「時を超えても、聴けば必ず胸が震え、この夏を思い出す一曲となっていくでしょう。」【RADWIMPS「前前前世(movie ver.) 」(2016年8月24日リリース)】

長期滞在者

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随分と笑った。

2016年8月28日。
エイズ孤児支援NGO PLAS10周年記念Thanks Partyで司会を担当した。
この時に初めてお会いした、土屋アンナさんとのトークセッションがたまらなく楽しかった。
言葉を交わし合うことで、こんなに気持ちがわくわくする方には滅多に会えない。
何時間でも話していたいと思える素敵な方だった。

言葉が途切れずにいられる人に出会えることは、そんなに多くはない。

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随分と泣いた。

2016年8月3日。
もう10年以上も足を運んでいる、東宝の試写室で『君の名は。』を観た。
映画館で予告編を何度も観る度に期待に胸を弾ませ、この夏最も楽しみにしてきた映画だった。
予告編からは全く予想もできなかったその展開がきた時に「えっ…」と頭が真っ白になるくらいの衝撃を受けた。
それはあまりにも今のこの日本の状況をリアルに表現していて。
そして、何よりも私は、そういうものが描かれた上で、
ストーリーを走る「探す」という行為がいかに切なくて、必死で、尊くて、愛しいかが、
自分自身の人生においてもあまりにもよく理解できるだけに、泣いた。

その時から、アパートメントでも、映画が公開になった後の9月に、RADWIMPS「前前前世(movie ver.)」で書こうと思った。
どんな言葉を綴ろうか、日々考えていた。

2016年8月26日。
映画が公開されて、インターネットには映画の感想が飛び交い、
私の生活の中でも、毎日誰かとこの作品について語り、その時間がとても、とても楽しかった。

RADWIMPS「前前前世(movie ver.)」は、買った瞬間からずっと聴いていた。
映画のシーンを思い出しながら、RADWIMPSばかり聴いていた。
夏の終わりはそんな日々を過ごしていた。

これいいよね、最高だよねと、誰かと話すことができる時はなんでこんなに幸せな気分になれるのだろう。
映画『君の名は。』も、RADWIMPS「前前前世(movie ver.)」も、
今のところ、今年一番語り合っていて心嬉しい作品であり、楽曲なのだ。

私にとってこの想いの交わし合いは、2016年の夏を象徴する輝きに溢れた思い出となっていた。

2016年8月30日。
その日は、毎日のようにLINEを交わす友人から、『君の名は。』の感想を楽しみに待っていた。
アニメーションの話を一番良く語り合ってきたその友人に、私は、とにかく早く観に行って! と言い続けていた。
前日の夜に「明日見てきますね」と言っていたので、今日はやっと語り合えると、わくわくしていた。

けれども、友人とは、『君の名は。』を語ることはできなかった。
彼は、その日、突然の体調不良で亡くなった。

知らせを聞いた日の夜は、番組の収録があり、私は自宅から、スタジオへ向かった。
山手線に乗りながら、iPodで、それまでにもう何度も聴いていた「前前前世(movie ver.)」を聴いた。

なんでこんなことになったんだろうとぼんやりとした頭の中に、曲だけが響いていた。

アパートメントで何を書こうかと想いを巡らせながら、
自分の中で浮かび上がっていた言葉は、一つ一つ消えていった。
そして、言葉が途絶えた。

君がいる世界で描こうと探し続けていた言葉。
君がいない世界で立ち尽くしてしまった言葉。

君がいる世界で考えていた言葉は、もうどうにもできないくらい、遠くへ行ってしまった。

戻れないだろうかと思った。
私が時間を飛び越えればいいだけの話ではないかと、本気でそう思うくらい、なんとかしたかった。
なんとかならない事実を受け止めながらも、なんとかしたかった。

対で話をしてきたという確かな記憶が、私の意識を集中させていく。
他者の入り込んでいない会話があったからこそ、届け合う声がある。

明日の約束があるってこんなに楽しいことだったんだな。
くだらないことを気兼ねなく話せるってこんなに楽しいことだったんだな。

私の尋常ではない様子に気付いてくれた人からの連絡に、震える手で事情を綴ると、
「『君の名は。』を見てきますから、語りましょう。」という言葉が送られてきた。
そういうふうに手を伸ばしてくれる人がいるのかと、驚いた。

一つの作品で繋がっていく。

亡くなったという知らせを聞いた日、
放り出された海で必死に沈まないように、すがるように手にしたのが、
若松英輔氏の『生きていくうえで、かけがえのないこと』だった。
その本のあとがきに、志村ふくみさんの言葉が引用されている。

「芸術とは人をなぐさめ、よろこばせることは言うまでもないが、実は人を蘇生させる程の力を持っている」
(志村ふくみ『薔薇のことぶれーリルケ書簡』 人文書院)

一つの作品を誰かと語り合うこと。
私とあなたで語ること。

それは、私が思ってきた以上に、自己を生かし、命を繋ぐ行為だったのだ。

日常の中で当たり前のように言葉を交わしていたから。
黄昏が訪れると、今は君と会える時間だねと、
この声を、私の言葉を届け、その声を、君の言葉を受け止めることだけを考えている。

いなくなってから気付くことがたくさんある。

だから私は、この時間を生きている、本当の意味をきっとわかっていない。
そして私は、この言葉を書いている、本当の意味もきっとわかっていない。

きっと何もわかっていない。

それでも私は、
今確かに、この曲を聴くと胸が震えるということだけはわかる。

歓喜の時にも、慟哭の時にも、
常に聴いていた曲。

鼓動の音が、強烈に今を生きているという実感を私に与える。

毎日は、一日たりとも同じ日などない。
めまぐるしく生の場面が変わっていく。

確かな過去。
不安定な今。
光ある未来。

今、この瞬間を生きているけど、想いは日々、過去にも未来にも飛んでいく。
あれやこれやと迷いながら、ちっとも待ってくれない今の中で息をしていく。

わからないことばかりだ。
だからこそ、探している。

見逃さないように。
消えてしまった言葉も、またいつかその姿を表す時が来るかもしれない。
その時に、そうだこの言葉だと、すぐに手を伸ばせるように。

何もわかっていないから、研ぎ澄ましていたい。
私の感覚にこの曲を送り込めば、きっとそれは迷わずに走り出せる印となっていくだろう。

一つの希望とともにあらんことを。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜10秒〜19秒”に乗せて)

現在大ヒット上映中のアニメーション映画『君の名は。』。
予告編でも印象的に使われていたこの曲、私も大好きです。
走り出したくなるようなこのイントロからたまらないですよね。

きっとどんなに、時を超えても、聴けば必ず胸が震え、
この夏を思い出す一曲となっていくでしょう。

RADWIMPS
「前前前世(movie ver.)」