ある時ポストにこの部屋の地図と鍵が入っていた。
メッセージはなし。
ただ、「ギャラリー・カラバコ」 と。
宛名間違いだろうか? と封筒をじっと見てみたけれど、そこには確かにわたしの名前がある。
差出人の名前はなし。
ただのいたずらかもしれないけれど面白そう。
絵を見るのは嫌いじゃないし。
そう思って地図を辿ってみた。
とあるアパートの一角にそのギャラリーはあった。
鍵を開けると、ギャラリーらしい真っ白な壁に、額縁だけが無造作に並んでいる。
額縁を裏返すと、かすかに刻印された文字が読み取れる。
……写…館……写真館。
かすかに海の香りを鼻が捉えたような気がして振り向くと、
あ、額縁だけじゃなかった。
と気づく。
タイトルには 「縫い目」 とあった。
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「縫い目」
絵: 古林希望
文: カマウチヒデキ
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共通のタイトルだけを手がかりに2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け合わせていく企画「ギャラリー・カラバコ」。
ギャラリーの扉が半年ぶりに開きました。
鍵は無事に引き継がれたようです。
:Exposition Past :Exposition Upcoming
:01 桟橋 :Getting Ready….
:02 物差し
:03 帯
:04 時化
:05 吃り
:06 影絵
:07 隠者
:08 ウミネコ
:09 うぶすな
:10 蟹
:「ギャラリー・カラバコ」あとがき対談 2017