太陽が昇ることもなく
いつでも夜であるその森で、
その樹はいつもひとりぼっちでした
その樹以外の周りの木々たちはすぐ近くに友達がいて
おしゃべりができるから朝が来ずとも
雪が降り続けようともさびしいと思うことはありませんでした
けれども、その樹にはそばに話かける仲間もおらず
暗い闇のなかでいつも闇の天井から降ってくる雪を
毎日ひとり見つめていました
その樹のことを遠く遠くから見守っていた星たちがいました
僕たちが話し相手になってあげようと、星たちは話し合いましたが
星たちはその樹からとても離れて暮らしていましたので
その樹に星たちの声は聞こえません
声が届かなくともその樹がさびしい気持ちにならない方法を
星たちは考えました
星が声を出す以外にできることは
自分たちの輝きで
樹を照らしてあげることだけでした
星の中の一人が力を振り絞って
自分の輝きを増しました
するとどうでしょう
光がその樹の悲しみをみるみる吸い上げてゆきました
暗い中、雪に埋もれしなだれていた葉っぱは
葉の先までしゃんとなりました
そして、それまで樹からは見えないくらいの小さな星だったのに
樹の悲しみを吸い上げれば吸い上げるほどに
星はまばゆい光を放ち、その樹からもしっかり見えるくらいに
大きな星になりました
そして樹自身も、葉に光を帯びるまでになりました
それからというもの
その樹は周りの木々たちからうらやましがられるようになりました
そして夜の森の中でただひとり
暗い森を大きく照らす、ゆいいつの存在となったのでした