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2F/当番ノート

「今、新たに温かな愛が込められています。」【HYDE「DEPARTURES」(2015年12月16日リリース)】

当番ノート 第24期

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パソコンの画面を見つめる。
画面に写る楽曲の秒数を見ながら、キーボードを叩いて文字を綴る。
この連載の原稿を書いていて、ふと気づいたこと。

曲紹介でこんなふうに言葉を書いたのは初めてだ。

私の曲紹介の言葉は、手書きだ。
CDプレーヤーのタイムカウンターを見ながら、紙に曲紹介の言葉を書く。
キューシート(ラジオ番組の進行表)に書かれた、
アーティスト名と曲名、イントロの秒数、完奏の時間が書かれた部分の余白に、
赤色のペンで曲紹介の言葉を記していく。

私の手書きの曲紹介の原点。
高校時代のお昼の校内放送の原稿を書き留めたノートが今も手元に残っている。

ちなみに高校生の私は、当時こんな言葉でDJをしている。

「今日はアーティスト特集、Dreams Come Trueをお送りします。
実は先日行われた代々木競技場でのライブに行ってきたんです。
タイトルが“※史上最強の移動遊園地”ということもあって、
私が今まで観てきたライブの中の一番に入るんじゃないかってくらい素晴らしかったんです。
というわけで、今日お送りする曲は、そのライブの曲順通りにかけていきますね。
少しでもその時の雰囲気が伝わってくれると嬉しいです。」

(※1991年6月15日、16日、史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND ’91、
国立代々木競技場第一体育館)

「私は本当にライブ好きで、3年生のくせになんか行きまくってます。
広い会場で全然知らない人達ばかり集まってるのに、
なんか一致団結みたいなのが好きでやめられないんです。」

基本的に言っていることが今と全然変わらなくて、自分で笑ってしまった。

そして、お昼の校内放送番組のオープニングからエンディングまでの原稿と共に、
その日にかけた曲がずらっと書いてある。

渡辺美里、松岡英明、GRASS VALLEY、Dreams Come True、
U2、BON JOVI、Guns N’ Roses・・・。

その中には、TM NETWORKの名前が頻繁に出てくる。
このノート自体が、TM NETWORKの歴史的名盤『CAROL』から派生したグッズであることからもわかるように、
高校生の私は、TM NETWORKが大好きで、特に小室哲哉には尊敬の念を抱くほどに憧れていた。

【アパートメント】CAROL ノート 2
この連載の2回目の原稿を書き終えた明け方。
PCを閉じようとしたその瞬間、私のTwitterのタイムラインに、
VAMPSの特別番組(2013年8月10日放送、25th ANNIVERSARY FM-FUJI presents “VAMPS LIVE2013” 「BEAST PATY」)でDJを担当した時に、技術として入ってくれたスタッフのツイートで、
HYDEがglobe「DEPARTURES」を歌ったということを知った。

すぐにリンク先のYOU TUBEでの試聴音源を聴いた。
イントロ17秒が長く感じるほどに、どんな声で歌っているのかドキドキした。
そして歌い出し。腰から力が抜けるような、たまらない歌声。
心が溶けた。

globe「DEPARTURES」。
1996年1月1日リリース。冬に発売された曲。
globeのシングルの中で最も売れた作品であり、売上は200万枚を突破した大ヒット曲である。
ちなみに、その年が終わる頃、
1996年12月12日には、L’Arc~en~Cielのアルバム『True』が発売されている。
彼らにとって、初のミリオンセラー達成となる作品である。

1996年の私といえば、3月に大学を卒業して、アルバイトをしながら、
ディスクジョッキー事務所の中で開かれていたスクールに通い、
ラジオDJを目指してレッスンを受けていた時代。

小室哲哉が大好きだった私は、彼が関わる楽曲は常にチェックしていた。
もちろんこの「DEPARTURES」も発売と同時に手に入れて、何度も聴いていた。
CDの売上ランキングを紹介する深夜のテレビ番組では、
ずっとこの曲が一位に君臨していた映像が私の記憶に残っている。

HYDE「DEPARTURES」を聴いてたまらなくなった私は、
globe「DEPARTURES」を改めて聴いた。
すっと惹き込まれるように、心がときめいた。

一体どれだけ多くの人が、この曲に思い出があることだろう。

ラジオの曲紹介をしていて、最新の曲を紹介する時はその曲の良さにポイントを置いて言葉を選んでいくが、
大ヒット曲を紹介していく時は、視点が変わってくる。

それを学んだのは、Fm yokohama「THE RANKING」を担当していた時。
桑田佳祐をゲストに招いての、サザンオールスターズのリクエスト特集。
送られてくるリクエストには、ほぼ全てその曲への思い出が記されていた。

「曲が人の心で意味を持つ」

これは私が心から信頼しているミュージシャンの言葉であり、
自分の中でも大切にし続けている言葉だ。

ただその当時ヒットしていたという「記憶」だけでなく、
自分の中での思い出という「意味」を持つ楽曲。

「DEPARTURES」という曲を紹介するにあたり、
私はリスナーがこの曲に抱いている思い出に寄り添うように伝えたい。

そして、HYDEの「DEPARTURES」を聴いていて、
あ! と思ったのは、女の声と男の声という違いだ。

同じ歌詞が女性の声で歌われることと、男性の声で歌われることで、
まるで一つの恋愛物語が、対になって描かれているような絵が浮かんだ。
それはまるで時を超えて、あの頃を振り返る歌のようにさえ響く。

小室哲哉は日本を代表するサウンドメーカーであり、
曲作りのクオリティの評価は絶大であるが、
もう一つ、彼は優れた作詞家であることも忘れてはいけないと私は思う。

彼が書く歌詞の言葉はすっと自分の中に入ってくる。
わかりやすい。覚えやすい。共感しやすい。

この曲のサビのメロディと共に、
「♪どこまでも〜」とさらっと歌える人が多いのも、
彼の言葉の選び方のセンスにあるように思える。

「あなたが私を選んでくれたから」

HYDEがこの歌詞を歌う声を聴いていて、
まるで、19年を経て一つの物語が完成したようなそんな気持ちにすらなった。

HYDEの「DEPARTURES」には凛とした冬の寒さを感じると共に、
揺るぎのない愛を感じる。

今なら、あの頃よりも、温かくあなたを愛せるだろう。
私は自分の声に、そんな想いを込めて伝えてみたい。

小室哲哉、HYDE。
私にとって、共に憧れがあるアーティストによる曲なので、
イントロ17秒に息が止まりそうなくらい、緊張することは間違いない。

1996年の冬に発売された曲が、
2015年の冬に、HYDEという素晴らしい歌声で蘇ったことで、
この曲にまた一つ特別な意味が加えられていくことを願って。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜17秒に乗せて)

12月16日に『#globe 20th –SPECIAL COVER BEST-』が発売になりました。
あの頃が蘇ってくるメロディに、今、新たに温かな愛が込められています。
この冬の特別な一曲になりそうな予感がするナンバーをお届けしましょう。

HYDE「DEPARTURES」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
中村むつお

僕の時代はラルク派かグレイ派か?なんて言われてたけど、邦楽基準のグレイとは違い、ラルクはデビューシングルからSmithのPVを彷彿させたり、歌い方もJapanのデヴィッド・シルヴィアンから影響させるなど完全な洋楽基準なバンドだ。
そのボーカルであるハイドはJPOP界の覇者となった今、小室哲哉というJPOPの歴史その物を変えてしまった怪物の曲を歌うってとても面白いと個人的には思います。
何より、武村さんの高校生時代の話がとても興味深い。そんな昔からラジオDJをしていたとは(しかもかなり本格的に)…今や夢を叶え、グレイトなラジオDJとなった訳で、その当時の同級生は毎日武村さんのラジオDJが聴けてラッキーだったんたんですね。

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