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Mais ou Menos #71 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡 —

Mais ou Menos


まちゃんへ

最近、編み物が楽しいです。特に自分で手紡ぎした糸で編むとすごく気分が良くてびっくりします。自分の手で物を“創造”するってこんな感覚なんやなと噛みしめている。最高に良い気分です。

編み物をすることは、自分にとってすごくセラピーになってると思う。
編み物してるときは、気持ちが癒されてる。静かな気持ちになる。あと、家のイスを新調したのも、嬉しかった出来事の一つ。座っててしんどかったのが軽減されてますます編み物もやりやすくなってるしね。

まちゃんに早めの誕生日プレゼントでもらったリュッケさんの編み針を使ってブランケットを編んで、それをまちゃんにプレゼントできたこともすごく嬉しく思います。自分がブランケットを編めるようになってたことや、自分の手紡ぎ糸を使えたこと、まちゃんに喜んでもらえたこと、全部が嬉しいです。

こう書いてると、最近嬉しいことたくさんやな。この気持ちで上がったり下がったりしながらも、ぼちぼちやっていきたい。

2020.9.8

P


ぴちゃん

早いもので、もう退院してから1ヶ月すぎたのだね。あっという間だ。おかげで、舌の傷は大分よくなっているけれど、切除した部分の粘膜が突っ張るので、まだまだ違和感は残ったまま。これがどう良くなっていくのか、みものです。

編み物を楽しんでいるぴちゃんの姿を毎日見せてもらって、世の中なにが起きるかわからないものだなあとつくづく思います。

どんなことでも手を動かして何かをつくることって、脳にいいと思っていて、それが庭いじりの人もいれば、編み物の人もいる。今のぴに、編み物の心地よさがぴたっとはまったんだろうね。

うちには幸い、糸もたくさんあるし、糸車もある。自分たちで糸からつくって、編むことができる。手紡ぎ糸で編むことの、特別さ、面白さを感じてもらいながら、日々のメンタルケアに繋がったらこれほど良いことはないね。わたしも、自分からぴに、編み物の技術を伝えることができて、心底嬉しいです。

ぴのつくったものも、わたしたちのショップに並べることができること、今からすごく楽しみだね。ぴが編んでくれたブランケット、宝物として大事にするね。

こうやって、自分の心が喜ぶことを大事にしていこう。日々生きていると、いろいろ麻痺しやすいから。この細やかな嬉しさ、喜びが、自分たちの支えとなるように。

Maysa

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

Reviewed by
小沼 理

私にとっての手を動かして何かをつくることってなんだろう、と考える。すぐに思いついたのは、緊急事態宣言から習慣づいた料理でした。野菜を同じ大きさに切る時、肉の火加減を確かめる時。手と頭が作業に集中しているうちに、心が落ち着いていることに気づきます。

手を動かしている間だけ訪れる穏やかな時間は、秘密の森のような、静かな場所のようなものなのだと思います。それは一人でしか行くことができないけれど、手を動かす喜びを知る人はみんなその静けさを知っていて、心地よさを分かち合うことができます。

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