当番ノート 第32期
その日は、すっきりしない天気の日だった。ぼんやりとした色の空で、少し雨が降り出しそうな気配がしていた。 でも鎌倉って晴れ渡った快晴の空よりも、こういうぼんやりした色の空の方がしっくりくるのはなんでだろう。 私はそれまで乗ったことのない湘南モノレールに乗って、聞いたことのない名前の駅へと向かっていた。 その駅に到着して降りると無人改札だったので、本当にここで降りても大丈夫なのか心配になる。 改札を出…
当番ノート 第32期
僕はどこかに出かけた帰りの電車で決まって先頭車両に乗る。 先頭車両ではなくて、最後尾でも構わない。 とりあえず、一番端っこの車両に乗るようにしている。 そうするようになったのはいつだったか忘れてしまった。 それでも、どの電車が最初だったかは覚えている。 大学に通うために利用していた西武新宿線だ。 西武新宿線の終点は西武新宿駅。 帰宅のための40分ほどの乗車時間はできれば座りたい。 そう思って空いて…
長期滞在者
最近アパートメントにMaysa Tomikawaさん、ひだまこーしさん、とたて続けにマグノリアの話題が書かれていて、実際僕はお二人の文章を読むまでマグノリアが何であるか知らなかったんだけど、それはモクレン属の植物の属名なのだった。 Magnolia heptapeta ビャクモクレン(白木蓮) Magnolia quinquepeta シモクレン(紫木蓮) Magnolia kobus…
当番ノート 第32期
学生の頃、アメリカ人やイギリス人のネイティブの先生に、最初の方の授業で、先生に何でも質問していいと言われると、「好きな日本語の言葉は何?」と質問するのが好きだった。 違う国から来て、私たちの国の言葉を、ある種私たちが持っていない特別なフィルターを通して覗いた場合、それはどんな風に聞こえるのだろう、どんな意味合いを持つのだろうと思った。だから、今でも覚えているけど、「意味はまだしも、自分は « ワガ…
当番ノート 第32期
いよいよ3回目。そろそろ書こう、音楽のこと。 ひとまず言いたい事は、タイトルに書いた通り 音楽が一番苦手って話。 — –私は曲を作るのが苦手です。 そもそも作曲という事も大した勉強はしたことがなくて、知識が乏しいという要因もある。最初の頃はそれでも、自身から出てくるメロディーは全て”オリジナル”だと思って、それを形にして披露する事に意義を見出していた。もちろんだけど、インプ…
長期滞在者
日本の春には動きがある。 それまでの生活や環境から、最も変わっていく季節。 私の周りでも様々な決断があり、 それぞれが、各々のやるべきだと思うことを胸に、距離にしたらかなり遠い場所へと旅立っていく。 そんな人達にぐるりと囲まれるような環境にいると、 自分がこの場所から動かないでいるのがいけないのではないかという気にすらさせられるが、 私は春の中で、いつもと変わらずに自分に与えられた役割を生きている…
長期滞在者
「他人ではなく自分に期待しなさい」と言ったのは、数年前のレジスト写真塾授業中に吉永マサユキさんが受講生達にむけての言葉です。表現行為の本質的な部分を見事に言い当てた言葉だといまでも心に残っています。 創作活動を初めて間もない人は、とにかく他人がどう思うかがすごく気になるものです。 展覧会を開く目的の中にいろいろな人からの意見や感想をもらえることが重要と考える人も少なくありません。少し立ち止まって考…
当番ノート 第32期
どんなお仕事されている会社なんですか? 僕が名刺交換の時に質問されるNO1頻度のセリフです。 「飲食の会社です。店舗運営とプロデュースをしている会社です。」 と僕は答える事にしています。 僕は株式会社WATという会社で働いています。 未だにWEBサイトも無い(ずっと製作中)謎の組織なのです。 (注:ちゃんとした会社です) 僕は、大学は建築学科出身、新卒で建設コンサルタント会社に入社し、在職中に一級…
Mais ou Menos
——————– まちゃんへ 先日、スキンヘッドにしました。今回はその経緯について書こうと思う。 一言でいうと、やりたかったから。それに尽きるんやけど、実行に移すまでには何年もかかった。自分の中に葛藤がいろいろあった。 髪の毛がすごく多い自分は、いつも髪の毛がうっとうしく、昔から坊主にしたいなーとよく考えていました。…
当番ノート 第32期
鎌倉に行く前にちょっと寄り道して、私の旅する理由と、旅にはまったきっかけについて少し話をさせてほしい。 人が旅をする理由。それって色々あると思う。見たい景色があるから。憧れの土地だから。なんとなく。 私が旅する理由の一つに「ゲストハウスでの出会いに惹かれるから」というのがある。 ゲストハウスで、お互いに交わるはずのなかった人生を送っていた者同士が出会い、同じ部屋に泊まる。それってすごく不思議で…
当番ノート 第32期
今回は「秋の蝉」について、 エッセイを書こうとしていた。 が、季節感もなく自由すぎる。 いかがなものかと悩んでいたところ、 雷が鳴った。春の雷である。 飛行機が墜落してきたかのような あまりにも大きな音だった。 春に大きな音の雷がするなんて、 どこか雰囲気のある呼称があるに違いないと思う。 「春 雷」 と、検索してみた。 結果は 「春雷・春に鳴る雷のこと」 結局、それを見て、 僕は「秋の蝉」につい…
当番ノート 第32期
日本の芸術は、茶道でも華道でも柔道でも合気道でも剣道でも、そう。「書道」とは書の道であり、その道のりはひどく長い。一生勉強である。A long way to go. 十年勉強しても、まだ、赤ちゃん。前に、フランス人で合気道の大家と話したことがあるけれど、彼自身も、文字通り、いい具合のおじいちゃんなのだけれど、「自分の腕ではまだまだ日本の先生には認めてもらえない、ほんとうに長い」と苦笑しながら話して…