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do farmers in the dark(16)

Do farmers in the dark

北のほうの、寒い国にいる

表題:北の方の、寒い国にいる

 

さて、今回もいつものごとく食って寝るの生活を続けており、またもや何もできず、またもや毎回のように最近の事や最近の絵についての事について、おおいに語っている。本当に申し訳ありません。

愛を込めて

 

<第1話 お弁当を作った>

 

最近お金が無い。実のところ、10日前からすごくお金が無い事に気付いた。全くの予想外だった。今の今まで自分がかなりリッチだと勘違いしていたんだ。いろんなもの買ってたよ。とにかく今すぐ、一刻も早く、己の頭部にクレジットカードを差し込み、天空に無数に広がるATMにもキャッシュカードを差し込み、現金を引き出さなくては!

でも己の頭部にクレジットカードの差込口は無かったし、天空に無数にATMは広がって無かった。あと己の頭部にクレジットカードを差してどうする?何も買えないし引き出せない。天空に私のための引き出し可能なATMがたくさんあったとして、ハシゴで登ってキャッシュカードを差しにいくんだろうか?自分は何を言っているんだろう。混乱していたが、なんとなくかっこいい事が言いたかったんだ。

現実のクレジットカードやキャッシュカードは、使用しても意味が無い状態だった。

だからお弁当を作って外食しないようにしたんだ。節約する事にしたんだ。それとよく歩いているよ。

 

弁当の内容はというと、キノコと、野菜と、加工肉を焼いて塩を振ったものだ。それを仕事のお昼休みにうまそうに食っているよ。創造性を著しく失っている人の作る弁当だと思った。僕はもう何年も前から、毎日着実に創造性を失っている。そして創造性を失い続けている事をとても喜ばしい事だと思っている。それは間違った考えだとは思うが、しかし弁当に塩をふる以外の、焼く以外の調理法をするこれっぽっちの勇気もないんだ。そんな人間には何も出来ない。だからいつも本当最低限の事しかしてないよ。

 

黒い綿のにっこり

ちぢれた綿のスーツを着た2人は、は虫類とソーセージ、肉を見て、にっこり。

 

 

<第2話 最近の絵の事について>

 

絵を描きたいのだけど、なかなか描けない。少しでも時間があったら、横になってしまうからだ。でも寝ていたらなんにもならないから何とか活動しようとは思っている。

時間内に何も終わらない。時間、時間、時間なんて物質としてはこの世には存在しないが偉大な人か偉大な複数の人が周期性のある運動を調べて時計を作った。時計を作るのに一体何人の人間が関与したんだろう。5人くらいだろうか。それとも1人の人が思いついたんだろうか。または、世界中に、ある時期から時計はあったと思うので、結構みんな何人も時計という発想は思いついていたんだろうか。それとも何年にも何代にも渡り数十人、100人くらいは関与したんだろうか。

ううっ!銀杏の匂いが臭い!今外で携帯のメモ帳に文章を書いているのだけど道端に落ちている銀杏が、ちょっと臭い!

とにかく周期性のある大きな回転する動きから割り出して区切られた時間に、僕は非常に遅れ間に合わないでいる。つまり周期性のある大きな回転から割り出して区切られた時間という単位、地球の回転やリズムに遅れていない優秀な人の動きより遅いという事だ。では体内の細胞などはその人たちよりどのくらい遅れているんだろう。みんなと同じように順次老けているので僕の体内はその他の人に比べてあまり遅れていないように思えるが、やはり僕の手や足や口などを動かしてないという事は、体内の電気信号とか代謝とかエネルギーの循環もやっぱり遅いんだろう。何も体を動かしてなくて横になってる時の脳内の電気信号の活動はどのくらい他の人と比べ遅いんだろう。もしかしたら何も体が動いてない時の脳の中の電気信号伝達速度や細胞の活動は他の人とあまりスピードが変わらないかもしれない。でも体を動かさずに何か考えたとする。それをメモしなければ僕は忘れる。なので万が一僕が脳を活発に活動させていたとしても、手でメモしなければ活動してないのと同じだろう。僕はメモしない。なので他の人に比べて自分は本当にスローなんだ。一刻も早く1日を2日に分割して、1週間を7日から14日に規定して、平均的な人の2倍動けば今からでも追いつけるかもしれない。でも早死にしそうだ。それとできる限りめいいっぱいダラダラしたいんだ。

だからあまり絵も描けないでいる。

しかし想像力を常に失っていているため、そのおかげでこれから絵に描こうと思っているテーマというかモチーフはかなり絞られている。エビ天と草、ミニカー、車と死、集まるもりそばだ。それと対岸にいる愛し合う男女の間に運悪く男女の視界を遮るように川の上の空中に固定され、その男女から腐った卵をぶつけられそれを貴重な栄養源として男女に悟られないよう、ぶつけられた腐った卵を口から胃袋にごく僅かに流し込み続ける人間だ。出来ればエビ天の他にオマール海老も描きたいし、描くかもしれない。とにかく絵を描きたい。

 

髪の毛を巻く

後頭部にすごいフィットする万力付き鉄板にて、私は頭をぺちゃんこにされたが、死の次の瞬間には、私は赤い棒で髪の毛を巻くロボットに転生していた。今度は詰まるまで髪の毛を巻くんだ。

 

 

<第3話 娘とおしゃべり>

 

時刻は22時、何曜日だったか忘れたが、奇跡の瞬間が訪れた。もう3才と半年になる娘が電気を消した布団の上で、

 

「父ちゃん、お山の話をしてよう」

 

と言ったんだ。奇跡だった。最近の僕のだらしない生活態度のせいで、娘が僕に話しかけてくれる事柄は、主にブロックのおもちゃでうさぎさんのおうちを作って欲しいという事と、それはダメですという注意と、抱っこしてぐるぐる回転させて欲しいという3つの事に絞られていた。ちなみにダメだと注意される事を僕は最も忌み嫌っているので、娘にダメと注意された際、なぜダメと言うのが良くないかをこと細かに、かつ要領の得ない長文で毎回娘に説明している。ひどいやつだ。多分それもあって具体的な要求がある時以外は僕とあまり話したくなかったのかもしれない。

それが今日は久しぶりにお山の話をして欲しいと言われて、僕は舞い上がった。父ちゃんのお山のストーリーを聞かせて欲しいだなんて!渾身の話を披露したいと思ったよ。早速話を始めた。

 

「お山の上に、うなぎを食べたいバッチブルと、桃を食べたいベッチブルがいました。」

「お山の話をしてよ」

「これがお山の話だ」

「うなぎを食べたいのはベッチブル?」

「うなぎを食べたいのはバッチブルだよ」

 

「バッチブルはうなぎをたくさん食べるためにお金をたくさんもらおうとして、一生懸命勉強していい会社に入りました。しかしバッチブルは全く仕事が出来なかった。仕事が苦手だったんだ。全く通用しなかった。だからうなぎを自分で作ってたくさん食べました」

「ベッチブルは桃をたくさん食べるためにお金をたくさんもらおうとして、一生懸命勉強していい会社に入りました。しかしベッチブルも全く仕事が出来なかった。仕事が苦手だったんだ。全然通用しなかった。だから桃を自分で作って食べましたとさ。めでたしめでたし」

 

僕は一瞬とてもいい話ができたと思ったが、それは間違いだった。とてもひどい話だった。ひどく疲れイラついた人間しかこんな話は考えない。まずバッチブルとベッチブルは一生懸命勉強していい会社に入ったのに、そんな人が仕事が出来ないはずが無いからだ。相当な不運が重ならない限り、一生懸命勉強して会社にも入ったバッチブルとベッチブルはすでに絶対に仕事が出来るはずだったし、一生懸命勉強した2人は一旦出来なくてもすぐ修正するはずだった。絶対に会社で通用するはずだった。あとうなぎや桃を自分で作って食べたという事だけど、そのうなぎや桃を売って生活しているのだろうか?だとすれば仕事が苦手という事ではなさそうだ。あとそれぞれ単独でただうなぎを食べたいだけ食べて、ただ桃を食べたいだけ食べた話になっているので、楽しいところが無かった。二人はその後も独身だったのだろうか。バッチブルとベッチブルが友達になったとか、もともと友達だったとか、2人に恋人が出来たとか、作ったうなぎや桃で世界を救った、もしくは作ったうなぎと桃によりとんでもないトラブルが起こるというようなシーンが無いのも問題だった。

娘は特にこの話に対して感想は言わず、再度お山の話をしてと言った。僕は別の、以前したお山の上からロンTをお尻に引いて滑る話をした。

お星さま大好き

お星さま大好き

 

 

<第4話 帰り道>

 

普段ほとんど無意識なので印象に残る事柄があまり無い。同じような事を繰り返している。何か刺激があると、何パターンかの反応をし、反応不要な刺激には反応しない、そして経験した事のない刺激にはパニクり汗を出す。そんなアプリをいつの日かインストールしバグを修正するためだけのバージョンアップをここ何年か、一定のタイミングで行っているかのよう。そもそも下らないアプリをインストールしているし、未だ更新しバグっている。アプリを削除したい。

いつも通りほとんど無意識でいつもの帰り道を歩いていると、背の高い男性が少し大きな声を出して後ろから走って僕を追い越して行った。その直後にその男性の母親らしき女性(何となく母親だと思った)が男性を追いかけて、待って!と言いながら走っており、僕を追い越して行った。追い越す時にその母親らしき女性は僕に「すみません。」と申し訳なさそうな抑揚で言った。僕は抑揚無く「イヤイエ」と言った。相手に少し抑揚があったので、自分も少し抑揚つけたかったけど抑揚がつけられなかった。一瞬僕も男性を追って走る事が必要かと思ったが、それはあまり良くない間違った行為である可能性が高かったのでそもまま歩いた。自分を追い越した男性は左の道に曲がり見えなくなり、それを追って女性も左に曲がった。その後曲がって行った道を覗くと、男性は走るのをやめてちょっと大きな声を出して万歳のポーズをしていて、女性は追いついてすぐそばで何か男性に話していた。とにかく男性に女性が追いついてよかったのだけど、女性が申し訳なさそうな抑揚ですみませんと言わなくていいような状態にするにはどうしたらいいだろうと考えた。どうしようもなかった。常にかなり上機嫌で軽い躁状態になる方法を、日本中に伝わるよう大多数の人間に啓蒙するくらいしかない。ひどい考えだ。すみませんと言いその返事をしただけで結構上出来だったんだ。すみませんと言えない状況の人もいるだろうし、反応出来ず返事出来ない状況もあるので。

するといつもの公園の入り口が見えた。広い公園で、公園の中を横切っていつも帰る。木がたくさん生えている。先ほど女性が男性を追いかけている時は夕暮れだと思ったが、まだ2分も経ってないのに公園に入るともう暗くて夜だった。誰も乗っていないブランコが2つ、まあまあ揺れているのが気になった。いつ止まるのか気になったので、近くのベンチに腰を下ろし、しばらくブランコの揺れを眺めていた。なかなか揺れが収まらないのでタバコを吸って待つ事にした。一度誰かが揺らしたブランコがどのくらい揺れ続けるものなのか気になった。10分ほどしても、まだ揺れていた。揺れは小さくなっている気がするけどそれは定かではなかった。万が一ずっと一定で揺れているのかもしれない。僕はインターネットで一度揺れたブランコがいつ止まるか検索しようとしていた。すると遠くに住んでいる年上の友達から電話がかかってきた。最近はどう?最近の事を聞こうと思ってと。なんとありがたい事。しかし自分がう〜んと答えあぐねていると、ちょっと面白いなと思った事でもなんでもいいから話してみてと言ってくれた。とても優しい。僕は今勤めている会社の事を話した。ちょっと面白いどころか非常につまらない話だった。その年上の友達は、その話に的確にツッコミを入れ、質問し、話を広げてくれ、適度に話をずらし、面白くして聞いてくれた。とてもありがたい。しかし自分の話自体はとてもつまらなかかった。そうこうしている間に、家に着いた。

 

しまった!ブランコがいつ止まるか見てなかった!

 

貝みたいに

石垣・顔をつかむ・口から水を出す

木澤 洋一

木澤 洋一

ふと思いついた事や気持ちいい事や、昼間に倒れてしまいたいような気持ちを絵にしています。

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