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3F/長期滞在者&more

At the Exhibition

長期滞在者

黒部湖から立山への登山を経て、早くまた山に身を置きたいという願望が強くなる一方、「今シーズン既に山に行けた」という達成感にも似た安堵感を覚えて先月末は少し気持ちがダレてしまった。

一方で、今月は私の会社が属する業界で最も大きい展示会が開催されるため、それに向けた準備でバタバタと過ごしていた。

関東での展示会といえば、幕張や有明で開催されることが多いが、今回は会場がパシフィコ横浜であり、自宅から近いので、少し得をした気分になる。

今年は会社の自前のブースでなく、懇意にしている2つの自治体と共にブース出展を行うため、両自治体と連絡を取り合いながら前日準備を迎えた。

前日準備では新たにポスター用のフレームを買いに行く必要があったりとそれなりに慌てふためくこともあったが、無事準備を終わらせて、イベントのために出張に来た後輩を含めて軽くビールを飲みに行って、翌日からの本番に備えた。

展示会がスタートした初日の午前中に市長がブースに訪れたため、一瞬ブースに緊張が走った。

ブースには、普段お世話になっている人など様々な人が訪れ、さながら同窓会のような気分になる。

ブースを離れていても、会場を歩いていると、かつての同僚や取引先の方など、見知った顔に出くわす。

会場の中で会うと、お祭りの中の高揚感に包まれ、普段ウェブ会議を行っているよりも建前もなく本音でぶっちゃけた立ち話が出来る。もはやウェブ会議でなく、この立ち話で全ての商談をまとめたいくらいの気分。

初日の夜は、共にブース出展している両自治体の職員達と総勢20名ほどで野毛に繰り出す。とある自治体の部長さんは、野毛に行くのを夢見て、Google Mapやアド街で何度も予習していたよう。部長さんは、野毛を歩いていて、予習してきた店の看板を見つけるたびに、”あぁ本当に実在したんだ”と感慨深くなっていた。

この部長さんは、呑兵衛ではあるものの業界では切れ者の方で、こうしたギャップのある人間性に昔から惹かれてしまう自分がいた。

会社からは7つのブースを出展しており、総勢20人ほどが会場に来ていたが、私は自分も含めて3人のメンバーを率いる形でシフトを組みながら出展に臨んだ。

チームの中に笑顔という点で会場内の何百人の誰にも負けないだろうメンバーがおり、今回彼は展示会に向けて遠方から飛行機に乗って出張してきていたが、最近調子が優れない場面があったため、なんとかこの展示会を機に調子が上向きになるようにと思っていた。

調子の良し悪しで言うと、私自身も波が強くあり、それゆえに前職を辞め、アパートメントを書くようになった。
「自分も波があるからこそ寄り添える」、「長い目で見たら深刻に考え過ぎずに大丈夫、誰しも浮き沈みはあるから」というスタンスでその後輩と接していたが、同様の経験を過去にしたことがあるが故に少し過信があった気もする。

加えてもう一人のチームメンバーも社内随一の波のあるメンバーで、この3人の波が同じ波長のリズムにならずに、うまい具合に補い合えるようにと、調整していった(というより、祈っていた)。

ただ、展示会で多くの人と話すことで疲れも溜まっていたのであろう、後輩は展示会中もなかなか積極的に動きていない状況が続き、その旨を率直に連絡を受けてもいた。

笑顔が武器になるからと、バックではなくフロントに立って武器を活かしてもらうような動きを求め過ぎていた節もあったと反省もしていた。

後輩の相談に乗りながらも、”休んでもらおうか”、いやいや、”せっかく展示会で多くの人と意見交換ができる絶好の機会やから踏ん張って欲しい”という背反する想いが続く。

(笑顔のパンチ力はその後輩に大きく劣るが、、)私もこうしたイベントでは最大限の笑顔から入ろうとするので、展示会後はドッと疲れがくる。

普段の生活ではそうしたことはほとんど無いのに、途中コンタクトレンズが目の裏に入り混んでしまい、それもそれで落ち着かない状態になる。それも疲れからなのか、もしくはただただ普段ではなかなか起こらないようなことが起こっているのだろうか。

展示会の期間中に発せられる熱が身体に籠るような特異な状態から普通の状態に身体を戻したいと思うが、普通に過ごそうとしても、心拍数が高く脳が活性化されている感じがして、「変な形の建物を見て、変な味の物を食べて、変なステップのダンスを踊って、変な・・」と、どこか振り切ったことをするのが、平穏に戻れる一番の近道のように思えてくる。

ただ、横浜市民になって3年目を迎えても、横浜駅の街のどこにどういう雰囲気の店があるか把握できず、結局HUBに入った。テレビでは野球のクライマックスシリーズのオリックスとソフトバンクの試合が流れていた。ビール1杯をHUBで飲んだところで何も解消されなかったが、「これで気持ちが落ち着いたでしょ」と自分に言い聞かせて帰宅し、少し電話をして就寝した。

現実世界ではやり過ごしたように思えていても、夢の中はより身体に正直なのか、そういう時に見る夢は日常生活とリンクして深層で非線形なものになる。

はっきりとは夢を思い出せなくとも、翌朝起きた瞬間にその後輩のことが真っ先に頭に浮かぶ。

展示会最終日には、海外出張帰りの同僚が駆け付けてくれる予定だったので、みなとみらい駅近くのパン屋でモーニングしながら話をする。

展示会の3日目、最終日に達成感を感じて良い締め括りになってもらえればと思っていたが、後輩はあまりに体調が優れない様子だったので、途中でホテルで休んでもらった。

何が正しいか分からないが、やり切って欲しい思いと体調を優先して欲しい思いの両方を天秤にかけながら、やれることはやったと思うという話を、いつも真っ先に相談する人とした。

結果的に、展示会そのものの成果よりも、社内のメンバーを優先に考えてしまったことに対して、どうなんだろうという想いは持ったまま、どうしてもそういう思考になってしまう自分の限界も感じる。

土日は遠出をせずに、ゆっくり過ごした。

家に誰もいなかったので、リビングで久しぶりにスマホの録音機能を使って歌を作った。弦を張り替えることが億劫だったので楽器を使わずに口で吹き込む。何度やっても同じ音階の曲になる。このメロディーを求めていたのであろう。どこかで何百回も聞いたことあるようなメロディーだったが、”まんま、あの曲やん”とははっきりとは思い浮かばなかったので、盗作では無いということに自分の中でした。そのまま歌詞も作って1つの曲を完成させればよかったが、そこで満足してしまいそのまま寝かせた。

その後、少しの刺激が欲しく、横浜と川崎のいくつかの組の事務所の近くを歩いた。ちょうど集会の日だったのか、堂々たる路駐も含めて何台もの黒塗りの車が停まっていた。近くで堂々と立派なカメラを構える大学生風の青年がいたが、マル暴の人だったのだろうか。

帰り道、川崎のモールの中に、アジアン食品屋を見つけ、そこには冷蔵庫からアジアの缶ビールを取り出して飲めるスペースがあった。また仲間と来なければと思う。

川崎駅の駅ビルの本屋でロッキンオンを何年ぶりかに手に取る。Bjorkが最近は知り合いとPlaylistを交換しながら、新しい音楽を発掘しているとインタビューに答えていて、「Bjorkも自分らと一緒やん!」と励まされた。そして、Arctic MonkeysのAlex Turnerが”最近はDionとMick Ronsonを聴いている”と答えていて、実際に雑誌を読みながらSpotifyで聴いてみるととてもよかった。

久しぶりに手に取った音楽雑誌で、こんなにワクワクする情報をもらえると思ってなかったので、とても満ち足りた気分になり家路に着けた。

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