入居者名・記事名・タグで
検索できます。

3F/長期滞在者&more

「自分の命を何に使うか?」【UVERworld「GOOD and EVIL」(2018年11月7日リリース)】

長期滞在者

IMG_4703
UNHCRの首席報道官のメリッサ・フレミングが来日した。

彼女はこれまでTEDに出演し、
2014年に「ただ生き残るだけではなく、難民が豊かに生きる手助けを」、
2015年には「500人の難民を乗せた船が海に沈んだ―2人の生存者の物語」を語った。

2018年11月14日、彼女の話を直接聴くことができる機会に呼んで頂いた。
この時に話してくれたストーリーは、シリア難民の19歳の女性、ドーハの物語だった。

シリアの紛争からエジプトに逃れたドーハは、そこで同じシリア難民のバセムと恋に落ち、
二人はスウェーデンでの新しい暮らしを目指して、海を越えるために残酷な密輸業者の船に乗ることを決意。
しかし、その航海でドーハの身に起きた悲劇は、
もしも自分が彼女と同じ経験をしたらと想像すると、涙を流さずにはいられなかった。

自分が難民支援に関わるようになってから、
様々な現場の報告会に足を運んだり、ヒューマンストーリーを聴いてきたが、
私にとっては、これまで話を聴いてきた誰よりも、
メリッサ・フレミングUNHCR首席報道官の伝え方のスキルから学ぶことがあまりにも大きかった。

世界で伝えるというのはこういうことなのか。

自分の心臓が熱くなるのを感じた。
伝えることを生業としてきた私にとって、
自分のレベルを今よりももっと上げたいという意欲が私の全身を駆け巡った。

なお、この夜、メリッサが話した、シリア難民のドーハのストーリーは、
2017年に「A Hope More Powerful Than the Sea: One Refugee’s Incredible Story of Love, Loss, and Survival」という本として出版され、スティーブン・スピルバーグ、J・J・エイブラムスでの映画化が決まっているという話があった。

彼女が伝えたことによって、世界中の人たちが知っている映画界のビッグネームが映画にする。
その壮大なスケールからも、私はとても刺激を受けた。

同時に、メリッサから伝えられた事実によって、
改めてこの世界は、今この瞬間にも一刻も早く動き出さないとさらに取り返しのつかない悲劇が起こる可能性がある、
ギリギリの状態でいることを実感した。

自分が生きている間に、一体何ができるのだろうか? 

迷っている時間も、怖がっている時間もない。
頭の中は、自分が今やるべきことでいっぱいだ。

IMG_4728
「真実よりもずっと
自分に幾らか都合の良い嘘を信じ出した未来」

この歌詞を聴いた時にどきりとした。
相変わらず、UVERworldの新曲に出会う時は、自分がその時に1番欲しい言葉が音楽の中に在る。

2年前にヨルダンから帰国した時に、
中東の人たちがどれだけホスピタリティに溢れたやさしい人たちだったかという話をすると、
「それはたまたまだよ」と言われたことがある。

私は実際にその国に行って、自分で見て、感じた。
その国の人と話し、彼らのやさしさに触れた事実があるからこそ伝えた言葉だった。
「たまたまだよ」と言った人は、中東に行ったことがない。なぜその判断ができるのか、私には疑問だった。

また、「私はヨルダンでシリア難民の方に会いました」と話していても、
「シリアに行ったんですよね?」と未だによく言われる。

私の真実が置き去りにされていくことに、戸惑う場面が増えた。

フェイクニュースという言葉を日常的に目にする機会が多くなり、
事実が多数の波に飲み込まれていくことも稀な現象ではなくなってきている。

事実が持つ力は大きい。
事実に耳を傾け思考し、事実に関心を持つことで、自分の中にその課題に対してどう向き合うかの心構えができる。
故に私は、真実を見つめていくことの意味を、決して忘れずにいたい。

「善悪よりもずっと その命何に使うか明確に 出来た者が残る」

誰かにとって都合の良い善悪の判断に振り回されることに、全く関心がない。
そこに気をとられている間にも自分の寿命は、1秒ずつ終わっていく。

40代になった私は、もう人生の折り返し地点だ。
生きる時間の限りを意識して、日々を過ごすようになった。

これが最後かもしれない。

毎日そう思って生きることは、はたから見たら、
そこまで覚悟を決める必要があるのかと厳しさを感じる生き方かもしれない。
しかし、誰かが良しと思って言ってくる生き方は、私の生き方ではない。

「僕を一人にした世界を追い掛けることは無い」

そうやって生きることで孤独が深まることがある。
けれども、自分の心がキリキリと痛むような世界の気圧の中では、私は息をすることができない。

今日も問いかける。
この瞬間の私の命を何に使うべきか。

明日私がこの世を去ったら。
私は、大切な人にこう思ってもらえるように、生きていきたい。

「あの人は、最期まで、信念のある人でした」と。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜4秒”に乗せて)

自分の命を何に使うか?
この曲の間、考えてみませんか?

UVERworld「GOOD and EVIL」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

武村さんの文章を読んでから、しばらくネット上をウロウロしたり、部屋でゴロゴロしたりしてしまった。これからのために、この瞬間をどう生きようかと考えはじめたら、よくわからなくなってきて。核心に触れたくない一心で、見て見ぬふりをしていても、必ず向き合わないといけない瞬間がやってくるのを、なんとなく知っていたが、このタイミングで飛び込んでくるとは。そんなことをグルグルと考えながら、自分と向き合い続けている武村さんの言葉を、もう一度なぞっている。

トップへ戻る トップへ戻る トップへ戻る