差別ではなく、区別。

第28期(2016年8月-9月)

韓国で美容師をする、という仕事の話になるが、
自分の中では、お客さんに向き合うとき、韓国人と日本人で接客を切り替えてやっている。
カット入るまでの最初のカウンセリングからぜんぜん違う。
理由は、やはり双方にいろいろな違いがあり、同じやり方では対応できないからだ。

例えば、次のような感じである。

韓国人の希望するスタイルの特徴は、
「なんもしなくても良いように」
「ボリュームほしい」
「この写真とまったく同じにしてほしい」
これら3つの声が中心である。
(わかりやすいと言えばわかりやすく、究極的なオーダーとも言える笑)

しかし、彼らの髪型をみたとき、今の状態だとちょっと…と思うことも少なくない。

通常、カウンセリングをする際には、
「〇〇のようなスタイルにしたいなら、カットはこうこうで、コテで巻くか、パーマが必要です」
のように「こうしなくちゃいけない」などの説明が必要になってくる。
しかし、韓国人の場合、髪の毛のことはまだ理解せずにオーダーしてくることがほとんどだ。

一方、日本人のオーダーの特徴としては、
「やりたいイメージがあるが、そのテイストを踏まえて自分に合うスタイルを提供してほしい」
が、ほとんどである。

カウンセリングも具体的に、
「写真のどこが好きなのか」から話しはじめられる。
雰囲気は人によって感じ方が違うこともあり、
スタイルの質感なのか、カラーなのか、全体的な雰囲気なのか、
と細かくスタイルの種類を分けながら、聞いてそのニュアンスを掴み取っていく。

そういったヒアリングを重ねることでで
「あなたの髪の毛質と顔の形などであれば、長さはこれぐらいで、
こんなパーマでこんな色が似合いますよ」
とニュアンスを細かく紐解いていき、言葉にしながら、お客さんに提案していくことができる。

やはり求めてくるものが違うと、カウンセリングのやり方も変わってしまう。
韓国人は、まだ写真を持ってきて「同じようにしてほしい」
日本人は、「イメージの雰囲気で自分に合うようにしてほしい」
というオーダーなので、その傾向も押さえつつ、コミュニケーションしていくことが大事になる。

現状、正直なところ、カウンセリングは、日本人よりも韓国人の方が聞くことが少なく、楽ではある。
もちろん、最初は韓国人の求めているゴールが全く掴めず、だいぶ苦労した時期があった…。

他にも、お客さんとの”距離感”に関しても、韓国人と日本人では意識を少し変えている。
海外経験が長い人ほど共感してもらえるかもしれないが、海外で会う日本人には特別な魅力がある。
それは、言葉が通じることもあるし、外国におけるマイノリティーとしての日本人として、
同じ境遇の人がいることにすごく安心感を持ちやすかったりするからだと思う。
だからこそ、日本人には親しみやすく、自分の立場を生かしながら、距離を縮めるようにアプローチする。

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(喜んでもらえたお客さんからは、一緒に写真を撮ってほしいと言ってもらえることもある。右が自分)

韓国人に対する距離の取り方としては、
カンナムという土地柄もあり、少し高級サロン的な雰囲気を出し、
自分自身も店長としてお店に立っているので、
威厳のある雰囲気を醸し出しつつ、先生と生徒の関係性ではないけど、美容師のほうがリードするイメージで接客する。

働きはじめての発見でもあったが、韓国では、お客さんが美容師に対して「先生」と呼ぶ。
だからこそ、そういった距離感を保つことも、気持ちいいサービスを提供するためには必要だことだと感じる。
(とはいえ、自分の中では「先生」と言われるのは、まだまだ慣れず、若干やりにくさはあったりもするが…)

というように、カウンセリング一つ取っても、
日本人と韓国人に対して、対応がちょこちょこ違うこともあり、
お店に入ったばかりの日本人スタッフには驚かれることも多々あるのだけど、
今のところ、どちらもお客さんには支持してもらえているのでこのスタイルは続けていこうと思う。

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(手前味噌だが、韓国におけるトップスタイリストとして、唯一の日本人として紹介してもらえたこともある)

ただ一度だけ、韓国人スタイリストに「韓国人を差別している」とか陰口をたたかれたりもあった。

実際には、どの韓国人スタイリストよりもお客さんに支持をもらっているという自負はあるし、
自分なりにお客さんの反応を見ながら、ちゃんと考えたうえでの行動であることに変わりはない。

だから、これは「差別」ではなく、それぞれに合わせて、
より喜んでもらえるようなサービスを突き詰めた結果でもあるので、
自分の中では「区別」だと思いやっているし、これからもブレずに続けてはいきたい。

韓国人だの日本人だのを書いたが、
結局のところ、鏡に映る人の表情をみて、個性をみつけ、
求めているスタイルをつくっていくことが、自分の仕事なのだ。