どこからかの帰り道なんかにふと視線を感じて見上げると、そこには月があがっている。
もうすぐ満月が近いのだなと思うとどきりとする。
また、あの場所に行けるんだろうか。
その心配も他所に、ポケットにはきちきちに冷えた鍵が沈んでいる。
考えたらわたしは、いちどもこのギャラリーに友達を誘ったことがない。
ひとりで訪れることしか、考えたことがなかった。
鍵を差し込む前に、ノックをしてみる。
ととと。
ととと。
返事がないことは、知っている。
〈前回までの展示〉
『縫い目』
『つむじ』
『鏡』
『耳鳴り』
『植物園』
『刺繍』
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「ノコギリ」
絵: 古林希望
文: カマウチヒデキ
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共通のタイトルだけを手がかりに2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け合わせていく企画「ギャラリー・カラバコ」。
次の満月の日をお楽しみに。
:Exposition Past :Exposition Upcoming
:01 桟橋 :Getting Ready….
:02 物差し
:03 帯
:04 時化
:05 吃り
:06 影絵
:07 隠者
:08 ウミネコ
:09 うぶすな
:10 蟹
:「ギャラリー・カラバコ」あとがき対談 2017