「この声で想いを伝えたくてもどうしていいかわからない。」【JUJU「いいわけ」(2017年10月11日リリース)】

長期滞在者

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拍手の音だけが耳に聴こえる。
全ての司会を終えて、頭を下げた瞬間に聴こえた拍手の音を、そのまましばらく聴いていた。

声の仕事をしてきて、20周年となった、10月のその日。
私は今も、自分の声を誰かに届け、言葉を使った仕事をして、最後に拍手の中にいる。
その事実に、感謝しかない。

20年で出会えた全てのことが、今も私が声を伝えることができる場所へと導いてくれたと感じる瞬間だった。

国連UNHCR難民映画祭での上映後に、いくつかのトークイベントの司会を担当した。
この世界での深刻な事態である難民問題ついて語る人間の声に宿る想い。
表現しきれない心の葛藤、迷いながらも必死に伝えたいとする熱量。
ゲストのそれぞれの声が胸に響いて、私の声の表情にも影響を与える。

声と声が重なり合う。

想いの詰まった声が語る言葉だからこそ生まれる会場の空気、
その声を受け止めている人たちの表情など、その場で声によって生まれる一つ一つの動きから、
私は声で伝えることの意味を深く感じていた。

私は声が好きだ。
声が繋いでいく、心の触れ合いを強く信じている。

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この声が傍で響く幸せが続かない明日に、意味などあるのだろうか?

姿よりも、その腕よりも、私を惹きつけて離さない声。
距離も時間も、何もかもを超える声。

「私、人と人との繋がりは信じていません。
でも、この声の繋がりだけは信じられる。」

JUJUの「いいわけ」は、
現在放送中のNHKドラマ10『この声をきみに』の主題歌として書き下ろされたラブソングである。
ドラマのエンディングで流れる度に、声と言葉と感情の揺らぎに私自身の想いを重ねてしまう。

このドラマは、朗読教室が物語の軸になっている。
朗読は、自分の人生でずっと好きでいることの一つであり、
さらに、私は現在、ラジオのフリートークを教える講師の仕事もしている。
声を使い、想いを込めて言葉を届けることを続けてきた私にとっては、とても親近感のあるドラマだ。
そして、ドラマの3回目の中に出てきた、麻生久美子が演じる朗読教室の先生が語るこのセリフに、
自分と同じだと思った。

正確に言えば、信じていないわけではない。
ただそれ以上に、声の繋がりを私は信じている。

文字のやり取りでコミュニケーションが進む今。
例えば、電話という手段が日に日に減っている。

何よりも「肉声」に触れた時。私は、この上ない喜びを感じる。
声にはその人自身が宿るから。

今、私も、あなたも、生きて、声で繋がっている。

ある日、その声を傍で聴いた時に、今まで感じたことのない心の高ぶりが私の身体に走った。
右の耳から響いて、頭に取り込まれた時に、しびれるような感覚と共に、あぁずっと待っていたのは、この声だと思った。
ふいに、どうしたらもっとこの声と一緒にいられるのだろうという考えがよぎった。
言葉でも、体温でもなく、私にその感情を呼び起こしたのは声だ。

その声を失ったら、生きていけないと思うのなら、伝えなければならないはずなのに、
怖さばかりが先立って、私の声はありのままの言葉を発するより、笑い声で、その場をごまかす。
このままでいいはずなどないと思いながらも。

あなたの声が、私に優しさと幸せをもたらしてくれる。
その事実を、決して崩したくない。

言わないでそのままにしている言葉は、いくらだってある。

例えば、この20年、どれだけ好きでも、
1回もラジオから自分で紹介したことがない曲があるように。

どんなに好きでも、自分の言葉で伝えられなかったことは、たくさんある。

もうこの状況を変えるのは、その一言なのだとわかっていても、踏み出せない。
迷っている時間なんて本当はないのもわかっているのに。
まわり道しか出来ない。

未だ探しているあなたへの言葉は、いつか必ず私の声で伝えたい。
それだけは絶対に守りたい、1番の愛だ。

この声があったから、あなたに出会えた。
この声があったから、私は私を生きることが出来た。

声を信じてきた20年だった。
もうそれは人生そのものだ。

迷ってばかりの私だけど、これだけは、今、伝えておきたい。

この声を授けてくれたことに心からの感謝を。
私の声と出会ってくれて本当にありがとう。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪☓11秒〜30秒”に乗せて。)

声の仕事を20年していても、恋愛においては、私もあなたと同じように、上手く言えないことばかりです。
この声で想いを伝えたくてもどうしていいかわからない。
そんな恋する気持ちに響く、小林武史プロデュースによるJUJUのニューシングルをお届けしましょう。

JUJU「いいわけ」