こんばんは、オオタケです。
わたしは書類の職業欄に「主婦」と書く生活をしています。
こまごましたお仕事なんかはしたりするのですが、てんでバラバラな諸々に手を伸ばしているので、自分をなんの所属とすればいいのか分からないのです。
上記の通り何かやるにしろ、一番多いのは自宅での作業です。
そうです。基本ずっとアパートメントの中にいます。
そんなアパートメントで、夫婦二人暮らしの中でもうひとり、我が家で同居している子についてご紹介します。
妖怪のカワウソです。(写真はたぬきの夫婦徳利ですすみません)
みなさんは「妖怪の」カワウソはご存知でしょうか。
人に化ける妖怪、といえば狐や狸を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。
カワウソも狐や狸と同じ「ムジナ」という動物種に分類されます。
このムジナの妖怪の特徴が「人に化ける」ことなのですが、そのプロフェッショナルで化ける技術力のトップランカーが狐と狸なのです。
その点妖怪カワウソは、化ける上手さピラミッドでだいぶ下の方に位置しています。
とにかくもう、間の抜けた化け方をするのです。
古い伝承で有名なのが『酒売ってくんろ』というやつですね。
昔々、酒屋さんが店じまいをした夜半に「トントン」と閉めた戸口がノックされます。
あら何かしら、と戸を開くと、こんな夜には似つかわしくない小さな子供が立っています。
「酒売ってくんろ」
小さな子供に簡単にお酒を売ることは出来ません。
おつかいかしら、と「あなたどこの子?」と聞くも、
「酒売ってくんろ」
と繰り返すだけ。
これは何かおかしいなと思った店主は、
「あなたどこから来たの?」
とお家の場所を聞きます。すると、
「かわや!(川から来た!)」
そう答えるのです。
自分から「川から来ました=ヒトではありません!」なんて壮大なネタバレをしちゃうんですね。
これはカワウソが化けてるなあと気づいた店主は「あなたに酒を売ることはできないよ」とカワウソを帰したそうです。
要約してますがざっくりこんな感じ。
また、カワウソの姿のまま手ぬぐいをほっかむりしただけで人間に化けられているぞと自信満々で人前に出て、すぐバレちゃうみたいな話もあります。
こんな感じで、とにかく愛らしい妖怪なのです。
うちに初めて妖怪カワウソが出たのは、わたしと夫と共通の友人の三人で電話をしていた時でした。
うちのリビングで、わたしの携帯をスピーカーにして、向こうの電話口の友人と夫婦で話していました。
友人と夫の話が盛り上がってきたなあという頃、ふと炊飯器にお米が少し残っている事を思い出し、二人には声をかけることなく、そのまますぐ側のキッチンへひとり向かいました。
二人の会話を聞きながらお米をラップに包んでいると、ふいに電話口の友人が
「ねえオオタケちゃん、今『うん〜、そうだねえ〜』って、言った?」
そう声を掛けてきました。
わたしが口を開く前に夫が
「うん、今オオタケが『うん〜そうだねえ〜』て言うたよ」
と返します。
わたし、何も声を発してなかったんです。
あいづち程度なら無意識にしていたりもしそうですが、わたしその時、ラップに包みきれなかったお米玉を口に放り込んで「意外におっきかったな…」と一生懸命咀嚼していた為、そんなにハッキリ発語できるとは思えません。
「わたし、何も言ってないよ」
「えっ、言うてたやん!同じ部屋の俺が聞こえてるんやから!」
「いや、たしかにオオタケちゃんの声だったんだけどさ、なんか雰囲気が違うなと思って気になって…オオタケちゃんの声だけどオオタケちゃんじゃなかったよね!?」
ここからわたしが話した話してないの大問答で夫と友人の議論が白熱し、二人をどうにか止めようと出た一言が
『さっきのは妖怪のカワウソが出たんだよ!!!』
でした。
妖怪のカワウソはヒトに化ける。声真似だけだったり不完全な人間姿のモノマネだったりする。
言葉も姿も不完全だったりすることか多い。
昔ながらの妖怪の起源のように、『よくわからない事象』に対して自然に妖怪の名称が付いた瞬間でした。
二人は途端に納得してくれて、この場はうまく収まったのですが。
ここから後、妖怪カワウソチャンは我が家にドンドコ現れることになります。
一番最近は、リビングでくつろいでいる夫と、カウンターキッチンの中で換気扇下にて喫煙しているわたし、という日曜日の昼下がりに
「いっっっつ、痛ッッッ!!!!」
と、わたしの声で、まるで足の小指を角にぶつけたような声を上げていたそうです。
つづきはまた今度、よかったら。