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「心がときめいた大好きなナンバー」【Kendrick Lamar, SZA「All The Stars」(2018年1月4日リリース)】

長期滞在者

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地元新宿の酉の市で熊手を買うと、年末という実感が一気に押し寄せる。

小さい頃から我が家では父親が商売繁盛の熊手を買っていて、
私もラジオDJの仕事を始めた頃から、自然に買うようになっている。
名前を入れた熊手を握りしめて、お店の人の拍子木の音に合わせて、三本締め。
「来年も良い年でありますように!」と言葉を交わす。
また来年ここで熊手を買えるように、仕事をがんばってしっかり稼ごうと気持ちを引き締める。

そして、年末といえば、
私にとって恒例となっているのが、グラミー賞のノミネート発表のチェックである。
2000年代から、ラジオDJの仲間内で毎年グラミー賞の主要4部門(※RECORD OF THE YEAR、ALBUM OF THE YEAR、SONG OF THE YEAR、BEST NEW ARTIST)の予想を続けている。
当時私は、HMVの店内DJの仕事をしていて、そのDJを取りまとめているリーダーを中心に、
ラジオDJとしての音楽知識の向上のためにグラミー賞の予想が始まり、気づけば20年近くも欠かさず行っている。

グラミー賞の予想は、とても難しい。
個人的には、世界に数多あるエンターテイメント賞の中で、最も予想が難しい賞だと思うくらいに、
毎年びっくりするようなことが起きる。

そういうわけで、このグラミー賞のノミネートが出ると、一気に来年の発表に向けて頭を悩ます日々が始まり、
同時に、その年の1年間の音楽を振り返る時間がぐっと増える。

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第61回グラミー賞の予想は、例年以上に大変である。
主要4部門のノミネートの数がこれまでの5つから8つに増えた。
5つの中から予想するのでさえギリギリまで頭を悩まるのに、さらに3つも増えるともう大混乱である。

とはいえ、発表されたノミネートを見ていると、わくわくする。
例えば、今年のアパートメントの連載で10月にピックアップした、
Ella Mai「Boo’d Up」が、SONG OF THE YEARのノミネートに入っていてすごく嬉しかったり、
自分が好きな曲やアーティストの名前を見つけると、とても楽しい。

そんな中で私の心がときめいたのが、Kendrick Lamar, SZA「All The Stars」が、
RECORD OF THE YEAR、SONG OF THE YEARと、主要4部門中の2部門など、
多くのカテゴリーでノミネートされたことだった。

毎年、iTunesでその年の好きな曲のプレイリストを作っているのだが、
私の今年のFavorite songsの1曲目は「All The Stars」だ。
Kendric LamarとSZAによるこの楽曲は、
2018年を代表する映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックアルバムとなった、
Kendric Lamar『Black Panther: The Album』からのリード・シングルである。

私が最初に聴いたのはMVを通してだったのだが、抜群のクオリティの高さと美しさ、
そして、最後に出てくる無数の煌めく星で描かれるアフリカ大陸のシーンがとても好きで、
何度も繰り返しMVを見ているうちに、曲に魅了された。

“This maybe the night that my dreams might let me know
All the stars are closer, all the stars are closer, all the stars are closer”

今年はよくこの歌詞を口ずさんでいた。

また、最近では、BBC RADIO 1のLive Loungeで、
Jorja Smith(※第61回グラミー賞、BEST NEW ARTISTにノミネートされている)がピアノの音色と共にカバーした、
「All The Stars」をBBCラジオから聴いた時に、この曲のメロディの類稀な美しさを改めて感じた。

「この曲良いなぁ」と思うと、私はすぐに伝えたくなる。
「All The Stars」も、「この曲のMVめちゃめちゃ良いよ!」「こんなカバーがあったよ!」と、
大切な音楽仲間によく話していた。

私は音楽の話をしている時が1番楽しい。

グラミー賞の予想は、音楽知識を磨くためにと取り組み始めたことだが、
気づけば、この予想に参加することで、
今の世界の音楽シーンについて、とことん語り合えることがおもしろくて、ずっと続けている。

音楽と密接な仕事をしていると、音楽の話ができる人は周りにたくさんいるように見えるかもしれない。
けれども、どこまでも話を続けられるほど、音楽を語り合える人はそんなに多くはない。
だからこそ私は、音楽をきっかけに出会い、
「この曲良いよね」「素晴らしいライブだったよ」と話ができる人は、
自分にとってかけがえのない存在だと思っている。

今年も様々な音楽に出会った。
音楽は人生の記憶と寄り添ってくれる。聴けばその頃を思い出すというのは、音楽がもたらす力の1つだ。
「All The Stars」は私にとって、聴けば2018年という時代が蘇るだけではなく、
音楽好きの仲間と交わした言葉を思い出す曲でもある。

今年も様々な出来事があった。
そんな日々の中で、大切な人と交わす、音楽から生まれた言葉の一つひとつが、私を生かしている。

楽しくて、わくわくして、どきどきして。
最高の幸せをもたらしてくれる、音楽という存在。

今年も感情に豊かに響いてくる音楽に出会えたことに、心からの感謝を。
来年もたくさん音楽の話をしよう。

そして、その瞬間に生まれる楽しさを大切に。
今を輝かせていこう。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜18秒に乗せて)

来年、日本時間の2月11日に行われる第61回グラミー賞のノミネートが発表されました。
今年大きな話題となった映画『ブラックパンサー』で、ケンドリック・ラマーが手がけたサウンドトラックアルバムから、
この曲が、RECORD OF THE YEAR、SONG OF THE YEARなど多くにノミネートされています。
私にとっても、2018年、心がときめいた大好きなナンバーです。

Kendrick Lamar, SZA「All The Stars」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

12月。武村さんが振り返ったのは、やっぱり音楽のことだった。音楽を媒介に広がる人の輪、感情、記憶。幾度となく、音楽に救われたなぁと思った今年。武村さんの文章を読んで、そんな人は私だけじゃないんだなと嬉しくなって、小さな幸せを感じた、1年の終わり。

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