長期滞在者
銀座でギャラリーも運営している会社の専務さんが照明器具のリニューアルでうちの会場を見に来られました。 うちで使っているのは大した器具でもなく、LED電球に変えてからは、毎年のように新しい球をテストして、より良いものに交換している程度で、そんなに参考になるようなものはあまりないと思いますが、日頃考えていることを率直にお話ししたりしました。小伝馬町移転にあたり照明器具は、会場全体を均一に照らす面光源は…
当番ノート 第35期
「地獄寺」―あの世とこの世の境界にある、人間の本音が隠れている場所― ◆地獄めぐり day 22 この日は丸一日移動日であった。ここにきて、これまで一日も休まずに続けてきた地獄めぐりをはじめて休んだのである。 最終目的地はペチャブーン県であったが、一日中バスに乗ってもいっこうに辿り着かなかったため、急遽途中のピサヌローク県に宿泊した。いつもは心配なので前日までにネットで宿を予約するのだが、予定…
Mais ou Menos
——————– DEAR: Pちゃん 今日は遅くまで残業お疲れ様。しばらく残業しなくてもいいように頑張ってたけれど、たまにはこういう日もあるね。 私はここ数日、具合があまり良くなくて少し落ち込み気味。病気になってからPMSが以前よりひどくなった気がする。もっと若い頃は体が痛かったけれど、ここ数ヶ月は心が痛む。これも…
当番ノート 第35期
こんにちは!今日は、会社の下のディーンアンドデルーカからお届けしはじめます。うちのビルの1階には、スタバとディーンアンドデルーカが向かい合わせで入っていて、いつも10:1ぐらいでだいたいスタバにコーヒー買いに行くのだけど、でもディーンアンドデルーカはシーズナルのドリンクがかっちょいいので(「ラムレーズンクリームラテ」とか「ソルティレモンフラッペ」とか)時々、マーケティングリサーチ気取りで来店する。…
当番ノート 第35期
十一歳の頃、「永遠」に襲われた。 最初のきっかけは音楽の授業で習った、リコーダーのためのある練習曲だったと思う。 遠いどこかの牧歌的な夕暮れの風景を連想させる、どこか物悲しい曲だった。 曲名は忘れてしまったけど、その旋律だけがずっと頭を離れずに残っている。 当時考えていたことと、その曲から思い浮かべたイメージとが分かち難く結びついたとき、 その隙間を通りぬけて「永遠」は入り込んできた…
長期滞在者
ついにやって来てしまった… ほぼ2ヶ月くらい前から心と体の準備をして来たにもかかわらず、 いざそれが現実のものになると、やっぱり相当なインパクトである。 10月が終わると同時についに冬時間に戻ってしまった。 冬時間、というか、これが本来の時間なわけだが、 時間変更直前は大体18時ごろに日が暮れかかって来て、 やっぱり日が短くなって来たんだなあ、とか思っていたら、 変更後はいきなり18時はほぼ真っ暗…
当番ノート 第35期
卒業式の翌日の昼下がりに兄のもとを訪ねた。兄に会うのは五年ぶりだった。携帯電話のメッセージで送られてきた兄の現在の住所は意外なことにぼくの通っていた高校から近い場所だった。ぼくがクラスメートや天文部の仲間たちと何度も買い食いをしたコンビニ。そのすぐ横にある小さなアパートの二◯二号室が兄の住まいだった。予め伝えられていた通り玄関の扉の鍵は開いていた。室内にはぼくの記憶にあるよりも更に痩せて髪も伸び…
画家と7人の肖像
彼はきっと、あっという間に「知らない人」になる。 Photo by Kazuki Hiro このコラムを打っている最中、私は31歳になった。 ロンドンの15時に日本は24時を回り、私より先に私の誕生日を迎えた人たちから次々とお祝いの言葉が届いた。23時59分、送信ボタンに手を触れぬよう秒針を見つめる、あの1分間を知っている。誕生日の祝いは、私という存在が彼らの日常に忘れられていない証拠のようで愛お…
風景のある図鑑
銀 : argentum 銀は、原子番号47の金属元素。元素記号は Agです。 銀は可視光線の反射率が全ての元素の中で最大、つまり、最も明るい元素なのです。 この白く輝く特質から、銀は古来より純潔、女性の象徴とされてきました。 しかし、純潔は失われるものです。 銀は硫黄に晒されるとすぐに硫化し、黒ずんでしまいます。 この点で、普遍的な輝きを持つ金に劣るとも考えられてきました。 研磨された銀の表面は…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
私が初めてひとり暮らしをしたアパートは東京のはずれにあって、そこには私を含め同じ女子大に通う5人の女の子とひとりの外国人男性が住んでいた。 彼はそこに暮らす大学の先輩と同棲していたのだけど、まったく「どういう関係なのか分からない」。恋人というわけでもないらしい。まだ18歳になったばかりだった私は曖昧な関係のふたりを前に動揺したのを覚えている。 初めて顔を合わせたのは引っ越しが済んで一週間くらい経っ…
当番ノート 第35期
「地獄寺」―あの世とこの世の境界にある、人間の本音が隠れている場所― ◆地獄めぐり day 16 地獄めぐりもいよいよタイ最北部へ。この日の目的地はワット・ナンターラームという寺院だ。前回綴った自然の脅威と隣り合わせの宿からバスで2時間、峠道を越えファーンという街に辿り着く。しかしバスターミナルなどはなく、市場のようなところに降ろされた。 そこから歩くこと30分、道路沿いにあるワット・ナンターラ…
当番ノート 第35期
こんばんは!ハロウィンが終わり、すっかりクリスマスですね(今日は新宿ルミネのスターバックスからお届けします)私は割合、クリスマスが好きだ。特に意識した訳ではないが、ちょうど10年前にクリスマスの前後半月をニューヨークで過ごしたことがあり、それからというもの毎年、街で洋楽のクリスマスソングが聞こえ始めると、あの寒くて大きな街のこと、イブの日にケンタッキーを食べる風習がないどころかお店もぜんぜん開いて…