Do farmers in the dark
こんばんは!今回も何というかエッセイ、のようなものを書きました。実のところ僕のナルシシズムが極限まで高まっているからです。なぜかって?ほとんど一人で引きこもっているからだよ。だからいつも自信満々だ。ひとたび外に出ればその自信はシャボン玉のようにそよ風に連れ去られたと思いきやその直後に割れてしまうだろう。 もし僕が外に出たなら、石につまづき、通行人には遠慮なく至近距離から屁をこかれ、お世話になってい…
当番ノート 第49期
「気づいてあげられなかった」「助けてあげられなくてごめんね」とか言われると、「いや、別に結構ですけど……」ってなる。 *** 「してあげる」という言葉が苦手だ。「駅までついでに車で送ってあげるよ」とか「時間がないなら買っといてあげるよ」とかはいい。素直にありがたいと思う。苦手なのは、「気づいてあげる」「助けてあげる」「考えてあげる」「わかってあげる」という類。 「苦しんでるのに気づいてあげられなか…
長期滞在者
今月は慌ただしかった。感染症のことはもちろんだけれど、父が倒れてしまって心が落ち着かなかった。幸い私は人混みを避けて過ごせるし、父は手術がうまくいって経過良好。 誰かと話したり支え合ったりできることのありがたさを、何度も噛みしめる。身を守るために考える時間と、気を緩めるための時間の両方を作っていかなくちゃな、と思う。 2月1日(土) 玉ねぎ4個を飴色になるまで炒めていたら、家がすっかり玉ねぎ臭に・…
お直しカフェ
生後8ヶ月の子どもとの、せいぜい半径500m圏内で完結してしまう今の生活では、新型なにがしの影響なんてほとんどないかもよと感じている。幸か不幸か、社会との断絶はいま結構大きい。今日、息子と二人でポストまで楽しく散歩に出て、3月の陽気もあってか、大小の子どもが賑やかに遊ぶ昼間の公園の風景は結構よかった。義務教育のなかった頃の世界を想像する。ほんの100年前、子どもが家族のそばに居続ける暮らしはどんな…
当番ノート 第49期
わたしはあなたが朽ちていく生き物だということを許せない 許せないというのは愛せないことに似ている わたしの中にある渦みたいな血の塊 毎月毎月排泄される / 「わたしを貶めないでください」 「わたしを壊さないでください」 / 愛せない匂いというものがあります 甘いハニーミルク 頭皮の香り 熱されたアスファルト 燃やされた髪 そんなものたちも逆さまから見たら愛されるべきものなのかもしれない / 「可愛…
当番ノート 第49期
にがてなものの話をするとき、ほんのすこしだけ身体に力が入る。わたしのにがてなものは、だれかの好きなものかもしれないし、だれかの生活そのものかもしれない。 それでも、わたしはバナナがにがてだ。物心がついてからは、じぶんで選んで食べようとしたことはない。栄養があって安いから、と何度か食べたことはあるけれど、そのときもあまり楽しめなかった。 もっと食べ物でにがてなものといえば、きのこの裏側、いかめしの断…
当番ノート 第49期
責任って、重くて暗い立方体みたいな気がしない? *** 責任を感じる。責任がある。責任を持とう。責任を取るべきだ。 社会人になる以前から「大人になったら自分のすることすべてに責任を持たなくてはならないよ」と聞かされて育ってきたけれども肝心の「責任とは何か」について、誰も教えてはくれなかった。 責任がネガティブな意味で問われる場面を断片的に経験しただけで、責任のことをよく知らないままに大人になった。…
当番ノート 第49期
おまえたちは異質なのだから黙っていろ。 と、 拳銃を突きつけられる 銃声はしない みんな黙ったから / 知らぬ間にわたしたちは世間へ買い叩かれる 飲み会なんか嫌いでした 酔った香りも おとこも嫌いでした。 べろりと触られることも 値踏みされるのも 軽々しく守ってやると言われるのも 嫌いでした わたしたちは買い叩かれるために 嘘をたくさんつきました 買い叩かれなければ正月が迎えられないので 嘘つきの…
当番ノート 第49期
おにぎりのタトゥーを入れて、中の具は死ぬまでだれにも言わずにひみつにしたい、そんなふうに人に何度か話したことがある。たいていの人は意味がわからないという反応をするか、ただ笑うか。ほんのすこしのひとだけがいいねと言う。 いつもの冗談のひとつだとおもわれがちだけれど、これにははっきりとした理由がある。別におにぎりじゃなくてもかまわないのだけれど、中身をひみつにするように、何によっても侵されないじぶんだ…
当番ノート 第49期
痛いと感じるから傷が表れるのか、傷があるから痛いと感じるのか。 *** わたしたちが「傷」という言葉を使うとき、たいていの場合はそこに「心」が密着している。傷つけられた、傷つけた、傷が深い、傷が癒える。傷には痛みが伴うが、傷も痛みも目には見えない。だから、自分や他人の傷の深さがどれほどのものであるかも、その痛みがどれほど苦しいのかも、もちろん目に見えない。ゆえに、傷をめぐるわからなさと向き合うこと…
長期滞在者
前回の記事からの続き。 翌朝、信じられないくらいの頭痛で目が覚める。 ちゃんと財布も携帯もある。ネックウォーマーだけ、どこかに忘れてきたよう。 早起きして、熊野古道の中腹にある滝を見に行こうと思っていたが、まったくもって間に合う時間じゃなかった。 部屋を出て1階に下りると、宿のおばちゃんがソファに座っていて、「朝ごはん、トースト焼けるけどどうします?」と言われるが、食欲が皆無なので、「ちょっと二日…
当番ノート 第49期
あのころ持ち歩いていた正義、インターネットから断絶された世界で寒いねぇって伸ばされた手を躊躇いなく掴む。何かひとつだけ残していってくださいって、抜け落ちた髪の毛を拾い集めた。恋の香りさえも知らない少年たちが空を堕ちながら死んでいく。爪の先まで愛してるなんて、好意と暴力は紙一重で憎らしいほどに大切だった。 わたしが死んだら骨を食べてください。 あなたの口からあなたの体の中に置いといてください。生命を…