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2F/当番ノート

「来年の平和とあなたの笑顔を願って。」【ストレイテナー「NO 〜命の跡に咲いた花〜」(2015年7月15日リリース)】

当番ノート 第24期

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ストレイテナー「NO 〜命の跡に咲いた花〜」。
今年はこの曲と生きたと言っても過言ではない。

ストレイテナーを初めて知ったのは、ラフォーレミュージアム原宿で開かれたイベントライブ。
そのイベントに出ているART-SCHOOLを観に行き、彼らの出演が終わって帰ろうかと扉に手をかけた瞬間、
私の後ろで鳴っている音に惹かれた。
えっ?何??と思って振り返ったら、ステージにはヴォーカルとドラムのみ。
えっ?二人??と驚いた。そのまま最後まで観て、なんだか無性に気になって、
名前を忘れないために音源を買っていこうと、
300円で売られていた、ART-SCHOOL&ストレイテナー SPLIT CASETTEを買った。
私が初めて手にしたストレイテナーの音源はカセットテープ。
2002年のことだった。

ラジオで最初にストレイテナーの曲紹介をしたのは、2003年10月。
メジャーデビューシングル「TRAVELLING GARGOYLE」。
Fm yokohama「MORNING STEPS FRIDAY」、朝6時45分くらい。
イントロがスタートして、マイクのスイッチがオンになるカフを上げる。
わずか11秒に「飛び立て!」そんな想いを込めて曲紹介の声を乗せた。
この時にランドマークタワーのスタジオから見えた横浜の景色を今もはっきり覚えている。
朝の青い空に、GARGOYLEが舞った。

2004年1月。
メジャーファーストアルバム『LOST WORLD’S ANTHROGY』がリリースされたタイミングで、
「NEXT BREAKERers」(FM愛媛、福井放送などで放送)にて、
ストレイテナーのゲスト収録を行った。メンバーに初めて会ったのはこの時。
収録が行われた場所は、昭和一桁に建てられ、
第二次世界大戦を乗り越えたビルの中のラジオ番組の制作スタジオだった。

その後、渋谷クラブクアトロで、初めてワンマンライブを観た。
Underworld「Born Slippy」をカバーしてびっくりしたことが印象に残っている。
それから今に至るまで、彼らのライブからずっと目が離せない。

私がラジオDJになろうと思ったきっかけが、
高校生の時に観たインディーズバンドのライブだった。
世の中には、インディーズという世界でかっこいいバンドがたくさんいるんだ!、
そんなかっこいいバンドを紹介したいと思って、DJを目指した。

だから、ストレイテナーというバンドを応援し続けているのは、
私がラジオDJとして一番やりたいことを続けている証でもある。

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“戦後70年”
私はラジオから何を伝えられるだろうかということをずっと考えていた。
そんな時に、ストレイテナーが戦後70年をテーマにしたシングルをリリースすると知った。

ストレイテナーは、これまでそういった発信は積極的にする方ではなかっただけに、
「反戦歌」を出すという音楽ニュースに、まさかこんなことが起きるとは! というくらいに驚いた。
でも同時に、私の胸には、好きなアーティストに今年の夏に向けて行動して欲しいという願いがあったので、
心から嬉しかった。

一体どんな曲なのか、聴く前から泣きそうな気分になっていた私のところに、
「NO 〜命の跡に咲いた花〜」が届いたのは、5月のことだった。

それは想像以上に優しくて、温かくて。
楽曲に込められた祈り、音楽への愛が、魂にどんどんどんどん流れ込んできて、 泣きじゃくった。
タイトルにもなった「NO」の言葉は、一番最後に優しく歌われていた。
とてもらしい歌声で。

何があっても絶対にこの曲を紹介したいと思った。
それこそが“戦後70年”で私が伝えられることだ。
その想いを「10代ラジオ」を共に制作したディレクターに話した時、
彼女が言ってくれた言葉がこれだ。

「この曲はこの夏、武村さんが紹介するんですよ。」

そこから一気に、FM-FUJI戦後70年特別番組「THINK OF TOMORROW」の企画が始まった。
番組タイトルの「THINK OF TOMORROW」は、「NO 〜命の跡に咲いた花〜」の歌詞から付けられた。

出演者、スタッフ、収録場所が奇跡のスケジュールで揃い、
番組は実現した。

10代、20代の若者と共に、戦後70年の今、改めて戦争について考え、
より良い未来にしていくために、様々なことを話し合った番組となった。

漫画家、水木しげるからの番組へのメッセージも紹介した。
番組で伝えたい想いと「NO 〜命の跡に咲いた花〜」の音源を送って実現したメッセージだった。

番組の中では、ホリエアツシの生演奏で、「NO 〜命の跡に咲いた花〜」が披露された。
この時、番組に出演していた中学生がみるみる表情を変えて彼の歌声に惹き込まれていった。
番組を制作することをきっかけに、初めてストレイテナーの楽曲に触れた人達が、
全員、ストレイテナーを好きになった瞬間だった。

一つの楽曲を中心に2時間ものラジオ番組を作ったのは初めてのことで、
ラジオDJの私にとって、とても大きな経験となった。

そして、この曲を初めて、ストレイテナーのライブで聴くことになったのは、収録から数日後。
2015年8月9日。長崎に原爆が落とされてから、70年後の日だった。

前日まで、私は祖母の納骨で京都にいた。
その時、私は親族にまつわる戦争の話を聞いた。
それは、私と血の繋がった人間が文化を守るために、
戦争で戦っている人の命を何人も救ったという話だった。

自分が音楽を伝え、そして、平和のために何ができるのかと考えていたことは、
もしかしたら、血なのかもしれない。

そんな想いと共に、京都からひたちなかまで向かった。
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015の会場は、まさに真夏の暑さだった。

ストレイテナーのライブは、もう出てきた時から、
ホリエアツシが纏っている「強さ」が違った。

セットリストからも、8月9日という日への想いを感じるようで。
ライブで何回も体感してきた「DISCOGRAPHY」がまるで違って聴こえた。
「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」をなぜ選んだか、それもわかるようで。
そして、「シンデレラソング」の後に「NO ~命の跡に咲いた花~」。

長崎出身のホリエアツシが生み出した「NO 〜命の跡に咲いた花〜」。
彼の後ろに、無数の祈りや願いが見えた。

その後、最後に演奏した「Melodic Storm」では、
熱い陽射しで汗だくになった身体を誰もが楽しく揺らしていた。

私が守りたいのは、今、この目の前にある景色だ。
音楽で無数の笑顔が生まれ、幸せだと感じることができる世界を守りたい。

こんな想いを抱いてストレイテナーのライブを観る日が来るなんて思ってもみなかった。

音楽を好きになって、音楽を伝えたくて、ラジオDJになった私は、
今日この瞬間を見るために、歩んできたんじゃないかと思うくらいに、
目の前に広がる、最高の音楽の景色に胸がいっぱいだった。

戦後70年に日本で生まれた、
「NO 〜命の跡に咲いた花〜」という楽曲は、平和への祈りを広げた。

そして、夏が終わった時に、この曲がライブでどう響いていくのか気になっていたが、
秋に聴いた時には、季節を超えて歌い継がれていく未来永劫の温かな力を。
冬に聴いた時には、あの夏の太陽のようにどこまでも明るく照らす光を感じた。

時を重ねるほどに、この曲の祈りは深まり、
多くの人の心に染み入っていく景色は、今も続いている。

きっと、どれだけ月日が過ぎても、
「NO 〜命の跡に咲いた花〜」を聴いた一人一人の想いが、
この曲の輝きを守っていくことだろう。

また、「NO 〜命の跡に咲いた花〜」から生まれたラジオ番組「THINK OF TOMORROW」の物語も続いている。
12月31日に、FM-FUJI年末特別番組「THINK OF TOMORROW 2015年を振り返って」が放送される。

音楽に出会って、人生が変わった。そんな経験がある人も多いことだろう。
私はストレイテナーに出会ったことで、人生が豊かになった。
何よりも、音楽がさらに好きになった。

現在のストレイテナーの更新力はすごい。
新曲を出すごとに、ライブの度に、
いつだって、今が一番いい! と感じるものばかりを繰り出してくる。

あの時、音に惹かれて振り返ったように。
私はいつまでも、その音に、
そして、空を切って心に届いてくるあの歌声に惹かれ続けていくのだろう。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪アウトロ3分55秒から完奏4分55秒に合わせて、番組のエンディングを迎える)

まもなく2015年が終わりを迎えます。
今年はあなたにとってどんな年だったでしょうか?

戦後70年の今年、平和への祈りと、
戦争を二度と繰り返さないという意志を込めた曲が生まれました。

私は今年を振り返った時に、この曲と歩んだことを思い出します。
この曲に出会ったことで、2015年がとても愛しい一年になりました。

来年の平和と、あなたの笑顔を願って。
お送りしたナンバーは、
ストレイテナー「NO 〜命の跡に咲いた花〜」でした。

DJは武村貴世子でした。
2016年も音楽があなたにとっての味方でありますように。
どうぞ良いお年を!

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
中村むつお

音楽は人生の服のような物だと思っている。洋服がその時の気候、流行、趣味でどの様な物を着るのかが決まる。
この文章で感じたのは、偶然なのか必然なのかわかりませんが、バラバラだったいろんな物が一つの曲で統一されて行くのがとても興味深い。

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