長期滞在者
まばらなしるしをおいもとめてはまだらなしるべをのこしていく 記憶や経験に寄りかかって自分が感じたことを重んじるあまりに 目の前に見えていることまで軽んじてしまわないように 日常を紡いで 解いて 繋げて 連なる点が縁を結び 深く掘り下げる時がきた 世界からはいま 少し遠くなって せまいところにいるのかもしれない けれど 散在している私の跡が少しずつ地図になっていくようなことを感じている 開いてい…
当番ノート 第24期
ストレイテナー「NO 〜命の跡に咲いた花〜」。 今年はこの曲と生きたと言っても過言ではない。 ストレイテナーを初めて知ったのは、ラフォーレミュージアム原宿で開かれたイベントライブ。 そのイベントに出ているART-SCHOOLを観に行き、彼らの出演が終わって帰ろうかと扉に手をかけた瞬間、 私の後ろで鳴っている音に惹かれた。 えっ?何??と思って振り返ったら、ステージにはヴォーカルとドラムのみ。 えっ…
長期滞在者
ドはドーナツのド!わたしが初めて一人で作ったおやつはドーナツだった。最初に、本からノートに作り方を書き出し、頭の中へ手順を入れる。溶かしバターを作り砂糖を混ぜていく。次に卵を入れる。ふるいにかけた小麦とベーキングパウダーを入れて生地を作っていく。どうやってあの◎を作ったのか、先に丸いガラスのコップで外縁くりぬき、後から赤い食卓塩の蓋を使い、真ん中に穴をくりぬいた。そして、油で揚げる。今ならネット環…
当番ノート 第24期
実家から荷物が届いた。母ちゃんからは、クリスマスプレゼントのニット帽と手袋。母ちゃんはけっこうマメで、誕生日やクリスマス、バレンタインと毎年、何かしらプレゼントを送ってきてくれる。実家からの贈り物は、そこに言葉がなくたって、いつも温かい気持ちにさせてくれる。 父ちゃんは自家製の油みそと豚の燻製、島らっきょを送ってくれた。父ちゃんの手料理は絶品で、今までシェアハウスやCan’s BARな…
にゃんともはや!のねこばなし
真夜中をすぎたころ、おじいさんはベッドにはいり、気持ちよく毛布にくるまると、からっぽになった戸だなのことは考えないようにしました。そのかわりに、ねこのお客のことを考えました。ほんとに、わたしがたっぷりたべさせてやらなかったら、あのねこは、飢え死にするところだったろうなあ。 そのとき、なにかが、ベッドの上にのったような感じがしたかと思うと、ふたつの緑色に光る目が見えました。ねこがふとんの下にもぐりこ…
当番ノート 第24期
改札を出てきた僕に気付いたみち子さんは、軽く会釈をしにっこりと笑っていた。 ベージュのダッフルコートに白のスカート、緑と赤の混じったチェックのマフラーという格好の彼女に、ごめん待ったかな、と訊くと、ううん全然だよ、と静かに言った。いかにも初めてのデートだというやり取りを済ませ、新宿から六本木に向かうため地下鉄を目指し歩き出した。 「今日はどんな授業だったの?」 口を切るのは決まって僕のほうだ。 「…
にゃんともはや!のねこばなし
向こう岸に着いたとおもうと、狐がぷらりと出てきて、 「もし、犬どのな、猫どのな、そなたたちのもっている丸け物はなんだや。まりコだらば、ちょっとの間、手玉とってあそばねえか」とさそいをかけた。 そこで、三匹は、うろこ玉を手玉にとって、あっちやり、こっちやり、遊びほうけていた。 その時、狐はひょいと受けそこねて、大事なうろこ玉を川へ落としてしまった。 ――日本の昔話『犬と猫とうろこ玉』より 今回も日本…
当番ノート 第24期
先日、作曲家の友人とコライトしていた際にふと言われた「随分いろんな音楽本読むんですねぇ」の一言。学生の頃から読書自体は結構好きなほうでいまでも比較的様々なジャンルの本を読むことが多いので、特別に自覚は無かったのですが確かに言われてみれば結果として結構音楽本が多いかもっ。 というわけで今回はそんな数ある音楽本の中から、読み物として(ディスクレビューなどのカタログ的なものを除いて)これは!と思う面白か…
当番ノート 第24期
パソコンの画面を見つめる。 画面に写る楽曲の秒数を見ながら、キーボードを叩いて文字を綴る。 この連載の原稿を書いていて、ふと気づいたこと。 曲紹介でこんなふうに言葉を書いたのは初めてだ。 私の曲紹介の言葉は、手書きだ。 CDプレーヤーのタイムカウンターを見ながら、紙に曲紹介の言葉を書く。 キューシート(ラジオ番組の進行表)に書かれた、 アーティスト名と曲名、イントロの秒数、完奏の時間が書かれた部分…
長期滞在者
京都の某老舗帆布カバン屋のショルダーバッグやトートバッグを、かれこれ二十数年使っている。もちろん、いくら頑丈といわれる帆布バッグでも、重くて堅いカメラを運ぶのだから消耗は激しく、すでにいくつも使いつぶしている。一番良く使うショルダーバッグはすでに四代目。バケツ型トートも初代がもう破壊寸前のズタボロで二代目に移行している。 一時期このカバン屋の製品が女性誌にとり上げられてブームが起き、注文してから半…
当番ノート 第24期
自分の過去に関する記憶がとても曖昧だ。誰かに昔のエピソードを聞かされると、「え、そんなことあったっけ?」と新鮮な心持ちになる。人間は一度覚えたことは決して忘れないというが、何かのきっかけがないとなかなか思い出すことができない。三日も経てば、たいていのことは忘れている気がする。意識的に残したり、思い起こす作業をしないと、今の僕のように、いろんな場所で、いろんな人と出会い、いろんな経験をした、というふ…
当番ノート 第24期
仕事から帰ると、あきはベッドの上から窓の外に浮かぶ満月を見ていた。 部屋に入ると、あきは振り向きもせず 「また行ってきたの?別にかまわないのだけれど、その匂いはもうここにはいらないのよ」 とおかえりよりも先に言い、白いワンピース姿で、開いた窓の縁に両肘を乗せ、まだ満月を見ていた。師走の冷たい風が窓から流れ込んでくる。付き合ってから二回目の冬だ。 たぶん一生のうち行くことはないだろうと思っていたキャ…