最後の冬に

第25期(2016年2月-3月)

花粉が飛んでいる

もちろん黄色い粉が舞っているのを見てとることはできないけれど,

ぼーっとする頭が花粉のことを嫌でも認識させる。

ぐずぐずの鼻

散らかった部屋

今夜,彼に会いに行く

いつもの電車に乗って,あの駅で降りて,バスロータリーを抜けていく

そういう風に思い浮かべていくと,あっという間に彼の部屋の扉に行き着く

彼のことが好きで,あの街も好きになった

私は午前中を,彼のことだけを考えて過ごした。

きっと午後も同じだろうと思う
もう予定表にそう書いてしまいたいくらいだ

それでも眠たくなってきたのは,寝不足のせいだけではない

花粉症の薬が効いてきたのだろうと思う

この花粉症の薬の,本当の名前を私はしらない

興味もないけど,きっとMQT-202とかそんな名前なのかな

彼は私の本当の気持ちをまだしらないし,興味もないのだろうとおもうと

眠気をこの薬のせいにするのは,ちょっとふびんだ

冬が終わる

もう終わっているのかもしれなかった

きょうが冬の最後の日だったらいいのに

そういう風にテレビのニュースで一言でも言ってくれたら

そうしたら私は今夜,彼の部屋で別れを告げることができるはずだ

そんな後押しがなくても,伝えなければならないことは明らかだった

あの駅,あの街

あたたかい夜

これで最後だと思うと

この街の,あの自販機,あの街灯,選挙ポスター,曲がり角,コンビニの店員さん,あの公園のいちばん高い木,

ぜんぶバカみたいに愛おしかった

いまから泣いていて,どうする

花粉が飛んでいるはずだった

でもいまはぜんぶ流れていく

春がくる

そんなことは,わたしには全く関係のないことだな

⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎

ご愛読ありがとうございました。
って,かたいよ。
それに愛してくれたかなんてわかんないし,でもありがとうございました。

アパートメントには,いままで何度か書かせてもらいました。その度に思うけど,2ヶ月間の連載っていうはとってもしっくりきています。なんか季節が変わんのか変わんないのかはっきりしなくて楽しい。ずっと「たいして変わんないような,でも少しは変わってきたかな?」というようなこと書いてるぼくにはぴったりな気がする。

今回もぜんぜんしめ切りまもれなくて,みんなにすっごい迷惑かけた。ごめんなさい。
いちばん振り回されたのは,レビューを書いてくださった暁月上ルさんだと思います。
人のこと紹介するのってとっても苦手で,でもほんとに毎回嬉しかったから,まあまずはレビューを読んでみてよって思ってました。それにぼくだってお会いしたことないから,どんな喋り方なのかもなんにもわかんないし。こんど絶対会うんだー。って勝手にぼくは思ってます。この場を借りて,ありがとう。ごめんなさい。

読んでくださったみなさま,本当にありがとうございました。
これまでのおはなしは,このあともずっと読めるだろうから,電車のなかとか,布団のうえとか,そういうちょっとしたときに読んでやってください。ピピー。そこのあなた,歩きスマホはやめなさーい!

さあ,もうすぐ春がくるよ。
みんなで一緒にもやもやしましょう。

ばいばい。

ppoi-っぽい-
つかにしゆうた