鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
マスクをしている人にもだいぶ見慣れてきた。今やもう、マスクをしていない人と向かいあうのに身体的な抵抗感が生まれるという話も聞く。マスクの価格は一度大幅に高騰したのち、元の安さまでは戻りきらないところで安定してしまった。わたしが「うなずく人カフェ」という企画をやったのは昨年の夏で、まだ五十枚入り数百円でマスクが買えたころのことだった。 「うなずく人」というのは、文字通り、話を聞いて、ただうなずく人の…
Mais ou Menos
まちゃんへ 最近、編み物が楽しいです。特に自分で手紡ぎした糸で編むとすごく気分が良くてびっくりします。自分の手で物を“創造”するってこんな感覚なんやなと噛みしめている。最高に良い気分です。 編み物をすることは、自分にとってすごくセラピーになってると思う。 編み物してるときは、気持ちが癒されてる。静かな気持ちになる。あと、家のイスを新調したのも、嬉しかった出来事の一つ。座っててしんどかったのが軽減さ…
長期滞在者
先駆性!根源性!現在性! 最近の口癖である。 今年に入って多々再認識することがあり(7回以上は)、先週にもその体験が、、、 ひとり池袋駅から家へ帰る時、雨降る空を見ながら、「卑弥呼さんも聖徳太子さんも空海さんも、地球側から天空に顔を向けて思い耽ることをしていたのかな… 時間と空間を超えて似ていることをしている… 間接的にコミュニケーションできてありがたい… いま…
スケッチブック
8月2日 日曜日。朝、起きる。パンケーキを焼く。しおにリクエストされたミッキーマウスや、スナフキンの形を作る。いくつか失敗して、私が勝手に名前をつける。着替えて3人で買い物に出かける。1週間分の食料を買い込んで、スーパーの隣の100均で、しおの選んだシールを買う。帰り道に魚がとってもおいしい定食屋さんへ。お店のおかみさんから、大好きないくらをおまけしてもらってしおはご機嫌だ。お勧めされた近所のお花…
長期滞在者
布はフランス語でToile.女性名詞で、トワール、と読む. 自分の部屋を居心地好くするためには労力も時間も惜しまない性分だからか、持ち物が多い.とにかく引っ越しが多いのだけれど、どこの家に移っても、荷ほどきすれば、そこは私色の空間だ.フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、台湾、日本…各地から運び込まれたベッドリネンやクッション、カーテン、タッセル、テーブルクロス、ラグ、大小の花瓶、額縁、絵画やリト…
長期滞在者
8月。私はずっと、日本の夏は喪の季節だと思っていた。日本の歴史的にもそうだし、私の大好きだった祖父母も夏に死んだから。 夏には、蝉の鳴き声や空の色を眺めながら死について考える時間が必ずあった。それが今年はなかなか外に出ないせいか、季節感もないまま時間が過ぎている。何かが欠けている。 けれど欠けていることに違和感を持つのもおかしなことなのかもしれない。常に何かが欠けたまま、世界は動いているから。 た…
Do farmers in the dark
今月はまたも近況と、展示のお知らせしたいだけの内容になってしまいました。すみません。ではよろしくお願いします! 近況 最近は本当に情けない生活。ささいな間違いをたくさんしてしまっている。常に何かにパニくりながらぼんやりしている。 実のところ何ヶ月も前から家族の目を盗んでは、ポータブルゲーム機でほとんど○ボタンを押しっぱなしにしても問題ないようなゲームソフトを遊んでいる。家族の死角、または家族の死角…
お直しカフェ
この2週間ぐらい、明け方背中の激痛と息のし辛さで目覚めて、1-2時間湯たんぽで温めたりストレッチで緩めたりして回復させたあと朝寝、というのをやってたら、案の定今日午前中の妊婦検診寝過ごしたんだけど、謝りの電話したら「それは辛いなーほな、このあとお昼食べた後においで」と慰めとゆるゆるのリスケしてくれたし、到着したら、診察前に話を聞きながら30分以上かけて背中マッサージしてくれたの、地元の小さな助産院…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
まずは以下のテキストを見てもらいたい。 冷蔵庫の下の方に。デミグラスソースしかない。足元に。イナゴしかない。一文字違いですね、イチゴ。イチゴの方がいいな。大丈夫ですか、頼まなきゃよかったとか。ちょうどいいです。でもなんか、戦場から戻った感じですね。地雷一回踏んだんです。酒飲まない。車で来たんで。芝生をはぎ取るんです、そのあときれいに土を掘ってすぽっと埋めて、またきれいに戻す。その仕事は大企業でやっ…
長期滞在者
3年ほど前から、タイヤが小さいながらも、なかなかにスピードが出る自転車に乗っている。 同居人の親友から譲り受けたものだが、サイズ感も手入れのしやすさも、凝り過ぎることなく自転車ライフを手頃に楽しみたい私にはぴったりであった。 また、偶然にも、チェーンロックの4桁の番号が私の誕生日と同じ番号であった。元々の持ち主が、とあるテクノユニットの片方のメンバーの誕生日をチェーンの解除番号にしていたようだが、…
スケッチブック
7月4日 「ばいばーい」小さな手が振られて、タクシーのドアがすうと閉まる。朝6時。しおと順が実家に帰った。「おじいちゃん、おばあちゃん、来ていいって」先週そう伝えた時は、「やったああああ」と叫びながら、保育園からの帰り道を駆け出し、昨日荷造りの前にもう一度伝えると、四つん這いになって両足を宙に何度も蹴り上げた。おかしくてカメラを向けると、たまらず顔を自分の腕に埋めて、ひとこと「よろこびです」と、呟…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
「来ぬ人を待つ」カフェをひらいたのは、ちょうど一年前のお盆が過ぎたころだった。この国ではお盆と終戦記念日、それから一年でいちばんの暑さとが重なることになっていて、どうしても死のけはいが濃くなる。いる人といない人とが、いつもより曖昧に交差するような気がする。 「来ぬ人を待つ」は、ほかの場の詩企画にくらべるとやや地味だ。わたしを含む、その場にいる人全員で、「まだ来ていない誰かを待っている」というテイで…