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Mais ou Menos #26 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡ー

Mais ou Menos

今回わたしたちは、12/03に明治大学駿河台アカデミーコモンズで行われた「声の氾濫」という公演(講演)を、聴きに行きました。そこで考えたことをお便りにしました。

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まちゃんへ

「声の氾濫」を聞きに行って、自分は、今まで自分から目を背けて逃げ続けて来たんじゃないか?と思った。
別に逃げているつもりはないんやけど、どこかで考えないようにしたり、他のことで気をそらしたりしているとこはあると思った。

今回の「声の氾濫」では、自分の話す言語の葛藤がある人の話を聞いて、まちゃんも二つの国の境界線で生きてきたから、まちゃんもこんな思いをしたのだろうか?と考えたり、勝手に自分がまちゃんの感情になって涙を流したりしていた。

そこからふと自分のほうへを目を向けると、自分の場合は、言語でななく、性別の揺らぎなので、それを比べてみると、自分のほうが、自分の中に原因があって、こう生き辛いのは、自分のせいなんじゃないか、と、ぶわっと不安な気持ちになった。
自分が社会に適応できないだけのことじゃないのかと、不安な気持ちになった。帰り道でまちゃんにそのことを話したら、「Pは悪くない」と言ってもらって、「こういうPみたいな人が一定数いるという事実は変わらない」とも言ってもらって「そうやんなあ」と少し安心したものの、こういう思いをもっと発信していかなあかんよなと思った。

黙っていると存在すらしないように扱われてしまう声をもっとあげなければ、と思った。もっと自分と向き合わなければと思った。なかなかアウトプットって難しいけれども少しずつやっていく。
そう追い立てられた1日でした。まちゃんの思いも聞かせてください。

2016.12.05

P

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ぴちゃん

当日は、わたしがひどく落ち込んでしまって、心配をかけてしまったね。声をあげるんだと、様々な出演者の力強い声に圧倒されて、ショックを受けていました。

ショックというか、自分の不甲斐なさや、情けなさに落ち込んでいた面もある。こうやって、自分に見えている様々な暴力と闘っている人々がいるのに、わたしは小さく縮こまっているだけだったから。わたしはなにをしているんやって思ったし、恥ずかしかった。

いまの人々は、声をあげれらないようにされてるんじゃないかってある人が言ってたけれど、わたしもその一人だと思う。普段、アパートメントで日々ぼやいてはいるけれど、それはあくまで独り言のようなもので、普段は黙り込んでいる。わたしたちだけじゃなく、胸の中で押し殺されている思いを抱えている人々はきっとたくさんいる。黙り込んでいるわたしたちの心のなかの思いは、どうなってしまうのかな。このまま、外に出すこともせず、きちんと向き合うことしないままでいたら。そう考えるとすごく恐ろしい気持ちになる。

社会の中で生きていると、”人とちがう”ってことで生きにくさを感じることもある。多分誰しもそういった違和感を持ちながら日々生きてモヤモヤしてると思う。自分らが認められていないと感じるから、人にも不寛容になる。不寛容や人の幸せを望まないことは、それも暴力なんだよね。声をあげることはとても大切。でも、人を傷つける声も中にはきっとある。声をあげることもすごく大事なんやけど、声をきく力や受け入れる力を磨かないとね。自分が他人の声をきちんときくことができたら、きっと自分の声もききうけられるハズと思います。まずはきくことから、すべては始まるんちゃうかな…?

Maysa
2016.12.11

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

Reviewed by
西尾 佳織

自分の胸のうちにモヤモヤと抱え込んだ思いを声にすることは、難しい。勇気がいる。
何かひとつの形を採ることは、それ以外の形の可能性を捨てることでもあって、
本当はまだ形になり切らないものに、無理にひとつの輪郭を持たせるのは苦しいことだ。
でもどうにかして形を与えない限り、他人には伝わらない。
存在しなかったのと同じになってしまう。

だから今回は、往復書簡という形があってよかったと思った。
声を上げることについて、悩んで考えて、「ねぇどう思う?」と、強い意見にし切らないまま交わされる二人の声に触れられた。

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