当番ノート 第46期
2011年の東日本大震災で母方の祖父母が眠るお墓は津波で流されてしまった。たしか3・4年くらい前に手を入れてもらえたけれど、周囲には未だに瓦礫となった墓石があちこちに積み上がっている。 まぁ、正直なところその間、“お墓が流されてしまったこと”に関していえば、なんとも思わなかったのだけど。 そもそも祖父母とは、数えられるくらいしか会ったことがない。ふたりと過ごした時間の記憶はほんの少しで、どれもやさ…
当番ノート 第46期
2週間ほど前から、映画館に行きたくて仕方がない。 真っ暗な空間で、目の前の画面に思い切り集中したい。 誰かのストーリーに感動したい。心動かされたい。 もしくは不安にさせられたい、宙ぶらりんな気持ちにしてほしい。 そう思って今日、友人と映画館に行った。 偶然、私が観たかった映画を観ようと誘ってくれたのだった。ラッキー。 行ったのは近くの映画館。私がブラジル留学中にできた。 家から自転車で10分くらい…
当番ノート 第46期
当時のあなたは、この文章を見つける余裕はないかもしれない。それでも人づてに届く可能性を0%にしないためにおくります。 朝、ベッドから起き上がれなくなったとき、ひとりでなんとかしようとせず、職場に連絡を入れ、産業医のもとへ行ったこと、偉いです。でも頭の中は「大したことないと判断してもらって、復帰して、迷惑を掛けたぶんを早急に取り戻さなきゃ」でいっぱいになっていませんか。 仕事にも家庭にも迷惑を掛けて…
当番ノート 第46期
約3年前、猫を飼い始めた。わたし自身、当時は犬派だったが、当時のパートナーの希望で猫の兄妹2匹を迎え入れた。 小さい頃は、柴犬を飼っていた。わたしが生まれるよりも前から飼われていた“雅歌”という犬で、母がとてもとても可愛がっていたのを覚えている。それでも動物とは生活圏を分けるべきだという考えがあって、その犬はいつも屋外の犬小屋にいた。 そう思うと、ずっと家の中にいる猫との暮らしは、自分のなかにある…
当番ノート 第46期
4回目の投稿です。「トルコで出会った女性たち」シリーズ第4弾です。トルコで出会った印象的な女性たちとそれにまつわる私の記憶を書いています。1回目の投稿「ハティジェ」の冒頭にてこのシリーズの説明を詳しく書いておりますので、一体何について書かれているのか混乱された方はどうぞそちらをご確認ください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…
当番ノート 第46期
2019年8月16日(金)、取材のために車で山梨県へ向かっていた。 「車が好きでさ、 あ、好き、といってもここ最近の話で語れることは少ないんだけど。それに、十数年前に取得した運転免許はほとんど使う機会がなかったし、『車にお金をかける人の気が知れない』くらいに思っていたしさ。 でもね、こうやって長距離移動をする機会が増えると、アクセルを踏み込んだ時の加速がたまらねぇって気づいたんだよ! 運転中に大き…
当番ノート 第46期
会社の先輩たちがとても気にかけてくれるので、日々驚いている。 10月から新しい業務がはじまる。 それが決まったときから周りの先輩たちが 「これについては彼に聞くといい」 「こっちは彼女が詳しい」 「これ、役に立ちそうなリンク集」 「朝、ちょっと早くきてレクチャーするよ」 「昔の資料だけど、貸すから読みな」 と、もう色々な方面からサポートしようとしてくれる。 最初はなんだか驚いて面食らってしまった。…
当番ノート 第46期
経験にしがみついてはいないか。 大学に入学してから、10年間、なんかしらの形で演劇に携わってきた。演劇学科のある大学に入り、一限の授業に出席する難しさを知り、必修科目を再履修する友人をイケてると思い、入ったきた後輩たちへの母性に芽生え、5年生を迎える彼らの学費に思いを馳せた。違う違う。 大学に入った途端、高校時代を捧げた彼女に振られて、その腹いせに劇団を立ち上げた。目の前にあるなんかすごいことがそ…
当番ノート 第46期
最近、Netflixで『華麗なるメイクダウン!?』という番組を観ている。“Fashion Disaster(はちゃめちゃファッション)”だと言われる強烈なスタイルの人々をトーンダウンさせるというコンセプトで、ゴス、ロリータ、露出過度や塗りすぎの日焼けクリームといった様々なスタイルから変身させる。 ファッションにこだわるということは時に、自分を持っているかのように語られる。自己表現は大事だ、個性的な…
当番ノート 第46期
3回目の投稿です。「トルコで出会った女性たち」シリーズ第3弾です。トルコで出会った印象的な女性たちとそれにまつわる私の記憶を書いています。1回目の投稿「ハティジェ」の冒頭にてこのシリーズの説明を詳しく書いておりますので、一体何について書かれているのか混乱された方はどうぞそちらをご確認ください。 前回、アーニャとオクサーナについて書くことを予告いたしましたが、だだ長くなる恐れがあるのでアーニ…
当番ノート 第46期
数年前に子どもにせがまれ、海に行くことになった。 記憶している限り、水着なんて小学校以来着ていない。なぜなら、自己認識としてのわたしは、容姿も中身も松本零士先生の漫画『男おいどん』の「大山昇太(おいどん)」なのだ。かわいらしい水着を着て良いのは、ヒロインだけ。悩んだ末にいつかのアニメ『それいけ!アンパンマン』で、ジャムおじさんが着ていたようなラッシュガードを買ったのだった。 子どもたちと全力で遊び…
当番ノート 第46期
小さなころ、いや、 ひょっとしたら高校になるころまで 仕事といえば家族や 親戚のおじさんおばさんたちのものしか 認識していなかった。 幼稚園のせんせい バスのうんてんしゅさん お習字のせんせい おもちゃ屋のおねえさん 工事のかいしゃのひと 大学に入ってからは 自営業の知り合いが多く 踊り手、歌い手 鍼灸師、整体師、 フードコーディネーター カメラマン、 そんな仕事もあるのだなと認識するようになった…