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2F/当番ノート

自分手当

第40期(2018年8月-9月)

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あまり胸を張って言えることではないけれど、生きているだけで褒められたいと思って生きている。

朝起きること、ご飯を食べること。花の水をかえて、枯れたら新しい花を買ってくる。またご飯を食べ、皿を洗い、片付ける。部屋を掃除する。お風呂に入り、そして眠る。

穏やかな毎日を過ごすのに、あまりにもたくさんの物事をやり遂げて、積み重ねていかなければいけない。それはやっぱり、褒められるべきなんじゃないかな、と思う。

暗闇が怖くなくなったのはいつからだろう。1人でも電車に乗れるようになり、ご飯屋さんに入れるようになり、怯えることなく眠りにつけるようになったのはいつだっただろう。

そんな何気ない成功をくぐり抜けて、今日も生きている。

ある時から、悲しいことがあると、自分に何か贈るようになった。こっそり「不幸手当」と呼んで、どうしようもないことが起こると、私は私を喜ばせる。

欲しいものができたとき、「次に何か悲しいことがあったら買おう」と思う。嬉しいことがあった時、それはそれだけで幸せだから、わざわざ何か贈ることはしない。

片方に悲しみが乗った天秤の、バランスを保つようなものを、反対側に贈り物として乗せる。そんな気持ち。

生きてるだけで、すごいね。なんてなかなか言ってもらえないから、私が私に言うのだ。毎日よく生きてる。なかなかできることじゃないぞ!と。

もし何か、悲しいことがあったなら、次の贈り物はもう決めている。

そうすれば、悲しみも少しだけ、楽しみになるような気がするのだ。

山口絵美菜

山口絵美菜

女流棋士、ライター、観戦記者、造形作家
1994年、宮崎県出身。
2005年 将棋と出逢い、女流棋士になることを決意。
2013年 京都大学文学部入学
2014年 女流棋士デビュー
2017年 京都大学文学部卒業
2018年 造形作家デビュー、オリジナルキャラクター「平家駒音」をプロデュース(Twitter:@HirakeGomao)

Reviewed by
大沢 寛

誰にでも、日常生活の中で苦手とすることがある。
職場や学校での人間関係、人ごみ、通勤電車など…

何気ない日常の繰り返し。でも、毎日の生活を何事もなく平穏に暮らせていることこそが、じつは何よりも貴いのだ。

1日が終わるなかで、もっと自分をいたわり、もっと自分を褒めてあげていい。もっと自分をたいせつにしていきたい。

日々の生活の中で、悲喜こもごもの感情を抱きながらみんなそれぞれ自分の職能を果たすわけだけど、悲しいことがあるとやはり気持ちもふさぎこんでしまう。

でも、そんな時こそ、自分で自分を喜ばせることができるように、何か自分に「贈り物」をする。そうすれば、悲しみも癒えるし、自分に失望することもなくなる。

そんな自分への「贈り物」を、山口さんは「不幸手当」と呼んでいる。
仕事でミスを連発し気持ちふさがってしまうことの多い僕なのだが、そんな自分自身のために、僕も不幸手当を用意しておこう。

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