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(はてな調理法)

はてなを浮かべる

a

① たっぷりの水ではてなを茹でる

沸騰する前、生ぬるい水のうちから とぽん、と手のひらほどの大きさのはてなを沈みこませる。
慌てず騒がず、じっと見守る。
しばらくするとはてなは様子を見るように そうっと水面に顔を出し始める。
弱火でじっくり じんわり温めると
はてなはやがて目を閉じる。
そうしたらもう大丈夫なので
私も一緒に目を閉じる。

b

② なにかしらの粉末を加える

はてなが十分に温まったら、棚からなにかしらの粉を取りだす。
ふりふりぱっぱとかけてやると、はてなは小さく震えてちぢむ。
量はお好みで、と言いたいところだけど
思いつめているときほど微量にしてやるのがいい。
味をつけようなんて できるだけ思わないで
これはちょっと震えてちぢんでもらうための手順。

c

③ 頃合いをみてかき混ぜる

はてなは一度浮かんで目を閉じると
あとはもうほとんどのんびりしているので、
頃合いを見てかき回してやるといい。
そうすると つられてその中をころんころん転がって
内側の芯がまんまるく整えられる。
はてなの中身は見えないので、注意と勘が必要だけど
うまく重心をつくってやることが大事。

d

④ 湯から上げ、熱をとる

もうここまでくれば大丈夫。
ほかほか湯気を上げる、水滴のついたはてなを器にあげて、
じいっとしているその姿を付きっきりで見つめてやる。
このとき、目を離さないことがコツ。
ちょっと退屈だし、外に遊びに行きたくなるんだけど
熱が冷めるまでのはてなをじーっと見つめてやるのが大事。

粗熱がとれて 時間がくれば
はてなはそうっと目を開ける。

そしたら 好きに食べてやろう

   
   
   
   
    
   
    

つづきのはてな

わかばやしまりあ

わかばやしまりあ

描いたり食べたり生きたりしている

Reviewed by
さかいかさ

「さて、タイポよ。勝負の前に腹ごしらえしようかの」
「師匠、どのお店にします。ずら〜っといっぱい、お店だらけですよ」
「ここは勝負の前に腹ごしらえをするためのフードストリートじゃからな。それにもう入る店は決めておる。このストリートで一番の名店『はてな食堂』じゃ」
「そのお店、師匠のはてな拳となんか関係あるんですか?」
「まったくない。まったくないが、なんと、はてなが食べられる店なんじゃ」
「はてなを食べる?なんですそれ。そんなもの食べて大丈夫なんですか?」
「大丈夫。大丈夫。はてなを食べるとしばらくして尻から答えが出てくるんじゃ」
「師匠!その答えはう○こじゃないですか?食べたらう○こが出るなんて当たり前ですよ。それにはてなの答えがう○こなんて、ひどい話です」
「何を下品なことを言っているタイポ。尻から出るのは卵じゃ」
「卵?卵が出るんですか。う○こじゃなくて、卵ですか。師匠はトマトのフリしたニワトリか何かですか?」
「そうじゃ、ワシはトマト化したニワトリなんじゃ」
「へぇ〜」
「タイポ!今のは、なんでやねんじゃぞ。なんでやねんチャンスだったぞ」
「へぇ〜」
「タイポ〜。ワシ泣くぞ。コケコッコーって泣くぞ」
「なんでやねん。やっぱニワトリかい」
「そう!タイポ!それ!」
「師匠」
「なんじゃ?」
「卵」
「そう、そう卵。食べると尻から卵が出てきて、それを割ると答えが入ってるんじゃ」
「師匠、ところではてなって美味しいですか?」
「美味じゃ。さあ行こうタイポよ」
二人は『はてな食堂』に入って行った。はてな食堂の屋根には大きな『?』マーク。店内から湯気が立ち、美味しそうな匂いがする。

◆◆◆◆◆◆◆◆

「師匠、美味しかったです」
「じゃろ、美味じゃろ」
「ふわふわしてて、ふかふかしてて、温かくて。ボクの食べた『天津はてな飯』は最高です」
「ワシが注文した『豚とはてなと木耳定食』の歯ごたえの良さと言ったら!美味じゃ。美味じゃ」
「デザートの『杏仁はてな豆腐』もトロトロで甘くて…。はあ〜」
「よし!腹もいっぱいになったし、タイポよ!これからひと勝負しようじゃないか」
「ガッテンであります!」
トマト師匠と弟子のタイポがやってきたのは『ギャンブル・ブルブル・タウン』。すべてが賭けの種になる町。
「タイポよ。フードストリートを抜けたら、その先はギャンブルタウンじゃ。そこではすべてが賭け事だでな。心してかかれよ」
「一攫千金であります!勝って勝って、はてな食堂で『北京はてなダック』を食べましょう」
「ワシは『フカヒレはてなスープ』をジョッキで飲むぞ」
「では、師匠、1時間後に『はてな食堂』の前で会いましょう」
「じゃな」

◆◆◆◆◆◆◆◆


一時間後。はてな食堂前に、パンツ一丁で立ち尽くす二人の姿があった。
「師匠、寒いです。身も心も財布も」
「タイポ、ワシもじゃ。というかワシら、身と心はあるが財布はもうないぞ」
「師匠、恐ろしいところですね」
「そうじゃな。恐ろしいところじゃった」
「師匠は、どういう賭け事をしてきたんですか?」
「色々やったぞ。まず話しかけてきた若そうな男とどっちが年長者か賭けて、負けた。そやつ若そうに見えて500歳じゃった」
「ハメられましたね」
「その後は悲惨じゃった。足の大きさ。手の指の数。息の臭さ。顔の面白さ。すべて負けたんじゃ。最後にはジャンケンも勝てんかった」
「師匠…」
「皆、自分の持っている特徴を最大限に活かして賭けをしておった。タイポよ。ワシには何もなかったよ。人に勝てるもんがなんにもな」
「師匠…。師匠は師匠ですよ。はてな拳99代目奥義継承者。すごい人ですよ!」
「タイポ!」
二人はガッチリと抱き合った。
「タイポはどうだったんじゃ?」
「師匠、ボクは言葉より先に顔がタイポグラフィだから、相手に考えを見破られて勝負になりませんでしたよ」
「嘘がつけないタイポには酷じゃったの」
「師匠!」
二人はまたガッチリと抱き合った。
「ところで師匠、はてな拳は使わなかったんですか?」
「使わなかったんじゃ。ギャンブルに使えそうな奥義もあるんじゃが、イカサマはいけないでな」
「師匠!」
二人はまたまたガッチリと抱き合った。
「師匠、なんだかお尻がムズムズします」
「タイポ、ワシもじゃ」
二人の尻から卵がポコンと飛び出した。
「師匠、答えが出ましたよ」
「出た、出たの。割ってみろ。割ってみろ」
二人はそれぞれ卵を割って、中に入っている答えの紙を取り出して肩を落とした。
「師匠の答えなんですか?」
「タイポよ、見ろ。ワシの答えじゃ」
「ん?え〜と、キョウ…ハ…カ…テナイ?あっ、今日は勝てない!あぁぁ〜」
「タイポのはなんじゃ?見せてみろ」
「これです」
「ギャン…ブル…ダメゼ…ツタ…イ…?うん?ギャンブルダメ絶対。あぁぁ」
「師匠、今日は勝てないってことは、明日は勝てるんじゃないですか?」
「タイポよ、それをなんと言うか知っとるか?」
「わかりません師匠」
「落とし穴じゃ」
「落とし穴」
「そこに人生の落とし穴があるんじゃ」
二人に寒い寒い風が吹いた。
「タイポ、このままではワシらはダメになってしまう。だからとっておきの奥義を使ってやろう」
「師匠、ぜひお願いします」
トマト師匠は、大きく手を上げてから目に手をあてた。
「はてな拳奥義!その十!パワーズ・オブ・テン」
するとトマト師匠とタイポの顔から両目が飛び出した。そして10秒毎に10のn乗メートルの速度で空に舞い上がっていった。
「師匠、あそこにいるボクらがどんどん小さくなっていきます」
「もっと、もっと離れていくぞ」
「すごい。すごい。ギャンブル・ブルブル・タウンを離れて…」
「ワシらのいる国を離れて、ワシらのいる星を離れて…」
「きれいですね、師匠。これがボクらのいる銀河なんですね。星がたくさん輝いています」
「そら、この銀河も離れるぞ」
「ああ、ここはいったい何処なんですか?」
「ここは、宇宙の果てじゃ」
「美しくて、静かです」
「どうじゃ、ワシらなんてちっぽけなもんじゃろ。賭けに負けたワシらなんて、この宇宙の果てから見たら、賭けに負けてないようなもんじゃないか」
「ですね、師匠。ボクたち負けてませんね」
「そうじゃ、負けてない。負けてない」

宇宙の果てから10秒毎に10のn乗メートルの速度で、二人に近づいていこう。
無数の銀河から二人のいる銀河へ。銀河から二人の星へ。そら、星から二人のいる国へ。ほら、国から二人の元へ。ほらあれ、雲の切れ間から二人の頭が見えてきた。
パンツ一丁で、ギャンブル・ブルブル・タウンを後にする二人。手を取り合って踊りながら出て行く。
笑っているのか、泣いているのか。その表情は空からではわからない。

でも、とにかく今は、がんばれトマト師匠!がんばれタイポ!

二人を応援しよう。

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