斜め上の空

第40期(2018年8月-9月)

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夏が終わる匂いがした。

通り雨に泣いたアスファルト、信号が青に変わる。

私は探し物をしながら歩く。散歩でも、駅までの道も。いつも、少し見上げながら歩く。

田舎で育ったせいか、ひとごみが苦手だった。
すれ違うひと、ひと、ひと、ひと。目に飛び込んでくるひと、背景を連想してしまう、情報の塊が蠢くようで、都会の駅が怖かった。

目を合わせない、顔を見ない。戸を立てるようにして、今では駅でも揺らがない。それでも少し怖くて、真っ直ぐに前を見たりはしないけれど。

少し見上げながら歩く。ちょっと風変わりに見えるのかな。少し見上げながら歩く。建物の切れ端と、狭まった空と、

それから、電線が見える。

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空を探している。少し見上げて、景色を探す。
電線に囲われた空の、四角く切り取れそうな部分。

始まりは思い出せない。だけど、電線が好きだ。あまり共感されたことは無いけれど、私は1人でも電線が好きだ。

好き、は一やっかいだ。劇的に訪れる好きもあれば、気づけば住み着いている好きもある。

理由が説明出来ないと、うまく言葉に紡げないもどかしさの分だけ、もっと好きになってしまう。
きっと、言葉の向こう側で好きだ。

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どこにでもあるから好き、かもしれない。どこの街でも、好きを見つける。

今日も歩く。少し見上げて、電線を探しながら、歩く。

もうどの街も、怖くない。