりない。というと、負け惜しみのようで嫌だが事実なのだから仕方ない。しかし、出涸らしのように未練だけは一丁…
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当番ノート 第61期
今回はフィクションだと思ってお読み下さい。自分でも信じられないことも多く、まとめた事がない話をしてみます。 きっかけは、数年前の夏でした。 我が家での変な現象もスパートをかけるように日に五回六回と回数を増やしており、それを毎日のように配信で「今日はこんなことがあって〜」としゃべくり倒していた頃。とある人から連絡を頂きました。 お世話になっている酒場の先輩からの連絡で、その先輩が「オオタケさんに伝え…
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当番ノート 第61期
チルな姿をマッチングアプリで設定してるやつはろくでもない。これは経験から形成された偏見だが、映えを狙ってSNSに投稿こそしないもののシーシャに行くのはめちゃくちゃ好きだ。いわゆる水タバコというもので、コロナ前は友人が働く専門店に結構な頻度で通っていた。 コロナ禍に突入してからは、感染者数を見ながらペースを減らし、おそるおそる行ったり諦めたりしていた。シーシャ屋ではマスクをしている人はいない。当たり…
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当番ノート 第61期
わたしが電話で友人に怪談を話していると必ず言われるのが「あなたが怖い話し始めてから、バン、と壁を叩く音がする」という事です。のめり込んで話し続けてしまう事もしばしば、話を聞き終えた友人は口を揃えて 「話も怖いけど、それより壁を叩く音がバンバンバンバンと激しくなってる今が一番怖い」 と言います。今、バンバンって音、聞こえてないですよね? こんばんは、オオタケです。今日は聞かせていただいた「アパートメ…
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当番ノート 第61期
元来、怠惰な性質を持った人間だということに気付きつつある。病前性格を考えても、勤勉さからは程遠いようなサボり魔だったのに、私は自分のことをできるやつだと思っていたらしい。実際、躁状態にはキマってしまうのでなんでも軽くこなせる。サボった分を爆上がりの一時的なエネルギーによって補ってきた人生だった。 しかし、躁状態をコントロールすることを覚え、高揚感に身を任せることがなくなった今、一夜漬けによって定期…
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当番ノート 第61期
我が家の同居人、妖怪カワウソの話の続きです。カワウソちゃん二回目の登場は、「怖いな」と思う体験でした。 とある夜。まだ22時前に、夫がリビングでうとうと寝始めました。平日ど真ん中だし、23時ごろになったら起こして寝室に移動させよう、そう思ってそのままスヤスヤ寝ている夫を眺めながら家事をしていました。 22時半、夫が自分から目を覚ましました。「ん〜…ごめん俺、話してる途中で寝てもうたな、ごめんな〜」…
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当番ノート 第61期
ボディポジティブやルッキズムに関心が高い人と関わっていることが多い。一方、昨今の私はそんな美徳をかなぐり捨てていて、太っていておしゃれではない自分を否定も肯定もできないという曖昧な立場にいる。 本当は、ボディラインを強調したり鎖骨とかカリっとした膝小僧とか出したりしたい。しかし今の私は贅肉が多すぎる体型で、チープでカジュアルな服ばかり着ている反動と、まだ若い女枠で居続けたいというあがきがもたらした…
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当番ノート 第61期
わたしが初めてこの新居での「ふしぎな現象」として思い当たったのは、本当に微かな、微かな違和感だった。 部屋を掃除したり、食器を洗ったり、洗濯物を干したり、携帯を触ったり、漫画を読んだり。そんな作業をしている最中、自分の意識とは全く関係なく「五十音」が口から溢れる。掃除をしてる途中に「ぱ」とか、携帯を触っているときに「む」とか。そんな一音だけが無意識に口から出ている。なんて変な癖が付いてしまったんだ…
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当番ノート 第61期
晴耕雨読な日常を欲している。今の興味は数学と英語の勉強と、農業に注がれている。新鮮さと驚きを持ってこの変化を楽しんでいる。 ゴリゴリの私立文系脳だったので、理数系から逃げられるだけ逃げて生きてきた。因数分解、二次関数からしてきつかった。高校数学の範囲になると言わずもがな、授業は黒板を見つめてノートに書き写す作業となった。数学を取らなくてよくなった時には教室のゴミ箱に教科書を捨てるという奇行に出るほ…
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当番ノート 第61期
ーでは、今度はお話の途中で質問をさせて頂きますので、もう一度最初からお願いできますか? はい、ええと、僕が高校生の頃の話なのですが、その頃自分は出身地の××県から⬜︎⬜︎県の高校に通っていて、普段は高校の近くに借りたアパートで一人暮らしをしてるんですけど、ちょこちょこ◯◯線に乗って××の実家に帰っていて。 ーはい。 その日は、テスト前で学校が昼に終わったんで、実家の方に帰ろうかなって、◯◯線に乗っ…
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当番ノート 第61期
前回、今の自分にとっての自分語りの位置付けについて話した結果、正直何を書けばいいのかわからなくなってしまった。しかし連載は続いている。もはや自分の言葉に何の価値も見出せないのに、人様に感想までいただいた上で掲載されるのが苦痛だ。表現したいという欲求が消えているのに白いページを埋めていくのは多方面に失礼な行為ではないのかと己に問いかけている。 一週間悩んだ結果、どう転んでも私には私の話しか書けないと…
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当番ノート 第61期
こんばんは、オオタケです。 突然ですが、私は愛煙家です。 普段、音声のみで怪談と雑談の配信をしている際にもタバコを吸いながら話しているのですが 「オオタケさんがそんなに絶え間なくタバコを吸うのは、魔除けの意味合いがあるのですか?」 とご質問いただいたこともあります。 タバコによる魔除け。 有名なのは「タクシーの運転手さんが、非喫煙者でもダッシュボードにタバコを一箱入れてる」というやつでしょうか。 …
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当番ノート 第61期
最初に書き添えておきたいが、私は「コンプレックスや障害について」書き綴っている人を否定したいわけではない。ただ今の私にはフィットしないものだと言いたいだけだ。 他人が読んで面白い、価値があると思うものを書く能力があるという自負が消えつつある。あれほどエッセイという分野にこだわり、自分のことしか書けないと言い張っていた過去を振り返ると、信じられない気持ちが大きい。しかし、今となってはみなぎっていた自…
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当番ノート 第61期
こんばんは、オオタケです。 わたしは書類の職業欄に「主婦」と書く生活をしています。 こまごましたお仕事なんかはしたりするのですが、てんでバラバラな諸々に手を伸ばしているので、自分をなんの所属とすればいいのか分からないのです。 上記の通り何かやるにしろ、一番多いのは自宅での作業です。 そうです。基本ずっとアパートメントの中にいます。 そんなアパートメントで、夫婦二人暮らしの中でもうひとり、我が家で同…
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当番ノート 第61期
「書く」とは飛び道具のようなもので、頭の中の雑念を取り出して一つの文章にすることで綺麗に決着をつけるというか、前に進ませてくれる源になる気がしている。その推進力にあやかりたくて、今まで自分語りを量産してきたのだが、どうも過去の事例と同じように片付かない現状を感じている。 先週、やっかみを丸出しにした社会的弱者の悲鳴が漏れ出る文章を書きながら、これはいったいどこに向かっているのだろうと思っていた。結…
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当番ノート 第61期
皆さんは、お化け屋敷はお好きですか。 わたしは大の苦手です。 ホーンテッドマンションを指の間から薄目で見ながら縮こまって乗っているのが精一杯です。 皆さんは、ホラー映画はご覧になりますか。 わたしはとっても苦手です。 二人以上で、なおかつ顔を手で覆い隠しつつ、更に大絶叫で実況しながらでしたら、なんとか視聴可能です。 皆さんは、怪談はお好きですか。 わたしは大好きです。 目の前で何かが飛び出してきた…
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当番ノート 第61期
生きているだけで尊いという絵空事をこの身で裏切りたいと強く思う。そこにいるだけでいいよという優しいメッセージは私にとって資本主義、ひいては社会からの解雇通告のようなものだ。リストラされたけれどお情けで生かされている現状に一矢報いたい。生きてるだけで尊いのはわかっている。でも存在しているだけで自分を認められるほど、私は強くなかった。 去年の連載のテーマは、日常エッセイを通じて「生活保護でも案外生きら…