長期滞在者
先日、仕事の休みの日に、ひっそりとした韓国料理店に足を運んだ。山間の人気が少なく、そこに店があることさえわからないような場所。以前より、連れの母がどうしても連れて行きたいと言っていたお店だった。冷麺と美味しいチジミをいただいた。 そこで、韓国からきたというお店のママさんと出会った。わたしは、基本初対面の人とはそれほど多くのことは語らない。だけれど、ものを言わなくても、なんとなく理解してくれる人とい…
当番ノート 第22期
車に撥ねられたが「大丈夫です」と言って起き上がり、カゴが凹んだ自転車を引いて帰ったのは10歳の夏だ。一人だった。 そう実は私、人間ではありません。 という話ではない。思うに、そのとき母や友人がそばにいたら大声で泣いたのだ。手を差し伸べられるまで地べたに倒れたまま立ち上がらず「車にぶつかった」という状況に合わせた悲惨さを、体感以上に体現したはずだ。 声に出すと、感情と感覚が増幅する。締め切り前など、…
当番ノート 第22期
#5 音とイメージ(2) 音と言葉を考えるとき、韻は大きな要素の一つだ。けれど昔ながらの詩歌の世界では日本語での押韻は欧米の言葉に比べ影を潜めている。古くは漢詩の頃から韻の文化は知られていて、日本語でもこれまでに多くの人が挑戦してきただろうし、昭和期にはマチネ・ポエティックという定型押韻詩を作ろうという試みもあったが、いずれも定着はしなかった。日本語は一つの子音に一つの母音という単純な音節構造のた…
長期滞在者
皆様はじめまして。クボと申します。友人に誘われ、このウェブマガジンに参加させてもらうことになって、私はすこし困っていました。様々な活動をされている方が日常的な思いや思考を綴る場所という説明を受け、さて、自分はここで何を書けるのだろうか、と。 この十年来、私は文化/社会人類学という学問をやっています。日々感じること、思うことの大半は研究とつながっていきます。例えばTVをつけバラエティ番組をだらだら…
当番ノート 第22期
去年の夏、うちのアトリエにある坪庭でイラガの幼虫(毛虫)が大量発生しました。今年もやつらはそこにいます。今年もこの季節がやってきましたね。 第5回となる本日は、絵のモチーフに多い星とプラネタリウムのイベントについて。 前回でも書かせていただいたとおり、個人的に描く絵、repairで描く絵もまずストーリーを考えてから絵を描き始めます。自分の中でストーリーを持ち、頭の中の辻褄を整えてから描かないと、や…
当番ノート 第22期
今から考えれば、僕にとって、それは偶然ではなく、必然としか思えない、出会いでした。 荒川修作 彼に出会わなければ、僕はこんな生き方を選ばず、人間らしく生きていたでしょう。 荒川さんに出会ったことで、僕の生きかた、世界に対する考え方は、根源的に変わってしまいました。 荒川さんは世界的な芸術家であり、建築家です。 大学の恩師が「有名な建築家の安藤忠雄だって、荒川修作には、逆立ちしたって、かなわない」と…
当番ノート 第22期
東北から台風直下の九州へ帰ってきました。 外がゴオゴオ、ガタガタとなる音を聞きながら、今日は記事を書いています。 神社での居候の話は、来週ちょうど高千穂の神社にてお篭もりをするので、その際にお話しようかと思います。 そのあたりから、作品への感情や考えの話も一緒に。 今回、東北では山形、福島、宮城とまわっていました。 震災の被害のあった場所もみながら、塩竈に立ち寄り、お寿司屋の若旦那を紹介いただき、…
当番ノート 第22期
Claude Monet 《Saint Lazare》, 1877. (修道院を改装したパリの科学技術博物館。交通手段の棟。) Voyage:旅。距離のある場所への移動。男性名詞。 Louis Antoine de Bougainville(ルイ・アントワーヌ・ドゥ・ブーガンヴィル)は、18世紀フランスの探検家。 1766年、学者達を連れて、世界一周の旅に出る。 マリーアントワネットが”Japon…
当番ノート 第22期
ある日わたしは一週間のロシア旅行を終えてトーキョーに戻ってくる。トーキョーはロシアのモスクワから飛行機でだいたい10時間、愛媛の伊予三島から高速バスでだいたい10時間の距離にあります。愛媛とトーキョーをつなぐバスの10時間以上をわたしはほとんど眠ってすごすのだけれど、モスクワからの10時間についてはぼんやり窓の外を見てすごしました。空のきれいなグラデーションを見た。飛行機がぐんぐん夜明けに飲み込…
当番ノート 第22期
バラが100本送られてきたけれど、その人が別の人に101本贈っているのを知っているので素直に喜ぶことが出来ない。 というのはフィクションであり、今のところバラが100本送られるようなロマンチックな人生ではないようだ。 兎角、私の喜びは私の経験上でのみ完結するものではなくなってしまった。初めて得た一等賞であってもみんな仲良く一等賞と知ったなら、勿論そんなものに意味は無い。金色のメダルが欲しいのではな…
当番ノート 第22期
#4 音とイメージ(1) 眠れないときは羊を数えなさい、と言われる。子供の頃は頑張って数えたが、飽きて目が冴えるばかりで効果があったような気はしない。羊を数える習慣が元はイギリスから来たもので、羊のフワフワしたイメージやのどかな光景、繰り返しによる催眠効果の他に、英語ならではの仕掛けがあると知ったのは大人になってからのことだった。sleepとsheepはよく似た発音のため、one sheep, t…
当番ノート 第22期
夏も終わりに近づき、夜も少し涼しくなりましたね。皆様、元気にお過ごしでしょうか? 僕はというと、ここ数日食中毒で寝込んでしまいました。いや〜、えらい目にあいました。 第4回となる本日は僕のもう一つの活動である、絵と音と言葉のユニット「repair」についてご紹介させていただけたらと思います。 「repair」は先に言った通り、「絵」と「音」と「言葉」を使った「芸術活動」を目的としたユニットです。メ…