入居者名・記事名・タグで
検索できます。

2F/当番ノート

「お互いの想いを胸に共に高め合い、新しい年の第一歩、力強く踏み出していきましょう!」【MIYAVI「THE OTHERS」(2015年4月15日リリース)】

当番ノート 第24期

IMG_1016
2016年が始まった。
今年の自分がどう行動していこうかと考えた時に、私はどうしても“難民”のことを考えてしまう。

2015年12月6日。
エイズ孤児支援NGO PLAS 世界エイズデーチャリティパーティーで司会をした。
PLASのイベントでの司会は2008年から続けている私の大事な活動の一つである。

私が番組で社会問題を初めて扱ったのは、1993年。大学2年生の夏。
帝京大学放送研究会TUBEに所属していた私は、
夏のDJフェスティバルに向けてエイズをテーマに番組を作った。
きっかけはその年に日本で公開された、フランスの『野性の夜に』という映画を観たことだった。
この映画で監督、主演、原作、脚本を務めたシリル・コラールはエイズで亡くなった。

エイズ感染と愛を描いたこの作品に衝撃を受けた私は、
それまで知らなかったエイズについて調べた。

大学時代の私の番組タイトルは「Cute Voice Beat」。
タイトル通り、元気なロックやポップスを選曲し、明るくて軽快なトークの番組を作っていたが、この時はガラッと変えた。

1曲目はVanessa Paradis「the future song」。
緊張感のあるイントロは番組のオープニングからただならぬ雰囲気を作り出す。
そして、歌詞だ。

「私たちの宇宙や人生の将来は枯れて消えさせてはならない」
「無関心であってはならないわ」
「コミュニケーションがなければ力はついてこないわ」

これまでの私からは全く予想もつかない内容だったのだろう。
夏の大学の教室から番組を聴いていた人達の声が消え、
張り詰めたような酷く驚いた空気になっていた。

とはいえ、私がこの時から継続的に社会問題を番組にしてきたかというと、
それはこの一回だけで、大学を卒業し、DJとして仕事を始めるようになって、
いつしか、社会への関心から遠ざかっていた。

それからだいぶ経った、2005年5月。
たまたま、まとまった休みが取れることになり、
かねてからアンコールワットが観たいと思っていた私はカンボジアに旅に出た。

その時のカンボジアは灼熱だった。
あまりの暑さにガイドから「日中はホテルに戻って観光をお休みして、夕方また出かけましょう」と言われ、
一度ホテルに戻ることになった。

しかし、この待っている数時間がもったいない。
そう思った私は前から気になっていた地雷について知りたいと思い、バイクタクシーに乗って出かけた。

地雷について伝えるその場所に向かう時に、観光地から一本道を横に行っただけで、
風景がガラリと変わった。そこで、私は内戦の傷跡を目にした。
もしこの景色を見ていなかったら、今の私はないだろう。

カンボジアから帰ってきた私は、
当時、自分のホームページでこんな言葉を綴っている。

「世界遺産の偉大さ。カンボジアが抱える過去と未来。
旅から帰ってきた今でも、ふとした瞬間にこの国に思いをはせてしまいます。
あんなにも大きな建造物で神を祀っているのに、どうして、悲しいことが起きたのだろう?
どうして、病院に辿り着いても、炎天下の外で待ち続けなければいけないのだろう?
どうして、こんな小さな女の子が捨て犬みたいにならなきゃいけないのだろう?
同じ、アジア。時差2時間しかない国。すぐ近くの国なんですよ。
日本にいても学べることはいろいろある。自分の生活の中で世界を知って、
そして、アタシ自身の言葉で、伝えていきたい。」

この想いを胸に動き始めた。
こんなにもすぐ近くの国が信じられないような問題を抱えていることに疑問が止まらなかったからだ。

そこから、日本国内での国際援助に関わる活動を調べ、
数ヶ月後に国連UNHCR協会に出会い、今の私の生き方へと繋がっている。

UNHCR 大切なもの
2015年6月20日、世界難民の日に合わせて発表されたグローバル・トレンズ・レポート(年間統計報告書)で、
紛争や迫害を逃れ、家を追われた人の数が5950万人という報告があった。これは第二次世界大戦以後、最も多い人数だ。

ニュースにも“難民”という言葉を頻繁に見かけるようになった。
毎年足を運んでいる、難民映画祭には今まで見たことがないくらい多くの人が集まっていた。

難民問題が世界規模でクローズアップされた昨年、
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のツイッターから、
MIYAVIがレバノンでシリア難民との時間を過ごしている写真が発信された。
シリア難民の子供たちに歌を教えているその姿から、
ミュージシャンとしての彼が音楽で難民と心を通わせていることがとてもよく伝わってきて、
私は彼の行動にとても感銘を受けた。

2015年4月15日にリリースされたアルバム『THE OTHERS』。
タイトルチューンとなった「THE OTHERS」では、
人間それぞれの違いを認め合い、受け止め合い、愛することの大切さが曲となっている。

UNHCR特使であるアンジェリーナ・ジョリーが監督を務めた映画『Unbroken』に出演したMIYAVI。
彼がレバノンに渡航する直前に行われた2015年5月16日、東京STUDIO COASTでのライブでは、
この映画に出演したこと、またその後彼に起きた出来事についてが語られた。
彼の言葉は、何者にも恐れないまっすぐな勇気に溢れていた。

彼は海外にも非常に多くのファンを持つ。会場には、この日のために日本に来た人もたくさんいた。
人種国籍性別年齢を問わず、様々な人間がMIYAVIの音楽を高らかに共有した。
私は「THE OTHERS」に込められたメッセージがしっかりと現実になっている瞬間を目にした。

“想像、寛容、対話”
2016年はこれが非常に大事な年になっていくのではないかと私は考える。

この世界への想像を、他者への寛容を、一人一人の声を大切にする対話を。
多くの不安が渦巻いた昨年から、今年はなんて素晴らしい一年なんだ! と、
自分の大切な人はもちろん、これから出会うそれぞれの立場で今を生きている人達とも語り合えるように。

ラジオDJとして私が一番伝えたい事は、音楽の素晴らしさだ。
そして今や、世界への想いを持ち、行動していくことは私の人生には欠かせない。

音楽と世界を私の中でしっかりと結びつけていき、伝えていく。
これが、今の私が何よりも大事にしていきたいことだ。

だからこそ、私は2016年をこの曲から始めたい。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜10秒に乗せて)
さぁ! 2016年のスタートはこの曲から。
お互いの想いを胸に共に高め合い、新しい年の第一歩、力強く踏み出していきましょう!

MIYAVI「THE OTHERS」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
中村むつお

音楽には価値がない。だってなくても生きて行けるから。
そこに価値を作り出すのがミュージシャンの仕事だ。
MIYAVIさんは自分の音楽をお金に変える事が出来た。多くのミュージシャンの目標である。
しかし、彼は音楽にお金以外の価値を作ろうとしている。
それが本当の音楽の価値なのかもしれない。

トップへ戻る トップへ戻る トップへ戻る