渇いた日々にさよならを

第40期(2018年8月-9月)

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窓を開けると、誰かが洗濯機を回す音が聞こえた。秋の風が涼しげに通り抜けていく。

いく層にも重なった生活音。同じアパートメントに住んではいても、顔も知らない、声も分からない。近くにいながら、全く別な時間を過ごしている。名前も知らない息遣いの中にいる。

初めてこの部屋に来た時、自分じゃない何かになれるつもりでいた。私の思い描く、私を超えた誰か。

いつも笑っていて、楽しいことに溢れていて、悲しいことは吹き飛ばして、誰かのためにしか怒らないような。それでいて、誰もできないようなことを成し遂げてしまう人。

結局は時間を経ても、私は私という器の範疇から溢れたりせず、持て余してるような不安感を煽るくらいのもので、私はどこまで行っても私だった。

どこかに行きたい。

この部屋で、私が失えたものといえば、その叫びだしそうな渇きだ。

2ヶ月間に渡って、毎週ひとつの文章を書くということ。初めは、変わっていくであろう自分を切り取って、自分のための文章を書いていければとぼんやり思っていた。

書いてみて、それによって、自分が何を思っているかの輪郭がくっきりしたということはない。かといって何も感じていないわけじゃなかった。

変わっていく、言わば自分の上澄みの部分を書いていたつもりで、どこか核をなすような、ずっとこころの底の方で思っていたことを書かざるを得なかったこと。

夏から秋に、季節がグラデーションを刻む中で、私は思ったより変わっていかなくて、それがどこか安心する気づきでもあった。

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部屋に飾った一輪のひまわりは、季節が巡ってりんどうに変わり、歩きながらこぽこぽと浮かんでくる言葉たちから寂しさが薄れた。

変わっていたいほどは、変わっていかなくて、それでもゆっくりと、人は変化しているのかもしれません。

それではまた、どこかでお会いしましょう。ありがとうございました。