当番ノート 第40期
奥八女は笠原地区に民俗芸能を立ち上げるーー。地元の方たちへのお披露目会を翌日に控え、いまはロシア、香港からの3人とその稽古に勤しんでいます。そんな面々で、なにをもって笠原の芸能とするのか/なるのか? 農業をはじめとするこの1ヶ月弱の滞在から得た所作やこの土地の言語性から構成しています。 多くは林業と炭焼き、また水田と茶畑を生業とする笠原地区。特に6年前の九州北部豪雨では甚大な山崩れが起こり、またそ…
日本のヤバい女の子
【9月のヤバい女の子/期待とヤバい女の子】 ● アマテラスオオミカミ ――皆が自分を見ている。自分の働きを待っている。でも少し、ほんのちょっとだけ、10秒くらいでいいからそっとしておいてほしい日もあるのだ。 ――――― 《天岩戸(古事記)》 アマテラスオオミカミは警戒していた。ものすごい足音を立てて弟・スサノオノミコトが高天原へ向かってくるからだ。スサノオは父・イザナギノミコトに命じられて海原を治…
Mais ou Menos
まちゃん、往復書簡を読んでくださるみなさんへ こんにちは、PQです。 前回は往復書簡を始めて、初めてまちゃんに対して手紙を書くことができなかった。 実は、書いてたんやけど、いざわたそうと思ったときに、これは今の本当の自分じゃない、自分はこういうことが書きたいんじゃない、と思い、手紙を捨ててしまった。 自分がどうしたらいいかわからなくて、苦しくて、気力がなくなっていた。 でも、今、ゆっくり過ごす時間…
当番ノート 第40期
ふだんの生活を営むにあたって必要な言葉って、実はそんなに多くはない。 足す・引く・かける・割るさえ使えれば暮らしのほとんどは事足りて、高校のときに必死で覚えたサインコサインタンジェントと出くわすことなんてめったにないのと同じ。 たまに判断に迷うようなものもないわけじゃないけれど、そういうときはさしあたりヤバ〜イとかステキ〜とかの多義的な単語でぼやかしておけば、さしあたり話が途切れることはない。 し…
当番ノート 第40期
しおり【栞】 (「枝折」から転じて) ①案内。手引き。入門書。 ②読みかけの書物の間に挟んで目印とする、 短冊形の紙片やひも。古くは木片・竹片などでも作った。 し・おり【枝折】 山道などで、木の枝を折りかけて帰りの道しるべとすること。 きおく【記憶】 ①物事を忘れずに覚えている、または覚えておくこと。 また、その内容。ものおぼえ。 ②生物体に過去の影響が残ること。 物事を記銘し、それを保持し、さら…
Do farmers in the dark
こんばんは!すみません。なんというか、今月はとにかく夏で忘れ物が多くてウロウロ歩いたりでエネルギーを消耗してしまい、日に焼けてよく眠れて体調は凄くいいんだけどなんだか疲れてしまい何も出来ませんでした。そのため今回はお休みのような回になっています。すでにSNSにも載せている最近描いた特にタイトルの長い絵と、あんまり意味のないとりとめのない文章を何とか脈絡なく日付をつけて日記風にしたら読めるんではない…
当番ノート 第40期
「今回はどうしますか?」 ネイリストさんの問いに「最近、緑系が気になっててー、でも紫もいいなとか」なんて答える。 こちらを見て頷いた後、ネイリストさんは真剣な眼差しでわたしの手元を見て、前回のわたしのネイルを落とし始めた。 ネイルサロンは「本当に移り気だね」なんて言われないところがいい。 美容院では、やってみたい髪型がコロコロ変わるわたしに、担当さんが毎回呆れて笑う。 そんなことを思っているうちに…
当番ノート 第40期
ハッピーエンドがいい。 めでたしめでたし、とか、その後2人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ、とか。 そんなふうに終わる物語なら、私は「シンデレラ」が一番好き。別にお姫様になりたいわけでも、今の暮らしに手を差し伸べてくれる白馬の王子と出逢いたい訳でもないけれど、わかりやすく幸せだし、何よりガラスの靴というモチーフが好きだ。 わたしはまだ20年とおまけの4年くらいしか生きていないけれど、それでも「め…
長期滞在者
世界が素晴らしいと思えないときがある。 人生にはいろいろなことがあるから、それは別に不自然なことではないと思う。 ただ自分を少し見つめ直すだけだ。 ぼんやりとした私は生活の営みを通してぐいぐいと現実に引き戻される。 だから私は家にいるとほっとするのだ。 8月1日(水) 洗濯物を取り込んでいたら羽虫が入ってきて天井に張り付いてしまった。私は椅子に乗っても天井に手が届かないので、部屋にいた昴君を無理や…
当番ノート 第40期
タイトルの「農業と芸術の交歓」から、思い浮かぶのは宮沢賢治かもしれません。仏教信仰と農民としての生活を起点に創作を続けた彼は、『注文の多い料理店』や『アメニモマケズ』など後世に残る芸術作品を生み出しました。一方で宮沢は1920年に国柱会へ入信します。その国柱会は戦前の国家主義を牽引する八紘一宇思想の形成とも絡み、その後の太平洋戦争へと連なっていきます。ただ留意しなければならないのは、八紘一宇という…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
インドの友人、ソナルの家族は彼女の婚約者、前夫との長女、ミャンマーから養子に迎えられた次女、叔母さんの4人家族。そこに住み込みの若いメイドさんふたりとシッターの中年女性、心優しいけれどやや天然なドライバーが加わると8人家族。今回はソナルの叔母さん、ディディのことをお話しよう。 ディディ(インドで年長の女性を慕って呼ぶときの「お姉さん」という意味合いの言葉)は、陽気で優しく、60代とは到底思えないよ…
当番ノート 第40期
7月の半ばに、祖母が亡くなった。 日曜の朝8時過ぎに母から電話を受ける。 「急に心拍数が下がってて、いつどうなってもおかしくないみたい」とのこと。 こういうときのこういう言葉が持つ緊急性を家族がそろって掴みそこねているあいだに、波が引くみたいに、すーっといなくなってしまった。 まだ元気だった頃(といってももう10年以上前のような気がする)、 祖母はほとんど毎日デパートへ行き、洋服や食器、花器、食材…