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3F/長期滞在者&more

「胸の痛みがあるからこそ、その先の幸せへの願いを手放さずに。」【STUTS & 松たか子 with 3exes feat. KID FRESINO「Presence I」(2021年4月14日リリース)】

長期滞在者

どうしようもない困難が続く日々だけど、ここには確かに幸せがある。

2021年4月25日。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京、大阪、兵庫、京都を対象に、3回目となる緊急事態宣言が出された。

2021年4月29日。
この日は私の教え子同士の結婚式の日だった。アナウンスやフリートーク、ラジオの個人レッスンを担当してきたゲームキャスターの長谷川優貴くんと声優としての活動もしている長谷川紫音さんの結婚式は、直前まで誓いの言葉をインターネットで募集したり、披露宴はYouTubeで生配信するなど、インターネットに強い二人ならではのオリジナリティ溢れるウエディングスタイルとなった。

今回の緊急事態宣言で、酒を提供する飲食店などに対して休業が要請されるため、結婚披露宴の場で、アルコールの提供ができなくなった。20年近く、ブライダル司会の仕事をしているが、お酒のない結婚披露宴は初めてだった。会場のスタッフから戸惑いの声が飛び交う。正直に言って、お祝いの席である結婚披露宴でお酒を振る舞うことができないというのは、あまりにも厳しい事態だと感じた。新郎の優貴くんから、乾杯はソフトドリンクで行うしかないという連絡を受けて、乾杯グラスはそのまま準備して、飲み物をジンジャエールなどの、シャンパンに見えるような飲み物を手配していただけるようにお願いをしてみたらどうだろうか? と提案した。ホテルの方々の迅速な判断のおかげで、当日は見た目にはいつものお祝いの乾杯のシーンと変わらない風景を作り出すことができた。

新型コロナウイルスの影響下において、結婚式の司会の仕事は依頼が入っては、直前に延期や中止が相次いでいる。この仕事ができる割合は、通常時の50%以下の状況が現在も続いている。

この状況の中で、幸運にもなんとか結婚式を行うことができた場で司会をしていて感じることがある。
それは、コロナ以前の結婚式よりも、幸せと喜びの濃度が増しているということだ。

新郎新婦は当日まで「果たして今、結婚式を行っていいのだろうか?」という葛藤と不安を抱えながらも、これまで育ててくれた家族や、お世話になったゲストへの真心を込めた準備を進める。式場やプランナーも、感染症対策を万全にした上で、今できる最大限のことをしていこうと懸命にアイディアを考えている。
そして、司会は、一生の思い出となる結婚式で、声と言葉でどれだけお二人に寄り添い、笑顔の時間を生み出すことができるかを必死に考え、気持ちを込めてマイクに向かう。

結婚式がお開きになる頃、ゲストからこんな声を多く聞く。

「コロナの影響で全く外に出られない日々だったけれど、今日久しぶりに外に出ることができて気持ちが晴れやかになった」
「こんな日々が続いていたから、やっと今日は久しぶりに楽しい気分になれた」
「今日は来て、本当に良かった」

来る前は不安もあったかもしれない。けれども、しっかりと感染予防対策をした結婚式からは、誰からも不安の声を聞かないどころか、100%といっても過言ではないほど、そこに集った人たちから「楽しかった!」と、キラキラとした明るさを帯びた声が飛び交う。

困難だからこそ、なんとか実現をさせよう、なんとか新しい人生の一歩を刻む二人を祝おうと、それぞれができることで、祝いの場を作り出そうとする思い。

それが、新型コロナウイルスの影響下で行われている結婚式での幸せを何倍にも大きくさせ、たくさんの笑顔を花開かせているのだと思う。

新型コロナウイルスの影響で、家で過ごす時間が増えてから、テレビドラマを見る頻度が増した。
新しいドラマが始まる2021年4月から私が今最もおもしろいと思っているドラマが『大豆田とわ子と三人の元夫』だ。
松たか子演じる主人公、大豆田とわ子はこれまでの人生で三度結婚し、三度離婚している。
大豆田とわ子は、確かに人間的に問題がないとは言えない。けれども問題がない人間なんているのだろうか? とわ子と三人の元夫たちはそれぞれの幸せを見つけることができるのか? ということを描いていくドラマである。

「問題がない人間なんているのだろうか?」
それが私がこのドラマに魅かれる理由なのだと思う。

このドラマの主題歌となっている、STUTS & 松たか子 with 3exes feat. KID FRESINO「Presence I」。初回の放送でドラマの余韻と共にエンディングに流れてきたこの曲は、抜群の歌唱力と表現力を持つ松たか子の歌声が、KID FRESINOのラップにしなやかに絡む、STUTSによる抜群にセンスの良いサウンドで、あっという間に魅了された。ドラマの中で三人の元夫を演じている、岡田将生、角田晃広、松田龍平がコーラスで参加しているのもドラマ主題歌ならではのお楽しみだ。

「流れる時に立ち止まったとしても
自分の来た道は振り返らない」

20代の頃から結婚式の司会を多く務めてきた私は、現在47歳、独身。
結婚の経験は一度もないどころか、「彼氏」と呼べるような存在がいたことがほぼない。
この話をすると、話をされた人間がリアクションに困っている姿をよく見てきた。
困られてもこれが事実なのだから仕方ない。

一人の時間を大切にしてきて、さほど不自由を感じたことはない。
むしろ誰かがいることで、例えば、番組や司会のパフォーマンスが落ちるようなことがあるほうが、私の生き方には合わない。誰かを好きにならないわけではないのだが、その人との距離感が心地よければ良いほど、恋愛はとても煩わしい。そんな話がドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』でも、とわ子の親友かごめの姿を通して描かれていく。

「僕が必ず幸せにしますので、お父さん、お母さん、安心してください」

これは、5月に司会を務めたウエディングパーティーで、新郎が結びの挨拶で言った言葉だ。
今日まで大切に育ててきた娘を送り出すご家族にとって、これほど安堵する言葉もないだろうな、と思うと同時に、こういうことを言える人がいるんだな、と自分が生きてきた世界では、ついぞ見たことも聞いたこともない現実を見て驚いたのも正直なところ。

お互いを思い合って、高め合って、それぞれを取り巻く人たちに祝福され、安心を与えるような縁の結び方。それはとても理想的だと思う。

私には人生で絶対に失くしたくないものがある。

声、音楽、言葉といったことに加えて、
不完全な私を認め、愛してくれてきた人たち。
その人たちを失くすようなことは絶対にしたくない。

自分が誰かと歩む日を決めることがあるならば。
そのときに私が大事に判断する決め手として、これまで自分を大切に思ってきてくれた人たちを、心配させない人であるか、ということだ。

「心の中に残る後悔へ
大切に何度でも呼びかける」

その手を取っていれば、今、一人ではなかったかなと思うことはある。
けれども、私には選べなかった。決められなかった。

「波が満ちて潮が引く
楽しい悲しい
その先へ」

私は泣くために生きているわけではない。
笑うために生きている。

今が一番幸せだと思う瞬間はこれまでに何度もあった。
だからこそ、この先に出会う幸せへの願いは、こんな私でも、決して手放さない。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜9秒”に乗せて)
胸の痛みがあるからこそ、その先の幸せへの願いを手放さずに。

STUTS & 松たか子 with 3exes feat. KID FRESINO「Presence I」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

もう梅雨入りかーと思っていた矢先、思いがけず素晴らしく晴れた日曜。大切な人とゆっくり食事をし、満腹になったのに昼寝をし、あまりにも晴れが気持ちいいので散歩にでかけた。立ち寄ったアイス屋さんのジェラートが最高で、今日の満足度がさらに上がった。数年前の私が描いていた「しあわせ」とは違う、今の私が思う「しあわせ」がそばにある。あの頃と違ったっていい。今日思う明日と、違ってもいい。そう思える強さをもって、進んでいく。

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