「二人を再び引き寄せたのは、感情なのか、信念なのか。」【The Chainsmokers Featuring Halsey「Closer」(2016年7月29日リリース)】

長期滞在者

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19年が経った。

FM802でラジオDJとしてデビューしたのが、1997年10月8日。
その日から、毎週水曜深夜3時からの生放送『FUNKY JAMS 802』を担当した。

番組を始めるにあたり、担当ディレクターから、ロックを強く打ち出していく番組にしていくという話があった。
そこで、番組の1曲目は、STARSHIP「We Built This City」。
歌詞の中に“we built this city on rock an’ roll”という言葉があるのが選曲の理由だった。
「これから君は、ラジオからロックンロールを届けて、街を作っていくんだよ。」
そう言われた。

初回の放送の、記念すべき一曲目の曲紹介。
どんな言葉を乗せようか迷った。
この曲は歌い出しから始まるから、17秒〜30秒の間、つまり、13秒のイントロ曲紹介の言葉だ。
震えるように、悩み続けた。

そして、挑んだ、本番。
なんと、曲が途中から出た。

考えたイントロ曲紹介は、水の泡と消えた。
それどころか、さて、この後、どう番組を進行していく?
スタジオの外にいるディレクターの顔も固まっている。

でも、なんだかその時の私は、驚きはしたものの、焦ってはいなかった。
番組が終わった後に、ちゃんと進行してよくやったというようなことを言われた。

よくやったも何も、生放送なんだから進行するしかないというのが、その時の私の気持ちだったのだと思う。
放送が始まってしまえば、やるしかない。その覚悟をラジオDJとしてデビューした最初の一曲目で味わったということだ。

現在、私は、練馬にコミュニティFMを開局させるために活動をしている、
練馬放送インターネットラジオで『Voice of Heart』という番組を担当している。
16歳でラジオDJを目指した時から変わらぬ想いである、
将来に期待が高まるインディーズアーティストを紹介するコーナーを中心に、
マイクの前で週に一度、この声で言葉を伝えている。

つまり、あれから19年間、私は毎週、人々が生活している場所にラジオ番組を届けている。

練馬放送に集う人達は、皆、本当にラジオが好きだ。
彼ら彼女たちの人間らしい温かな想いが作り出す、練馬放送のスタジオの空気に触れながら、
私は益々ラジオへの愛情を深めている。

今、振り返ってみれば、オープニングナンバーが途中から出てくるというあのハプニングが、
この19年のラジオDJ人生を象徴している気がする。
何が起こるかわからないことだらけの日々だった。
でも、だからこそ、続けてきたのだろう。

先が見えない不安とは常に格闘している。
だけど私は、いつだって、次に出会える景色を楽しみにしている。

明日がどうなるかわからないからこそ、
頭の中の想像を超えた、未来へ生きていきたい。

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高校一年生の時。私がお昼の校内放送で初めてDJに挑戦した時の一曲目は、洋楽だった。
ちなみに、AC/DCである。クラスメイトからのリクエストだった。

このアパートメントでは、これまで邦楽について綴ってきたが、
ラジオで曲紹介をするように書き続けていきたいので、ラジオの世界では新番組が始まるシーズンである10月を機会に、
今回、初めて洋楽を選んで言葉を探していくことにした。

家の中では、洋楽を聴いている時間の方が長いかもしれない。
最近は、Apple musicを使うことが多く、例えば、ビルボードチャートで気になる曲があれば、
すぐにApple musicで検索して聴くということを繰り返しているので、
私の生活の中で洋楽にアクセスする時間は増えている。

The Chainsmokers Featuring Halsey「Closer」は、まさにそんな出会い方をした曲だ。
2016年9月3日付、全米チャート、ビルボードホット100チャートで1位を獲得。
ニューヨークを拠点とする男性2人組DJユニットである彼らにとって、初の全米ナンバーワンである。

つくづく、自分は切ない曲が好きだなと思う。
毎週チェックしているビルボードチャート番組からこの曲が流れてきた時に、メロディの切なさと音数の少なさに惹かれた。
シンプルな曲の中に、すっと心を捉えるような哀愁があって、
楽曲だけ聴いていた私は一体どんなアーティストが奏でている曲なのだろう? と思って調べたら、
2014年の「#SELFIE」のMVを見た時には、少しびっくりしたくらいだ。

センスのいい曲だなと思って、夏の終わりには、寝る前にほぼ毎晩聴いていた。
が、自分の中で意味を持つ曲となっていったのは、夜の気温がぐっと下がり、秋の気配を感じたある夜のことだった。

過去の再燃。

この曲のそんな意味に気付いた時、私の耳はサウンドよりも、男女の声が絡み合う歌へと意識が移っていった。

仕事ではことさら、未来を目指して走っている私だが、
プライベートは、過去に引っ張られてしまう脆さがあるところは否めない。

あんなに傷つけあったのに。
そんな人間とだいぶ長い時間を超えて、今また語り合っている。

こんな日がくるなんて、想像もしていなかった。
それはとてつもなく嬉しい現在だ。

でも、安堵と穏やかな時間の中にいながら、かつて過ごした記憶の中にある痛みや後悔を思い返して、
もう同じことは繰り返さないという慎重さも持ち合わせている。

過去に想いと身体を交わした二人の再燃というのは、悦びだけではなく、
どこか切なさや戸惑いも伴うものなのだということを、この曲はとてもよく伝えていると私は思う。

そして、そう感じることは、人種や国籍を超えて、世界中変わらない、人間としての自然な心の動きなのだろう。
ワールドワイドで大ヒットしている理由は、そこにもあるのかもしれないなと、秋の夜更けに一人思ったその瞬間、
私はより好きになった。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜9秒”に乗せて)

二人を再び引き寄せたのは、感情なのか、信念なのか。
今、世界中の人を惹きつけている切なきこの曲を。

The Chainsmokers Featuring Halsey 「Closer」