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2014年10月の相席(記/小鳩ケンタ)

イルボンと小鳩ケンタの空席商会

◇出てくるひと(順不同・敬称略)

イルボン(gallery yolcha車掌 / 詩演家):以下、車掌
小鳩ケンタ(詩人):以下、鳩
岩田萌(アーティスト):以下、岩
木田小百合(アーティスト):以下、木田

◇◆◇◆◇
【2014年10月の相席】

2014.10.25(土)~11.9(日)
岩田萌+木田小百合 「共生のモンタージュ」
yolcha内にて

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鳩:まず、若いな、と思うんですよ。(空気として)出してるもんが若い。

車掌:笑

木田:あー。

鳩:差し歯でもないでしょ?(小鳩はこの日、最近付け直した差し歯がまた抜けた)

全員:笑

車掌:でも(と岩田萌さんを見る)この前抜けた歯で作品作ってましたよ(笑)

鳩:それは幼いとき抜けるやつ?

岩:笑

鳩:それは若すぎるよね。

岩:歯列矯正で四本歯を抜いて、それをモチーフにアニメーション作って。

車掌:その作品がメッチャ良かったんですよ。

鳩:今回の作品も僕はものすごく好みです、はい。

車掌:毎回言ってる。

鳩:イヤイヤイヤ(笑)

車掌:あの作品て、だいぶ昔に抜けた歯っていう事ですか?

岩:高校生の時に抜いたんですけど、その歯をずっと取っていて、その時にしてた矯正のワイヤーがメチャクチャ痛くて、今でもワイヤーごと全部歯が抜ける夢を見ます。

車掌:抜けたもんを、何かに使ってやろうと思ってたんですか?

岩:何かすごく愛着があって。

車掌:(ふわっとした印象の岩田さんやけど)こう見えて、結講きわどい。

鳩:いけないものを感じますよね。

(中略)

車掌:どの段階で、二人一緒にやろうと決めたんですか?

木田:一番最初にやったのは、精華大学のギャラリーフロールっていう展示スペースがあるんですけど、学生で展示の募集をしてて…。

岩:何かやってみたいなあと思って。

木田:彼女が先に言い出して。

車掌:あれは公募制なんですか?

岩:公募制で、応募してポートフォリオと企画書の審査があって…。

車掌:在学中に、学内のめちゃ広いギャラリーでバンバン活動やってはったから、何か凄いなぁって思って…。

鳩:ああ。何か今回の展示も迷いが見えなくてハッキリしてますよね。何となく、の部分を感じない。

木田:自分としてはメチャメチャ迷って、こんなんなった感じなんですけど(笑)

岩:私も思った(笑)

鳩:バレてないですよ。

木田:それは良かった。

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(「共生のモンタージュ」展より:岩田萌)

車掌:あのリングノートに、ぽちょんぽちょんて(液体が)落ちてるの(岩田さんの映像作品の中で)見ました?

鳩:見てないね。

岩:見てないですか(笑)

車掌:説明してもアレですけど、三つモニターが並んでて、一番奥の縦型の画面の中にリングノートを開いた映像があって、ちょうどリングノートと同じ色の液体がぽちょんぽちょんと落ちて、ノートの上にミルククラウン(※注1)がパアッと広がるっていう映像があって…。

鳩:あー、ありましたありました。

車掌:あのミルククラウン(撮影)どうしてんのかなと思ったら…。

鳩:うん。

車掌:1個1個、クラウンの広がる様子を粘土で作ってるみたいで…。

鳩:ほー。

岩:飾ろうと思って持ってきました。(カバンから5センチ程の白いミルククラウンを一つ出す)

鳩:そういうフェイクなもんも入れてると。

岩:案外雑なんですけど、映像にすると何となくそういう風に見える。映像っていいな!って。

車掌:ふふふ。これって何個ぐらい作るの?

岩:このポチャンてなって消えるのに、12個ぐらいですね。

(中略)

車掌:僕もまだ二人の事をあまり把握してないんですけど…。僕の中では木田さん(二階のインスタレーション制作)は比較的サバサバしてるというか…。岩田さん(一階の映像制作)のほうは割とフェテッシュな印象というか(笑)

鳩:(二人は)違うドキッとさせ方をしますよね。

岩:自分としては、そういうフェテッシュさよりも「何でも無い」というか、そういう感じになりたくて…。

鳩:そうやって行けば行く程、フェティッシュになって行きそうですけどね(笑)

車掌:彼女はもっとシンプルに行きたいんですって。

岩:削ぎ落されたいんです。

車掌:僕は僕でね、フェテッシュな世界でいいと思うんですけどね。そこは良さでもあると思うんですけどね。

鳩:狙ってないのも同時に伝わって来るから、いいですよね。

車掌:コンセプチュアルな割に、狙ってないですよね。

木田:緻密にコンセプチュアルにやろうと思っても出来ないんで…。

鳩:でもバックグラウンドにはそういう予感みたいなものもある気がして、ゾワッとするんですけどね。多分書いたらあるんだろうと…。

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(「共生のモンタージュ」展より:木田小百合)

鳩:あれでしょ? 色んな人に色々言われても、二人でいる事でノラリクラリとかわして来てるんでしょ?(笑)

全員:笑

車掌:岩田さんは割と言われた事を気にするみたいなんですけど、木田さんは動じないんですって。

鳩:でしょうね(笑)

木田:そんな事はないですよ! けっこう私は内面でグサッと来るんですけど、出せないんですよ…。引きずります(笑)

鳩:あ、そうですか。

岩:でも(木田さんが)作るものは人に絶対影響されない感じがする。偉いな、と思う。

(中略)

車掌:最近ヨルチャは雑貨展とかが続いてて、余計に新鮮味が今回の展示ありました。あ、ギャラリーやってたんやな!と思い出した。

岩:展示しやすかったです。普通のギャラリーだと部屋とか区切られてないんで。映像もやりやすい。

木田:前の時が完全にホワイトキューブで、配置とか苦労しました。

鳩:映像ってそうですよね、ホワイトキューブでやるの大変そう…。

車掌:映像で無かったとしても、二人に共通する「密室感」がここに合ってるというのはあるよね(笑)

(中略)

車掌:でも、二人で続けて行こうって訳ではないんでしょ? たまたま一緒に始めただけで。

木田:どうなんでしょうねぇ?(笑)

木田:私はもともと、アニメーションとかやりたくてやってたんですけど、彼女に誘われてインスタレーションやってみたら結講面白くて、2回、3回と…。

車掌:岩田さんは一人でやろうとは思わなかった?自信が無かった?

岩:ギャラリーフロールでやりたいなって思った時に、広いんで、一人っていうのは考えてなくて、他の同級生も誘おうかなって考えてたんですけど…。木田さんとは仲良かったけど何も一緒にした事無かったんで、卒業したら機会も無いし最後だと思ってたんで一緒にやろうと。思い出的な(笑)

車掌:連続三回でしょ?

鳩:その間ソロ活動は無く?

木田:全く無く。

車掌:もうそろそろ一人でやりたいっていうのは無いん?

木田:一人でやるなら、私ちょっと別の事がしたいなって思って。また映像作りたいなっていう気持ちもあって…。

鳩:(岩田さん)相方さんが一人で作り始めたら、「ハッ!」って思いますか?

岩:木田さんが作りたいのはアニメーションなんで…。でも、他の展覧会とかやってたら「ハッ〜って」思っちゃうかもしれません(笑)

全員:笑

岩:でも、いつかそういう日が来るのだろうと…。

車掌:やって来てこそでしょう(笑)

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(「共生のモンタージュ」展より:岩田萌)

車掌:岩田さんは、この前もちょっと話したけど…商業的な方にも興味が?

岩:(笑)仕事としてやってたら楽しそうだな、と憧れた事はありますけど、やっぱり展示が好きで。

車掌:展示が好きというのは、どういう感じですか? 人に見てもらう事?

岩:もともと展覧会見るのが好き、美大生ってみんなそうだと思うんですけど。それで展示をやっても、こんなに楽しいんや、と。制作とかはつらいんですけど、出来上がるものがパソコンの中とかだけで終わるのと違って、場所があるというのが。

木田:展示はここでしかないというのが楽しい。

車掌:じゃあ、今後やってみたい場所とかは? それが可能か不可能かは置いといて。

岩:美術館とかは、何か違う気も(笑)してて。

鳩:あ、違うんや(笑)

全員:笑

岩:美術館も映像って難しいですよね。

鳩:でも国立国際美術館とかで映像のでっかいのやってたの見たんですけど。

車掌:美術館じゃ無かったら何処ですか? 外国?

岩:外国もあんまりビジョンがない(笑)どこがいいですかね?

車掌:僕からはいっぱい言えるけど(笑)じゃあ、どこでやりたいんやろうね、トイレとか?(笑)

鳩:美術館、合いそうですけどね。

岩:美術館でもやりたいな、と思うんですけど、美術館ばっかりでやる人になりたくないなと(笑)

鳩:いやいやいや(笑)

岩:毎回ばらばらな所でやりたい。

鳩:多分、美術館でやる人はどこでも出来るんでしょうけどね(笑)そこですればいいんじゃないですかね、まず(笑)

岩:あー。

鳩:トイレで何回やってても美術館行けないからね。美術館行けたら、トイレもやれる(笑)

車掌:美術館でやれたら、どんなトイレでも出来る!(笑)

岩:まずはそこを征服してから(笑)

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(「共生のモンタージュ」展より:岩田萌)

鳩:活躍して欲しいですよね。

車掌:して欲しいですね。で、いっぺん別れてまた戻って欲しい(笑)

全員:笑

鳩:木田さん、アニメーション作っても、またインスタレーション作りたくなる気がしますけどね。

木田:そうでしょうね。思います。

(中略)

鳩:時計が1秒間に1時間進むという(岩田さんの)映像が、自分でもそんな感覚があり、面白いと思いました。

車掌:40だしね(笑)早いんじゃないですか(笑)

鳩:そうなんですよ、歯が抜けても20代とは悲壮感が違う。

車掌:でも、40は大人のハタチですよ!

全員:笑

鳩:今までイルボンさんから聞いた中で一番面白い(笑)抜けたのが見えるから笑わさないで下さいよー。

岩:大人のハタチ(笑)

鳩:今イルボンさん、大人の16ぐらいの感じですか?

車掌:子供の40(笑)気分的には。

全員:笑

車掌:精神的には子供を引きずってる訳やけど、40ぐらいのギャップを感じてる訳ですよ。若い人に。

鳩:お二人は、同世代に比べて幼いとかいう悩みが無さそうな感じですね。

岩:めちゃめちゃ今、悩んでますよ。木田さんが就職して大人になってゆくから。

車掌:会うたびに岩田さん、わたしまだ学生引きずってるから、って言いますもんね(笑)

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(「共生のモンタージュ」展より:木田小百合)

鳩:あのね、書き起すに当たって、もうひと話題したら終わろうと思うんですけどね。

車掌:もうひと笑い?できるかな〜。

鳩:話題。

車掌:あー、話題。(笑)

全員:笑

鳩:二人で、よく遊ぶんですか?

木田:遊びます。

鳩:どうやって遊ぶんですか?

岩:旅行で色んな変なとこ行ったり。

木田:最近、沼津の深海魚水族館っていう所に行ったり。

岩:めっちゃ見たかったメンダコ(※注2)っていうファンシーなやつ、耳が生えてるやつを見に行ったんですけど、夏は禁漁期間でそいつを穫っちゃいけないらしく、見れなかったんです。

車掌:育てて見せるんじゃなくて、穫って来るの?(笑)

木田、岩:デリケートなんで!!

鳩:いけす的な感じで? 合法?(笑)

岩:合法(笑)

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(「共生のモンタージュ」展より:木田小百合)

※注1 ミルククラウン: 牛乳などの少し粘性を持つ液体において、その液体を薄く塗った平たい容器にその液体を一滴落とすと、美しい王冠状の形を形成する現象。(ウィキペディアより)
※注2 メンダコ:深海性のタコであるため、詳しい生態は不明。普通に見られるタコの仲間とはかなり異なった外観をしている。(ウィキペディアより)

(文責:小鳩ケンタ)

小鳩 ケンタ

小鳩 ケンタ

詩人/コバトレーベル主宰

イルボン

イルボン

詩人/詩演家。またはgallery yolchaの車掌。
ジンジャーエールと短編映画と文化的探検が好物。

2006年、第一詩集「迷子放送」を上梓。
2007年、自らの詩の語りとパフォーマンスに半即興的に音を乗せる、活劇詩楽団「セボンゐレボン」を結成。
2010年、大阪で多目的ギャラリー「gallery yolcha」を運行開始。

※gallery yolchaは、大阪・梅田近くの豊崎長屋(登録有形文化財)に位置する特殊な木造建築です。この屋根裏部屋とバーカウンターがあるギャラリースペースを使って、共に真剣に遊んでくれる作家を常時募集しております。詳細は上記リンク先をご覧下さい。

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