当番ノート 第1期
ボクには、数年前から憧れに憧れている人物がいる。 彼は世界的に有名な音楽家で、奏でる音楽は、荒々しくて、優しくて、とても素直で誠実だ。 歌詞やいろんな映像を見ながら思うのだけれど、 彼は、とてもシャイで不器用な人間なんだろうなと思う。 発する言葉はときに端的で、いろいろな誤解を生んでしまいそうで、 いろんな事柄に心を揺さぶられては、悪く言えばブレにブレているように見えるかもしれない。 でもきっと彼…
当番ノート 第1期
さて、こちらの洋館に入居させていただいてから早いもので一週間。 ぱたぱたと時間が流れてゆく。 料理屋の仕込みに追われ、いや全く持って追われてはいないのだがそういうことにすることにする。 まだ誰にもお会いしてないのだけれど、 右隣の杉山さんは玄関のドアが閉まるところをお見かけした。 お姿はまだ。残念。 お隣ということもあり、いろいろ、ニオイやうるさくないかとか諸々、気に留めている。 我が家は夫を筆頭…
当番ノート 第1期
偶然にもこのアパートメントへの入居と機を同じくして 僕自身も引越をすることになりました。 何のことはない、距離にして2.5kmくらいしか違わない 隣の駅に越すだけなんですけどね。 昭和の匂いが満載のレトロマンション。 夕方に家の内覧に行った時、遊歩道を通る風の感じや 最上階の窓から見える夕日がとてもきれいだったのを見て 「ああ、これはビールがうまいわ。絶対。」で、決めました。 僕も含め、田舎から出…
当番ノート 第1期
目覚ましいテクノロジーの進歩はいつしか我々をも進化させうるだろうか? 僕の幼い頃は携帯電話なんてなかった。 パソコンも一家に一台普及していなかったし、CDよりもカセットテープが普及していた。 こんな事を書いていると途端に自分が随分と年老いてしまったように感じる。 まだ若いがそれでも多少年を取った。 少なくとも人生を悲観しながらぼんやりお酒を飲めるぐらいには。 だがこの明け方の浦島太郎のような心持は…
当番ノート 第1期
目覚めてからなんだか落ち着かない。 部屋にいても落ち着かないので外に出る。本屋、レコード屋、スーパー、と歩いて昼になり、来たことのない喫茶店を見つけて入る。窓側の席に着くと朝からのそわそわが急に止まった。なんだ。この席に座りたくて落ち着かなかったのか、と自分のお尻を見る。 自分の居場所を求めてさまようお尻。 この小一時間、お尻に街を歩かされていたということだ。 たまたま電話があって落ち合った友人と…
当番ノート 第1期
このアパートメントの名前は何だったっけ。 たぶん、名前なんてどうでも良かったし、実際名前は必要とされていない。 僕の中での「名前」の優先順位はいつだって低いのだ。 この古い洋館みたいなアパートメントに引越してから今日でちょうど一週間が経つ。 一階には管理人のショートカットのちょっと美人の踊り子が小鳥と暮らしている。 いい響きでしょ、ことりとくらすおどりこ。 踊り子さんはいつも肩にヒヨドリを乗せて庭…
当番ノート 第1期
ボクは今、家の荷物を段ボール箱に詰める作業の合間を見計らってこの文章を書いています。 もうすぐこの慣れ親しんだアパートの一室から引っ越して、新しい街で新しい生活を始めるのです。 ・・・っとあたかも田舎からはるばる上京するような口ぶりなのだけど、 実のところはというと会社のお引っ越しに合わせて近くに引っ越すというだけ。 こんな機会だからと、昔から住みたいと思っていた土地に物件を決め、 楽しみなことこ…
当番ノート 第1期
アパートメント兼ギャラリー。 青山通りを外国産の車で闊歩。 じぶんの店を構える。 この三つが二十歳になるまえに構想、否、妄想していたこと。 かおりさんとはるちゃんから入居のお誘いがある少し前に、ふと思い出したのである。 記憶の中から甦った貧乏学生時代の夢。 少年よ大志を抱け。 大志かどうかも定かではないけれど。 妄想でも空想でも絵空ごとでも、 思い描くことは真っこと大事なんだと、今さらながら。 安…
当番ノート 第1期
先日、学生時代からの友人が奥沢の喫茶店でライブをする というので久しぶりに一人でいってきました。 ライブというには小さすぎる、ギターとピアノの弾き語り。 急な出演で告知も充分でなかったらしく、お客さんは十数名程度でした。 お客さんは彼をよく知る方ばかりで、 終始あたたかなムードでライブは終わりを迎えました。 いろんな音楽プロデューサーと呼ばれる人たちから声をかけてもらって デビューする、しないとい…
当番ノート 第1期
また二日酔いだ・・・。 というより今、いったい何日酔いなのだろう・・・。 安酒を来る日も来る日も浴びるように飲んで、時に暴れ、叫び、泣き、記憶を失くして頭痛と共に道で目覚める。 鉛のように重たい体を引きずりながらアルバイトに向かう道すがら、また思う 「俺は馬鹿か・・・」と。 去年4月、6年間苦楽を共にしてきたバンドが解散した。 理由は簡単、全員が全員と一緒に居る事にうんざりしたから。 積み上げてき…
当番ノート 第1期
「六角堂ってここからどうやって行くんですか?」 柳馬場六角の交差点で修学旅行中らしい学生三人に呼び止められた。 京都市内で暮らしていると道を聞かれることが多い。聞かれることが多いよねぇ、と話すと「そうかぁ?」と知人。道を聞かれたことなど一度もないと言う。道を聞かれやすい人というのがいるらしい。僕はそうなのだろう。 「このまま真っ直ぐ行けば右手に見えてくるよ」言い終わるより先に指さす方へ三人は駆けて…
当番ノート 第1期
小中学生の時代の大の親友は、高校入学するとすぐににナントカという新興宗教に入信してしまった。 信仰の自由は自由として否定するでもなく、勧誘されるでもなく、まあ、そのままなんとなく疎遠になった。 他の仲良しだった友達は、地方都市に転勤したり、結婚して遠くへ行ったりで地元には今でもやりとりする ような仲間は残念ながら見当たらない。 高校はちょっと離れた私立を選び、夕日の綺麗な港町の学校まで毎日片道二時…