「音楽を好きでいることが、奇跡を生み出すことがある。」【LUNA SEA「Limit」(2016年6月22日リリース)】             

長期滞在者

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ヨルダンでは年に数回しか降らないという雨が降っていた。
私はその日、ペトラ遺跡に行く予定で。
「ペトラ遺跡で雨なんて珍しいことだよ!」と言われた。

そうか。明日にはこっちに来るからだろうか。
このまま土砂降りの雨になったら、ヨルダンでも伝説を作ってしまうのかもしれないと考えてしまった。

ペトラ遺跡からアンマンの市内に戻る車の中で、
雨に包まれたヨルダンの広大な大地を見ながら、「THE ONE -crash to create-」を聴いていた。
壮大な広がりと未来への光を感じるこの楽曲が、この世界の大きな歴史を築いてきた中東の景色と空気に合っていた。

ミュージシャンとしてではなく一人の人間として行きたい。
その言葉通り、一人でヨルダンにやって来た。

「ヨルダンで雨が降るなんて珍しいことなんですって。」と伝えたら、
「俺の場合は晴れか天災なの!」と話していたことに思わず笑ってしまった。

結局、最初の難民キャンプ訪問となる、アズラック難民キャンプに行く日の朝は、青空だった。

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LUNA SEAを最初に意識した曲は「TRUE BLUE」だった。
気がついたら何度も何度も繰り返し聴いていた。そう、魅かれたことに理由などなかった。

1995年12月23日。初めてLUNA SEAのライブを観た。
それは、LUNA SEAにとって初の東京ドーム公演だった。

一番よく覚えていることは、ステージ上でギターを奏でる姿を見ていて、同じ人間に思えなかったことだ。
「この人と同じ空気を吸うようなことがあれば、それは人生で一番最幸の時なのかもしれない。」
何故そう思ったのかはわからないけど、あの時そんな言葉が自分に降り注いだような感覚があった。

2016年2月23日の夜。ヨルダンに行くことを報告した。
「ヨルダンに行ってきます。」と話した瞬間、間髪入れずに「俺も行く。」という言葉が返って来て驚いた。
すぐに、国連UNHCR協会に一緒にヨルダンに行くことを伝え、難民キャンプ訪問の許可申請に動き出した。

難民キャンプのアクセスは厳しく制限されている。
けれども、今回私達をなんとか行かせようと多くの人が動いてくれた。
出発までほとんど時間がない中で許可が出たことは異例だった。

それから、一ヶ月後となる、2016年3月22日の夜、私は先に一人でヨルダンへと出発した。
実はこの時は、フォトジャーナリストの佐藤慧さんと向かう予定だった。
しかし、家を出る1時間前に、急遽私一人で行くことになり、慌てて、成田エクスプレスに乗って空港へ向かう最中に、
ベルギーのブリュッセル空港で爆発が起きるという連続テロ事件が発生した。
出発から予想もしないことの連続で不安も緊張も凄まじいものがあったが、でも「らしい」気がした。
普通に終わるわけがないと、改めて覚悟を決めて、旅立った。

実際、ヨルダンでの日々は、毎日「こんなことが起きるのか!」の連続だった。

ザータリ難民キャンプで、ステージ裏で演奏の準備をしている時に、ヴァイオリンの一弦が切れた。
替えのヴァイオリンの弦はない。しかし、ギターの弦ならある。
急遽、ギターの弦をヴァイオリンに張った。

「こんなこと今まで起きたことがないよ!」という声が響く。
チューニングを繰り返す。しかし、上手くいかない。
「ダメだ」という言葉がその口から何度も発せられる。

周りの人達が不安げな表情を見せる。
私は言った。

「大丈夫です。これまでも数々の困難を乗り越えて、ライブを成功させてきた人です。絶対大丈夫です。」

自分の心臓が今まで感じたことがないくらいに脈打つのを感じた。
こんなに強く誰かを信じたことはなかった。

そして、奇跡は起こった。
ザータリ難民キャンプでのライブが始まる直前にぴたりとチューニングが合った。

SUGIZOさんは、ギターの弦を使ったヴァイオリンで、ライブを大成功させた。

2016年6月22日。
LUNA SEA、2年半振りのニューシングル「Limit」が発売される。

ヨルダンから帰国して。
自分の目から見える世界がこんなにも形を変えてしまうなんて思わなかった。
悲しいこと、苦しいこと、どうしてなんだという絶望に足を掴まれて引き込まれるような毎日で、
私は次第に闇の底ばかりに視線を落とすようになってしまった。

そんな時に初めて聴いた「Limit」という曲は、
歌い出しから、自分の意識が覚醒するような、はっとする力を感じた。

LUNA SEAのメンバー、一人一人の個性は、それはそれは、強い。強烈だ。
そんな5人の音が重り、研ぎ澄まされた個の存在が集まった時に生まれる圧倒的なパワー。

どうしてこんなに数多のバンドがあるのに、LUNA SEAを聴いている時は心の震え方が違うんだ。
まるで自分の中に、彼らの音にしか反応しない魂があるかのように。

そして、自分の中に力が湧き上がってくることを感じた。
これまでも、LUNA SEAの曲を聴いて、何度背中を押されたことだろう。
LUNA SEAの音楽に触れていると、自分らしく、自分が今この時代で息をしているからこその生き方をしたくなる。

「Limit」を聴きながら、自然に顔が上を向いていた。
青空の遠い遠い果てをどこまでも追うように私は空を見上げた。

今回のヨルダンのミッションには様々な立場の人がそこにいた。
ミュージシャン、フォトジャーナリスト、映画監督、
ザータリ難民キャンプで子供たちへの音楽教育をしてきた青年、
ヨルダンに住み数多くのシリア難民の家庭訪問を続けている日本人、
アフリカを拠点に世界と向き合ってきた女性・・・そのバックグラウンドは実に多様だった。

「難民」という、今、世界にとって最も危機的だと言われる問題に孤独に考え続けていた人間が、
ヨルダンという地で、出会った。

帰国の前の晩。
皆で集まって、総括として、一人一人の想いを語り合った。
そこには立場も何もなかった。現在を生きる一人の人間として、今何を思うかを包み隠さず話す、長い時間となった。

普段、私は人前で話すという立場上、誰かの前で語る時に泣くことを自分の中で強く禁じている。
だけど、その夜は、仲間の話を聞き、自分で話していて、勝手に流れ出る涙を止めることなどできなかった。

共に過ごした数日間は、それぞれが必死に生きてきて、自分の力を磨いてきたからこそ、
一つになった時に、想像を超える驚くような光景が生まれ、個々の存在の尊さが煌めいた。

「この人と同じ空気を吸うようなことがあれば、それは人生で一番最幸の時なのかもしれない。」
それがヨルダンの空の下になるなんて、あの時、どうして思えただろう。

日本に帰る飛行機に搭乗する時間を待つ間。
空港のロビーで椅子に座りながら、あまりにも多くの感情を抱えた私は、
「もう今年はこれを超えるようなことはないと思います。」と声にした。
すぐに「わからないよ。これからもっとすごいことが起きるかもしれない。」と言う言葉が返ってきた。
あぁ、きっとそうだ。

最高の瞬間は、いつだって更新される。
それは、LUNA SEAの楽曲やライブから感じ続けてきたことだ。

「Limit」を聴きながら、湧き上がる興奮と共に、この曲がライブで演奏されたらまたすごいことになるんだろうなと、
さらなる感動に胸を震わす日に今、想いを巡らせている。

闇や絶望がかつてないほどにこの世界を覆うなら、
それ以上の光や希望を、奇跡を呼び起こせばいい。

未来へ向かって、私は音楽と共にまた走りだす。
この世界に生きる一人の人間として、私自身の生命を活かし、何ができるかを考え続けながら。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(少し前から曲紹介を始めて、逆CUEで“♪イントロ〜4秒”に合わせる)

音楽を好きでいることが、奇跡を生み出すことがある。
この曲を聴いて湧き上がるあなた自身の力を信じて。

LUNA SEA「Limit」