当番ノート 第55期
センシュアルという言葉の意味を知ったのは美容ライターをしていた時だった。私が公私共に美容で多忙を極めていたのは数年前なので、今のファッション誌にこの形容詞が登場するのかはわからない。官能的かつ知的で大人っぽい、みたいなニュアンスのあるこの言葉はコスメを紹介する身としては結構便利で、「センシュアルな透け感まぶたを演出するこちらのアイシャドウは〜」などと、おしゃれ用語を多用する文章を書いていた。 一方…
長期滞在者
絶景があるはずだと信じて駆け寄った窓の向こうには、見渡す限りの白い壁が広がっていた。しかも、結構間近に。 出張の予定が入ったからと私が開いたホテルの予約サイトには、「窓辺から横浜港を一望できます!」なんて文言が添えられていたはずだ。交通の便が良く、日程に合う予算範囲内の宿を確保することが一番の目的ではあったが、わざわざ掲げるほどの景勝ならばと、私も少なからぬ期待を抱いてしまった。新潟から電車と新幹…
長期滞在者
30代の頃から始めた難民支援の活動は、いつだって私の世界を広げてくれる。 2021年1月30日。EARTH CAMPのオンラインイベントとして、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のセッション「クイズで知る難民のいま UNHCR70年のあゆみEARTH CAMPに“Who We Are“」でモデレーターを務めた。UNHCR親善大使MIYAVI、Youth×UNHCR for Refugeesの横…
当番ノート 第55期
「変わった言葉の使い方をするね」と言われることがある。そう言われても、ピンとこない。じゃあどうやって使うのが正しいのか。正しい方がいいのか。 辞書を引いてみることも増えた。言葉でやりとりすることが大切なのはわかる、それでも、同じ言葉をみんな知ってか知らずか少しだけ違う意味で使っている。自分の表現したい「意味」はどこにあるんだろう、って少しぼおっとする。
当番ノート 第55期
この日、この絵で描いた場所に行った日、私とここに描かれている私の友人は、一緒に住む約束をした。 私たちは演劇のスタッフとして出会い、それから私の書いた脚本の舞台に出演してもらったり、定期的に彼女のライブを見に行ったり、たまにお家に遊びに行ったりする仲になった。彼女はどうしてそんなに人に優しくできるの?と不思議になる程、とにかく優しい人だ。あまり自分から何かを喋らず、人の話をどこまでも受け止め聞…
当番ノート 第55期
このアパートメントに、以前入居していらした方。神原由佳さん。 お会いしたこともありませんし、このアパートメントで、記事を読んで、いっぽう的に知った… だけの私なのですが、記事が心地よくて、たまらんくて。 そのレビューの早間果実さんの言葉も、心に絡まりまりまってきて。 じぶん一人の胸に納めておけなく。多くの方に読んでいただきたい衝動にかられ、勝手に絵を描きます。 まず、プロフィール写真を眺めつつ、記…
長期滞在者
子どものころ読んだ本などには、恐竜は体が大きいので尻尾に怪我をしても気づくのに長い時間がかかる、みたいなことが書いてあったけれど、これは現在では否定されていて、彼らはそこそこに俊敏な生物であったらしいということになっている。神経の伝達速度というのはどの動物でもそんなに変わりがなく、ということは人間の20倍ある巨大な恐竜であっても、人間の20倍程度の時間で神経伝達が行われるということだ。人が感知する…
当番ノート 第55期
>>通過儀礼3日目 退屈すぎて、何も覚えていない。 シベリア鉄道、略してシベ鉄完走の卒業旅行は、イルクーツクでの途中下車を経て、後半戦に突入した。ここからは終点のモスクワまで下車なし、4泊のノンストップである。 前半4日は、なんだかんだと物珍しく、2段ベッドの昇り降り、貴重品をさりげなく枕元にうずめて眠る夜、車両連結部にだけ配置された電源にコンセントを差して盗られないように見張りながらスマホを充電…
長期滞在者
20年来お世話になっているKさんの推薦で、ニューヨークからある作家さんが私のところに来てくださることになった。私はそうは思わないが、その作家さんは、あまり日本では知られていないらしく、東京での発表の場を探していらっしゃるというということだった。 ミーティングは大変楽しいもので、これまでの写真の話、いまの東京のアート事情から、世界のマーケットの状況や、今後の話など、あっという間の2時間でした。 その…
当番ノート 第55期
食費を考えずにぽんぽんカゴに食材を入れ、その代金さえも親にせびるという堂々としたニートっぷりだった。私が用意するものはただ「料理でもするかー」という軽い気持ちだけで、冷蔵庫には栄養を考えた食材がある程度揃っていた。揃っていたのにもかかわらず、「今日私が作りたいもの」を作っていたのは実家時代の話だ。 でも、あの頃よりも経済観念自体を大きく発達させた今の私が切迫感なく生活を楽しめているのは、節約スキル…
当番ノート 第55期
小学生の時に水栽培で育てた球根を見かけて、懐かしく手にとったことがあった。水の中で根を伸ばす姿を見てワクワクしていたことを思い出す。でも、撒いた種が重い土を持ち上げるときだって、ちゃんとワクワクしていたはずなんだ。 自分が土の上にいるのか下にいるのかもわからない、そんなときでも、繋がりたいものがある。不安定でいい、湧き上がっているから、それはきっときっとメロディになる。
Mais ou Menos
Pちゃん お疲れ様です。2人が苦手な冬も、あと少しやね。日本の春は、一番好きな気候だから、今からとても楽しみです。このまま、風邪をひかず乗り切りたいね。 Pのお友だちから手紙が届いて、婚姻届を出したと聞いて、私はとても嬉しかった。夫婦別姓とか、戸籍制度への疑問、モヤモヤすることが結構あったみたいだけれど、この人と家族になりたいという気持ちのふたりが、法律の上で家族になれることはとても尊いことやと思…