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Mais ou Menos #11 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡ー

Mais ou Menos

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Pちゃん

この3ヶ月間、WEBの勉強お疲れ様です。6月に新生活が始まったときには、毎日が大変になるだろうと思っていました。大変なことは、もちろんあったけれど、それ以上に日々Pちゃんが新しいことを学び、イキイキしている姿が見れて嬉しかった。今では、私がびっくりしてしまうような技術を身につけてくれ、すてきなWEBサイトづくりができるようになったこと、誇りに思います。

9月は、私たちの誕生月。それぞれが一つ歳を重ねるときです。そのせいもあるのか、季節が変わる時期だからなのか、9月って気持ちが少し変化するよね。こう、1年の折り返しというか…。今年は、とくに、秋めいてくるのがすこしはやいねぇ。このまま涼しくなっていきそうです。とにかく、HAPPY BIRTH DAY TO YOU (and to me)
30代、楽しんでいこう。

話はすこし変わるけれど、この間、職場で印象に残ることがありました。普段あまり自分の本音を話せない私だけれど、先輩に仕事のモヤモヤをぼろっと話してしまったの。一瞬、「言うてしもた!」って後悔してしまったけれど、それ以上に胸の内がすっとしたの。私がごく限られた人以外には、自分の本音を明言しないようにしてたけれど、人に話すことも大切なんだと思いました。もちろん、今後もべらべら話すことはないと思うけれど、モヤモヤしていることに対する自分の態度が変わりそうと思いました。まぁ、一番話さないといけないのは上司なんだけれど…。出張から帰ってきたら、多分話す時間があるなずだから、そのときにまた気持ちの変化があるかもしれない。私たちの新しい旅立ちのためにも、頑張るよ。

今月の15〜18日は、私にとっては膝微差の長期(?)休暇。東京に久々に行けるの楽しみだねぇ。私の友人たちに会えることがとても嬉しいし、彼らにPちゃんを紹介するのも楽しみです。中学のときから(一人は小学校のときから)の友人だから、きっとすてきな時間をすごせるよ。あと、代官山の蔦屋にも行ってみたい!こっちでは、観れないような映画なんかも。色々、見て感じてきましょう。

てるてる坊主つくらなきゃね。

楽しくいこう。

Maysa
2015.09.10
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まちゃんへ

WEBの授業が終わって、今までできなかったことができるようになった。とはいえ、技術的にはまだまだなのでこれからも勉強and実践です。WEBの勉強をして思ったことは、本当に手仕事がしたいということでした。編み物でもそうだと思うんやけど、自分の手で何かを作りたいという思いがさらに強くなりました。やはり、自分は何か自分で作ることが好きなんだと思う。

まちゃんの職場での話、人に自分の内面の気持ちを話すという行為について、自分も親しい人以外になかなか話せないこともあるから、その気持ちは少しわかる気がします。自分の中のモヤモヤが心のどこかにあって、そのモヤモヤのせいで、不安になったり、落ち込んだり、悲しくなったりする。
自分の場合は、そういうことをずっと“考えず”に“忘れる”ことにして周りに振る舞って来たのだけれど、私の核心であるそのモヤモヤを本当の意味で忘れることなどでるはずもなく、今もモヤモヤを抱えて生きています。でも、これからは、モヤモヤを含めた自分のことを周りの人に知ってもらいたい。なんでかって言ったら、知ってもらったほうが気持ちが楽になるからです。これからは、もっと楽に生きていきたい。

9月の旅楽しみです。行きたいところに全部行って、おいしいもん食べて、友達と会って過ごしたいです。

P
2015.9.11

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

Reviewed by
西尾 佳織

この往復書簡を、「作品」だと思って眺めてみる。つまり、フィクションだと。

「Pちゃん」と「まちゃん」という人は本当はいなくて、「Pちゃん」ではない誰かと、「まちゃん」ではない誰かが、自分の文字を使って、「本心」ではない内容を代筆している。内容に関しては、物語部分をつくる作家が担当しているかもしれない。そして、どんな紙に書くかとか、何色のペンで書くかとかいったことを、ディレクターが演出しているかもしれない。手紙の執筆者として表示されている「Maysa Tomikawa」と「PQ」の写真とプロフィールも、ディレクターの意図にのっとって用意されたものだ。

そう思って眺めてみると、この二通の手紙の持っている圧倒的なリアリティに、ぞっとする。そのリアリティというのは、「演出意図が見えない」こと、そして「一本通った意図は見えないのに、『Pちゃん』と『まちゃん』がそれぞれに一人の人物としてしっかりと束ねられている」ことに由来する。「これは、書けない、作れない……!」と、私は劇作家という仕事をしているものでそんなことを、思う。

演出意図が見えないことも、Pちゃんとまちゃんがリアリティあふれる人物に思えるのも、当たり前なんだろう。本物なんだから。

じゃあどうしてわざわざ「この往復書簡がフィクションだとして……」などということを考えてみたかと言えば、私がまだ、解せないからだ。この往復書簡が、なぜワールドワイドウェブに公開されているのかを。

私はまだこの往復書簡を、どう読めばいいのか分からない。関係を取ることが出来ていない。出会ったことがなく、親身になれるわけではないPちゃんとまちゃんの非常にナイーブなやり取りを、切ない気持ちで眺めている。

この世界のどこか(でも予想だと、京都)に確かに生きているPちゃんとまちゃんの存在を、感じる。

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