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「音楽の楽しさや喜びが、必ず希望をもたらすと信じられる輝きを放つこの曲を。」 【LUNA SEA「BLACK AND BLUE」(2017年12月20日リリース)】

長期滞在者

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街に声を響かせるということは初めての経験だった。

2018年6月16日。
UNHCR駐日事務所、国連UNHCR協会主催「世界難民の日」 ソーシャル・アクション in 渋谷 #難民とともに。
6月20日の世界難民の日を前に、渋谷駅ハチ公前広場に、難民支援の現場でこれから使われる予定の最新型テントを設置。
テントの中に入って、避難生活を疑似体験することで難民について知る機会を設け、
オンライン署名や寄付の呼びかけをするイベントとなった。

私は午前10時から夜7時までマイクを握って、渋谷の街に声を放った。
難民と呼ばれる人のことを知って欲しい、難民支援の輪が広がることを願って、呼びかけるというよりも、
語りかける想いで言葉を声にした。

日常の空間の中で、難民支援を呼びかけられた街の人はどんな反応をするのだろうか?
渋谷のスクランブル交差点を歩く大群衆に向けて声を放つ。振り返ったら、次はどの言葉を声にしよう。
どこまで自分にできるのか。伝え方の可能性に挑戦することは、わくわくした。

結果として、スタッフ全員が驚くほどの関心を集めることができた。
続々と、若い人を中心に難民支援の署名や寄付に繋がっていく。
たまたま渋谷の街を歩いていた人たちが、私たちの声に耳を傾け、自らの意思でアクションを起こしていく。

街の中を歩いていて、私は日々想い続けてきた。
この街を歩く人が関心を持ってくれれば、変わることがあるのではないだろうか? と。

街に語りかけた時、その反応は早かった。
路上に突如出現した難民支援の呼びかけは、
想像以上に人々の関心を引きつけ、現実的な支援の一歩を刻む多くの人を生んだ。

私はどこかであきらめてはいなかっただろうか?
日々めまぐるしく変わる世界の中で、それぞれが自分の人生を生きることで精一杯の世の中で、
難民支援に関心を集めることは、簡単なことじゃないと思うことばかりだった。

しかし、この一日を経験したことで、まだまだ伝える方法はあると確信した。

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ギターの音が好きになったきっかけは? と聞かれたら、
私は15歳の時に初めて聴いた、U2の「I Still Haven’t Found What I’m Looking For」と答える。

「え? ギターってこんな音色が出せるの?」と、The Edgeのギターの音に驚いたことを今でもよく覚えている。
その音色をきっかけに、私は音楽を聴く時に、ライブを観る時に、ギターの音に特に耳を澄ませるようになった。

2018年5月29日。
「LUNA SEA LIVE TOUR 2018 The LUV -World left behind-」のファイナルとなる
「LUNA SEA The Anniversary 2018 The LUV –World left behind- FINAL」と題した、
LUNA SEAの日本武道館公演が行われた。
ツアーファイナルであり、LUNA SEAの29周年を祝うライブの日だった。

今回のツアーは、大阪で観る機会を得ることが出来た。
私はその時に聴いた「BLACK AND BLUE」のあまりの素晴らしさがずっと記憶に残っていて、
日本武道館に行く時も、この曲がもう一度ライブで聴けるであろうことをとても楽しみにしていた。

「BLACK AND BLUE」は、作曲者であるSUGIZOのインタビュー記事によると、
映画『ペルシャ猫を誰も知らない』からインスパイアされた曲である。

そのインタビューを読みながら、
私は、2010年にこの映画が公開された時に、渋谷の映画館に観に行ったことを思い出した。
映画館で買ったパンフレットを、あの頃ずっと読んでいた。

映画の中で「いつかシガー・ロスのライブを観に行くことが夢なんだ」と語ったシーンが今でも印象に残っている。
イランという国の中で、自由に音楽を奏でることが許されず、好きなバンドのライブも観ることが出来ない。
自分も好きなシガー・ロスというバンド名がその口から語られたことで、より一層忘れられない映画になった。

その後、2013年。
この映画に出演していたバンドのメンバーが、ニューヨークのブルックリンで射殺されたニュースを知った。
音楽が好きで、イランから自由を求めてアメリカに渡ったら、銃社会に殺された。
あんまりだと思った。ニュースの画面を見ながら、私は絶望的な悲しみに突き落とされた。

だから「BLACK AND BLUE」を聴く時は、
どうしてもこの『ペルシャ猫は誰も知らない』の映画とその後の悲劇が頭をよぎる。

日本武道館のライブで、この曲は本編のラストで演奏された。
ギターにより耳を澄ませる私は、SUGIZOの奏でるギターのイントロを聴いただけで、
身体中が震え、ただただかっこいいという痺れる感覚と共に、その一瞬の音色に込められた想いが全身に響いて、
一気に感情が決壊した。

込み上げる涙を堪えるように、ステージの上を見上げたら、
スクリーンには、昨年9月11日に語り合い、以来多くの想いを交わすようになった、フォトグラファーの鈴木雄介による、
シリア紛争の現実をとらえた写真が投影され、嗚咽が止まらなくなってしまった。

熱いロックスピリッツを持つ5人が放つ、音楽の喜びを伝える真っ直ぐな音。
そして、360度埋め尽くされたファンによる、今この瞬間が楽しくて幸せだという感情が込められたラララの歌声が、
彼らの音をさらに彩る。

あの場所にいる全ての人による想いが、「BLACK AND BLUE」という楽曲を輝かせていた。

真っ暗闇の漆黒の影から、
光を放つ鮮やかな青へと。

2018年6月20日。世界難民の日。
この前日に発表された。グローバル・トレンズ・レポートによると、
2017年末の時点で世界で家を追われた人の数は6850万人に上る。
この数字は、第二次世界大戦後、最も多い人数である。

SUGIZOがこの曲を演奏した時、彼は地球が描かれた衣装を身に纏っていた。
その衣装の裏側には鈴木雄介の写真と共に、
2016年3月に一緒にヨルダンのシリア難民キャンプに行った、
フォトジャーナリストの佐藤慧による写真がプリントされていた。
SUGIZOがヨルダンで出会った、シリア難民の子どもたちの写真がそこに在った。

この仲間たちには世界への想いがあった。だけど、それ以上に彼らは音楽を愛しているということを私は知っている。
佐藤慧も鈴木雄介もギターを弾く。全ては、音楽という共通の愛があったからこその表現だった。

第二次世界大戦は、1939年から6年で終結したが、シリア内戦は2011年3月から7年続いている。
この事実に一体どれだけの人が気づいているのだろうか?

私たちは今、そういう時代を生きている。

国連の難民支援であるUNHCRには、日本からも様々なミュージシャンが支援をしている。
SUGIZOを始め、昨年、日本人として初のUNHCR親善大使となったMIYAVIはもちろんのこと、
彼らよりも長く難民支援をしているミュージシャンの存在を忘れてはならない。
小田和正は国連UNHCR協会のCMへの楽曲協力を始め、難民支援にじっくりと寄り添い、
浜田省吾は有志と共に設立したJ.S.FOUNDATIONという基金を通して、
昨年だけでも約5000万円の難民支援への寄付をしている。

また、難民支援に関心を持ち始め、学びたい、協力したいという想いを抱いたBAROQUEの圭をきっかけに、
昨年11月からアーティストが集い、アーティストによる難民支援勉強会が始動した。

そして、6月16日の渋谷でのイベントでは、ミュージシャンたちの行動に影響を受けた、
多くのファンが足を運んでくれた。彼ら彼女らと、大好きな音楽や好きなミュージシャンの話を交えながら、
難民支援への想いを語り合えたことは、私には本当に胸が熱くなる時間だった。

世界の現実を知ることで、恐ろしくなってしまうのではないかと思うかもしれない。
けれども、私は闇を知ることで、この世界が決して失わない光に気づくことが出来た。

希望が、希望という言葉を超えた、温かい笑顔が生まれている事実を私はこの目で見ている。
そして、その希望を伝える表現を1番感じたのは、私にとっては音楽だった。

日本武道館の終演後に、「号泣でした」と伝えたら、
優しく笑っていたその顔に、また泣き出してしまいそうになった。

心が折れてしまいそうなことばかりが起こるこの時代の中で。
あなたがいるから、私は世界が変わると信じることが出来る。
続々と集まる、音楽を愛する仲間が共に歩んでくれているから、この目でしっかりと光を捉える事が出来ている。

一人では何も出来ないから。
私はこれからも、あなたと共に歩んでいきたい。

今日は本当に幸せな日だったねと語り合える日を、一日でも多く生きていくために。
世界はこんなにも笑顔に溢れていると、あなたと共に、実感できる未来を目指して。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(♪イントロ〜35秒〜1分7秒”に合わせる)

今日、6月20日は世界難民の日です。
この日を前に、発表された最新のデータによると、世界で家を追われた人の数は6850万人。
とても残念ですが、去年よりもこの数字は増えていて、第二次世界大戦後、最も多い人数です。

2年前に、私はヨルダンで、シリア難民の人たちに会いました。
第二次世界大戦は、1939年から6年で終結しましたが、シリアでの紛争はそれよりも長く、2011年3月から7年続いています。

私たちは、今こういう時代を生きているということを、一体どれだけの人が気づいているのでしょうか?

遠い世界のことと思うかもしれません。
だけど、私がこの紛争から逃れて出会った人は、私たちと何も変わらない、日々の生活の平穏を願う人たちでした。

先日行われた、日本武道館のライブで、LUNA SEAのSUGIZOさんは、地球が描がかれた衣装を着て、
この曲のギターを弾きました。
衣装の裏側には、シリア難民の子どもたちの写真がプリントされていました。

2018年のLUNA SEAの圧倒的なバンド力を証明すると共に、
音楽の楽しさや喜びが、必ず希望をもたらすと信じられる輝きを放つこの曲を。
世界難民の日に、お届けします。

LUNA SEA「BLACK AND BLUE」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

ヨルダンで出会ったシリア難民の子どもたちの顔がプリントされた衣装を着て、日本武道館で音楽を轟かせたLUNA SEAのSUGIZOさん。6月20日「世界難民の日」に渋谷の路上で声を放った武村さん。目に見えた、2人の態度。武村さんに誘われて、何も知らなかったその世界の勉強会に参加している。その勉強会もまた、誰かの声からはじまったものだった。何気ない一言でつながって、私も今これを書いている。ここからまた、つながっていくんだろうな。それをイメージできることこそが希望だ。

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